剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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高い、買い物

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「冗談です」

「冗談、だと…?」

 口調が孫に似て来た祖父がマキの言葉を繰り返す。

「荷物持ちと護衛で来てもらいました」

「僕ユカタ、です」

「ふむ…。して、お前。家の孫とよろしくやるつもりか」

「そんな時間無いです。門限までに帰らないといけないので」

「学園ではよろしくやっておるのだろう?」

「鐘が鳴る前に寮に帰らないとご飯が無くなるからすぐ帰ります」

「家の孫に色目使っとるのだろう?」

「そんな事してたら今ココに来れてません。嫌われちゃうからです」

「…むう、分かっておる…か。なあジュンや、お前さんはこの男をどう思っておる?」

「え!?私、ですか?」

 って言うと思った。でも違った。

「大好きですっ」

「「なっ!!」」

 僕とおじいさんの声が被った。嫌われてない程度には避けられてると思ってたからだ。思わずおじいさんと目が合った。そして2人で汗を垂らす。

「じ、冗談…です…。けど、他の男の人に比べたら、大好きです」

「わ、儂よりか!?」

「お爺様も大好きですっ」

「ど、どっちが上だ!?」

「……お、お爺様…」

「良しっ!」

 僕を見てドヤ顔のおじいさん。余程嬉しいのだろうな。僕は悔しくなんてないんだ。

「で?孫娘が男を連れて来て、何を欲する。奴に執り成せとか言うのではあるまい?」

「はい、お品を納めて頂きたいと思いました」

「何じゃ買い物か。何でも言え荷物持ち。何をいくらで買いたいんだ?」

「時間を買いに来ました。お金は普通に払います」

 時間なんて切り売り出来るモノで無し、また冗談だと思っているのだろう。だがおじいさんの目付きは違っていた。

「何だ?急ぎか?」

 区画1つ分もある店を持つ程の人だ。僕の考えてる事なんてすぐに理解してしまったようで、すぐにマキの方へ向き直ると欲しい物を書いた紙に目を通した。

「危険な所へ孫娘を行かせるのは辞めて欲しいのだがな…」

「エリザベス様のお願いなのです」

「それは、断れんか……ん?成程。花を売れと言われればすぐにでも人を向かわせると言うに、あのお方方は…」

 ジュンの言葉を聞いて真に欲しい物まで当ててしまった。

「会頭様、エリザベス様はお家から兵を護衛に付けると申しております。私達だけで向かうよりは幾分か安全かと」

「お前はレイナ様の所のマキであったよな。レイナ様はご健勝であられるか?」

「はい。ジュン様と仲良くお過ごしでございます」

「それは重畳。おい、見積もりは取れたか」「はい、こちらに」

 髭の人、ずっと居ると思ったらマキの書いた欲しい物リストを見て見積もりを取っていたようだ。おじいさんは手渡された紙ペラを一読し、フムッと鼻を鳴らしてテーブルに乗せた。色々込みで30万ウーラ。

「安いです」

 背嚢2つにみっちり積まるか溢れるかと言うくらいの量を集めて、学園に届けてくれる手間賃を含め30万は安いと思う。

「子供には大金だろう。貴族でも商人でもあるまいに」

「子供9人、1人3万ちょっとと考えれば安いですよ」

「…品を洗い直せ」「はいっ、失礼致します」

 髭の人は返事をすると欲しい物リストを持って部屋を出て行った。おじいさんは僕が言った言葉の意味を理解して、静かに頭を下げた。

「孫を無事に。頼む」

「みんな無事に、です」

「そうだな…。茶も出さず失礼したな、ユカタよ」



「ユカタ君、よく堂々と居られましたね」

 クリスエス商会との話が終わり、店を出たマキはボソリと呟いた。

「お爺様が、頭を下げるなんて…、わ、私とお祖母様だけなのに…」

「子供だと見て安いのでまとめたんだろうけどさ、行く場所は大人向けだもん。適当な物寄越されたら堪ったモンじゃないよ」

「で、でもっ。目が飛び出でるような値段になったら、どうしよう…」

「分割で払えば良いかな。みんなで稼ご」

 2人が不安な顔してるので串焼き奢ってやった。ロシェルへの土産も含めて78,00ウーラもしたよ。高い買い物だぜ…。




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