77 / 210
準備は、大事
しおりを挟む「ユカタッ、お金稼ぎしよーよ!」
勘定のおぼつかないロシェルが唐突に放つ感情にかまけた言葉に、僕はニガムシを噛んだ様な顔をする。
「ブフッ、何その顔っブヒヒッ」
「ブフリムみたいな声出すんじゃないよ。ほれほれ解け解け」
「午後から行くとしても帰りが遅くなり過ぎます。諦めてお勉強しましょう」
「なら明日はどう?ジュンは空いてる?」
「え?そりゃあ、空いてるけど」
「ウフ、アタシも空いてる。つか鍛錬したらご飯食べて寝るだけだし。ウフフ」
「ユカタはどうかしら。私達の実力で如何程の値が付くのかは気になってたのよ」
レイナは周りの予定を聞いて、僕に如何を聞いて来る。それでも僕はちょっと躊躇う。
「暇だけとさ。問題もあるんだよなぁ」
「何よ?ハーレムパーティーだからギルドのオッサンに絡まれる?」
「それはそれですごく困るけど。お弁当は持って行けないからねぇ」
「冒険者らしく干し肉とソーサーですか?」
「半分合ってるね。お弁当だと匂いが強くて敵が寄っちゃうかもだから。それにみんな、お外でトイレ出来る?」
「やれば出来るっ」
「やり方知ってる?」
「あ、穴掘って…」
「道具は持ってる?」
「…ナイフすら持ってないわね」「私が掘りますので」
「準備も無しに本番は危ないから、やれても街の周りを歩くくらいしかおすすめ出来ないな」
「外に行くのは良いんだ」
「誰かさんが剣をズバズバしたから研ぎに出したいし。穴掘りにナイフも使っちゃったからこっちもしたいんだよね」
「う。ごめん」
「そうなりますと、研ぎの時間に何時間か取られますね」
「自分達の実力を見るって事だし、僕は草刈りに参加しないけど、4人で配分して揉めない?」
「も、揉めはしないとお、思うけど…」
「なるほどね。高いの安いので誰が摘んだか…ってなるのね」
「その辺ちゃんと決めたり練習してからの方が良いと、僕は思うな」
「な、なら。午後は演習場で練習、したい、な…?ダメ?」
ジュンよ、僕を見るな。両腕を体の前方で寄せる姿に目が泳ぐ。
「どこ見てんのよ~ぅ、ヒヒッ」
「見てない。早く解け」
「もう全部出来たもん」
…半分程しか正解してなかった。まあ進歩はしているな。
「楽しそうですわね」
突然の声掛けに5人揃ってビクッとなった。いち早くその声の場所を向いたロシェルに続くと、派手な人。3人衆が席を立つので僕も立ち、軽く頭を下げた。
「お顔をお上げなさいな」
エリザベス様は普段と変わらぬ柔和な笑顔で寄って来て顔を上げろと言う。取り巻き達が失礼だとか弁えろとか言ってるけど、名を頂いた貴族様を前にして逃げたりしたら首が飛ぶんだぞ?
「本日もおめめうるわしく…」「お見目です。ユカタ君」
「構いません。今日も座学の予習かしら」
エリザベス様よ、僕を見るな。手を肩に添えるな。取り巻きの声が聞こえるくらい大きくなってるぞ。
「頭弱き者に手を差し伸べております」
「仕合じゃアタシに勝てないクセに…」
「私、貴方方に提案があるの。お聞きなさい?」
提案では無く命令だろう?レイナを見遣ると頷いてるし、聞かない訳にはいかないようだ。
「私、来週の休みにお花摘みに行くの。ご一緒なさらない?」
皆を誘ってトイレするハズは無いし、言葉通りのお花摘みなのだろうが、花と聞いて眉をしかめてしまった。それにしてもだ。よもや僕達の話が筒抜けだったのか?静寂の魔法が付与された資料室ではありえないが、果たして。
「理由を聞いて良い?ですか?」
「貴方、野の草にお詳しいでしょう。そのシワシワした眉を見るに、何を採るかも予想なさってますわね」
「おトイレじゃ無いんだ」
ロシェルは勘定してなさい。
「いっぱいあり過ぎて予想なんて出来てませんよ」
「それでも絞れているのでしょう?」
笑顔が怖い。勘弁してくれないかなぁ…。
20
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる