剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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休みが、終わる

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 仕事を終えて集合場所に戻る。時間は午後を過ぎてたようで、地上に出て凄くお腹が減ったのだが、子供と年寄りにモテモテなマッチョ兄弟が子供の母や年寄りの娘と話し込んでて帰れない。しつこい男は嫌われるぞ?

「帰るよ筋肉共~」

「先に帰って良いぞ?」「地域の交流も必要だかんな」

「あ?あの姐さんにチクんぞ?」

「…わーったよ」「あの人に嫌われたらお終ぇだろうしな」

 ロシェルに言われて戻る気になったようだ。子供達もお腹空いてたみたいだし丁度良かったな。しかしロシェルも姐さんって呼ぶのか。

「今日は…、上水路かしら?」

「分かるの?」

 ルイ姐さんが頭を撫でてくれる。髪に蜘蛛の巣着いてたみたい。依頼完遂の処理をして、今日の仕事は終了だ。ギルドを出た僕達は、お弁当を広げるため街の外へ出る。すぐ近くに人が少ない場所が外しか無かったのもあるし、マッチョ兄弟は臭い血を浴びるチャンスを狙っているっぽい。

「実践が1番身に付くってな」

「学生だと耳買ってもらえないしね」

「まぁな。袋の中身に賭けるっきゃねぇな」

 先日の討伐報酬は特別で、群れの規模がそこそこ大きかったので特別に報酬が出たのだ。普通のブフリム倒した程度じゃお小言だけもらってた事だろう。マッチョ兄弟は長期休暇の前から偶然を装った遭遇戦で経験と小銭を集めていたのだそうな。

「アタシには考えも付かなかった」

「私達も」「はい」「だね…」

 買い物程度なら購買でも買えるので、倹約家の3人衆は外に出る概念がなかったそうだ。食費が掛からないので買い物しないで過ごそうと思えば出来ちゃうからな。

 マッチョ兄弟の願い虚しく、敵が出て来る事はなかった。街道を望む門前に敵が出て来たらそれはそれで問題だが。



 休み明けを数日後に控え、湯上りで湯気の立つ僕はマッチョ兄弟に左右の腕を組まれて食堂へと拉致された。まさか食われてしまうのだろうか。

「おうモテない野郎共、連れて来てやったぞ」「お前等準備は出来てっか?」

 食堂には10人そこらの男達。食堂のテーブルにはコップやら飲み物を注ぐ水差しに、街で買ってきたのであろうちょっとした食べ物なんかが並べられている。やっぱり食われてしまうのか?

「ミルコさん、コッチは万事抜かり無く」「酒も用意しましたぜ!」

「お酒飲むの?」

「おうよ」「もう2日で休みが明けっかんな。気合いを入れ直すのさ。それに」

 オウム返しにそれにを聞くと、女性絡みの進展報告会であると言うクリス。2人は進展無いだろうし、聞き役に回るんだろうな。マッチョの間に詰められて座ると酒と思しき赤い液体が注がれて行く。

「あ、僕飲む訳には行かないんだ」

「あ!?お前空気読めよ。ミルコさん、なんスかコイツ」

 ついでにと注がれそうになったコップを手で覆って断ると、注ごうとした奴も少し腹を立てたようだ。

「そうだぜ?神に誓っても無ぇなら飲めや」

「成人するまでって約束なんだ」

「誰とよ?パパママか?」

 親と約束した事なんて一度も無いよ。煽り口調のミルコに説明する。

「師匠と貴族様だね。成人したら2人と飲む約束を交わしたんだ」

「女だよな?師匠って」「セーナ様だろ?」「1度で良いから見てみてぇ」「あのセーナ様かよ」

 同じクラスの男共は知ってるようだが、他のクラスの男共でセーナの名を知る者は驚いた様子を見せた。

「で?その貴族様ってのは、女か?」

 クリスがソコを突いて来る。

「うん」

「美人か?」

 そしてミルコ。

「うん」

「「年上だよな?」」

 マッチョがハモった。

「うん」

「兄弟。その時は俺が一緒に行こう」「酒はみんなで飲むのが美味いからなっ、兄弟」

 マッチョの兄が2人増えた。長男は、弟は1人いれば良いって言ってたよな?みんながどうしても名を聞こうとするので、他言無用を念押ししてレイさんの名を明かすと、知る者は皆固まってしまった。レイさんは有名な貴族様だったらしい。






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