剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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疲労と、空腹

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 起こされて村に着くと既に朝。村の一角を借りて用意された馬を交替したり、食事や内装の変更、女子は湯浴みをして滞在時間2時間そこらで村を出る。

「ユカタは湯浴みしなかったの?臭いよ?」

「お湯で体は拭いたよ。臭いなら場所変えれ」

「じゃ、じゃあ私があっ」

 ジュンが僕の隣の狭い場所に入ろうとして、馬車に揺さぶられた。結果、僕の膝の上に座る事となる。皮のエプロン越しにでも柔らかい事が解る。

「運行中、立ち上がるのはお控え下さい」

「はいぃ、しゅみましぇん…」

 メイドに手を取られると元の席に戻った。少し名残惜しい。

「ユカタは柔らかい子が好き、なの?」

「止めてって言っても枕にして来る子よりはね」

「うっ…バカァ」

 拗ねやがった。馭者側の壁を背もたれにしてコッチに足を向けて来る。せめて靴を脱げ!信じられない事にロシェルの靴は靴底に金属の棘が付いている。ふわふわ汚いフェルトの靴底だと思ったら、とんだ凶器を隠してやがった。

「靴を脱げ。なんだよそのトゲトゲは?」

「蹴ると痛い」

「そりゃあ痛かろうよ。僕に痛い目遭わせたら口聞かないからな?」

 ロシェルは靴を脱ぎたくないのか、足を床に降ろした。もしかして、臭いのか?

「臭くないっ!」

 心を読まてしまった。ふて寝するロシェルに警戒の解けた僕達。街道を行く危険を忘れた訳では無い。が、昼間の平地である事に加え馭者の働きのおかげで敵も出ず、やれる事が何も無いのだ。

 昼食休憩を挟んで村に着いたのは夕方。貴族の馬車が来たとあって夕方でも村人が集まって、村長らしきおじいさんがエリザベス様に頭を下げている。村人としては金でも落としてもらいたいのだろうが、長々と話していてはこれでは食事を摂る時間が無いぞ。

「メイドさん」

「はい。お代わりですか?」

「お代わりは大丈夫。それよりそろそろあっちの話を切り上げないとエリザベス様がお腹すいちゃうよ?」

「あれも貴族の職責です。下々の話に耳を貸すのも器量と言う物」

「お腹鳴って斬り捨てた貴族様の話、聞いた事あるよ?」

「それは立場が逆であると認識しております。が、お嬢様を辱めてはなりませんね。臣として進言して参りましょう」

 若いのに自分を臣と名乗るメイドさんはもう1人を伴ってエリザベス様の所へ進言に行った。

「叱られてしまいました」

 貴族の職責は食事より優先される物のようだ。食事を終えても話は続いていて、出発準備も出来ている。話の方向はお願いから愚痴になってきており、これではただの足止めに過ぎないと感じた。

「メイドさん、また叱られに行こっか」

「…致し方ありませんね」「お供します」

「今度は僕もお供するよ」

 荷台に載せてあった槍を抜いて2人の後ろに付いて行く。

「何か?」

 エリザベス様の声に疲れが見える。お腹も空いてる事だろう。

「暗くなってるのにまだ続けるの?」

「ユカタ、これも貴族の職責です」

「僕じゃ無かったら刺されて死んでるよ?」

 僕は石突を地面にドンと突き、意識をこちらに向かわせる。

「長話をするなら家に招いて歓待するのが礼儀だと、僕は自分の村では教わったんだけどここでは違うの?遠くから矢が飛んで来ても気付けないよね?」

「何じゃこのガキひっ」

 村長が動きを見せる前に、僕の槍は村長の腹を突いていた。石突が向いてる事に気付けない程、辺りは暗くなっていたのだ。

「メイドさん達はエリザベス様を連れて馬車へ」

 そう告げて、腹を押える村長に今度は穂先を向ける。

「足止めは成功したか?」

「な、何をっ」

「飯の恨みはしつこいからな、覚悟しとけ。俺からは何も言わんでやるけどな」

 後退りして離れると、馬車には入らず馭者席に相席させてもらい直ぐに馬車を出してもらった。

「強引な方ですね…」

「僕の村だともっと早くに首が飛んでるよ。おかしいと思わなかった?」

 馭者は短い言葉で肯定した。





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