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逃げて、どうなる
しおりを挟む今日の授業の内容は、昨日説明を受けた3種類の薬草を含めた5種以上の薬草の採取で、毒草、野草、雑草はダメ。木の実草の実は勝手に食うには問題無いが、採集品には含まれないそうで、昼前に帰って来いとの事。お高い糖の実を採っても数に入らなければ甘いおやつにしかならん。とは言え拾ってしまうのも村人の性である。
「…赤いか」
ナイフで叩いてパカッと割ると、白い中身に血管のような筋がある。落ちっ放しの実によくあるヤツで、芽が生えるので売り物にはならず、子供と大人のおやつにされていた。甘苦い中身をガリガリと齧りながら本命の場所へ向かう。ロシェル達はもう近くに居ない。
「真面目にやらんならパーティー辞めっかんな」
僕の言葉が効いたのだろう、そう思いたい。目的の薬草から1番大きい葉を1枚だけ、ナイフでキレイに切り離し、タオルで包んで空の方のカバンに忍ばせる。気になる2人もそうだったが、僕もカバンを2つ持って来たのだ。そしてナイフ。ケンカに使わなきゃ大丈夫だよね。
生徒達が借りていた木のナイフでは、まともな値段を付けてもらえない。薬効は変わらないのに、キレイ汚いで価値が変わるのが採集品だ。摘んだ薬草を傷めぬために、とにかく優しく扱った。
「あら、早かったのね」
「5種以上1つずつで良いんだよね?」
「葉っぱ5枚って事ね。まあ良いでしょう。間違ってなければね」
集合場所に着いたが女性講師が座って本読んでた。帰って来るのが早過ぎたみたい。本に栞を挟んだ講師に採集品の包まれたタオルを渡すと、広げたタオルの中身を見て彼女はへーっとちょっと高い声で鳴いた。
「どれも良いのを摘んでるわね。お師匠様の教えかしら」
「コレは村の教えだね。ああ、お師匠様のおばあ様の教えかも」
「そんなに深い繋がりが…」
「無い無い。おばあちゃん、村に来る薬師さんだったんだ」
「マリー様、だったかしら。私もお目通りしてみたいわぁ」
「往復で2ヶ月掛かるからねー」
「ああ、休みが欲しいっ。とにかく合格よ。保管に使うから持ってなさい」
そう言うとタオルで包んで返してくれた。そして本を開く…。他の生徒が帰って来るまで暇になったな。
「洗って干しとくだけなら僕にも出来るけど、ソレっぽいやり方とかあるの?」
「…ソレが出来ないから教えてるの。貴方はお師匠様に教えられてるでしょうし、湖に行って加工してらっしゃい」
「白湯じゃ無くて良いんだ?」
「よく分かってるじゃない。本来はそうね。けど予洗いって言って、前もってキレイにしておけば売値も上がるのよ。使う前に白湯で、出来れば魔法水で洗うわ」
「僕魔法水で洗われた事あるな」
「何に使うつもりだったのかしらね。さ、本を読ませてちょうだい。加工したら昼まで遊んでて良いわよ」
本当に暇になってしまった。取り敢えず湖に行って洗って干してをしてしまおう。
「ダメッ!」「返しなさいよっ」
湖に向かって歩いていると、面倒事の声がする。近付きたく無いが進行方向と一緒なのが口惜しい。
「略奪は講師に言い付けるぞー」
「ちっ!」「誰だっ!?」
「ここは冒険者になるための学園だろー。盗賊になる学園じゃないぞー」
まだまだ距離があるのでそこそこ声を張って歩いてく。近くに居る生徒にも聞こえているだろう。正義感に燃える奴等がガサガサと寄って来てる音がする。
「女の子相手にエッチな事したら退学だぞー」
「誰よそれ!?女の子はおもちゃじゃ無いのよ!?」
正義感に燃える女子が立ち上がる。隠れてたクセに。まあ、頭数が増えただけマシか。数人に増えた正義の使徒が湖に集まると、2人組の女生徒の近くに居た2人組の男は走って逃げてった。逃げても無駄だろうになぁ。
「君達!大丈夫か!?」「助けに来たわよっ」
正義の使徒達に囲まれてタジタジになってる2人組女子は、気になる2人でもあった。どうやら盗賊に目を付けられていたらしい。
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