62 / 250
情報は、金
しおりを挟む教室に入り席に着くと、ロシェルはお弁当を取り出して、女子用の小分けされた挟みパンの1つに齧り付く。食べやすく、味の種類もあって、間食するなら女子弁の方が良いなと感じる。
「誰ですか?まだお昼には早いですよ?」
教室前側の引き戸を開けて、女性講師は入りしな指摘した。美味しい匂いを垂れ流していたロシェルは頬を膨らませてモグモグ。バレてるぞ?それでも深い追求はされず、授業は始まった。
午前2つ目の授業は道具取り扱い。薬草等の使い方に見分け方、採集法。テントの建て方に補修法、それぞれの収納法なんてのを覚え、演習場で実践したりもするらしい。今日は座学で草の摘み方見分け方って感じ。新参者が居るから簡単に説明してくれた。
この町の周りに生えている薬草をペン画にした絵が講師の立つ背面の壁に飾られる。どれも良く描けてるな。色が無いのが残念だけど。
「明日は午前丸々使って、採集から保管までしますからね。忘れてはいけませんよ?」
植生や見分け方、採集法がそれぞれの植物で説明される。根を抜くなとか、手で毟るなとか、折ったり潰したりするなとか、当たり前に感じる者にとっては当たり前の事である。
しかし冒険者を魔物狩るだけの商売と思ってる面々はこの授業の有用性に気付いて無さそうだ。ロシェルが大口開けるのも無理は無いな。
「貴女、毎回私の授業でアクビしてますが、そんなに退屈ですか?」
「お、起きてるもん」
「なら気になる所を教えてください。何かありませんか?」
「う…。ユカタァ~」
何故僕に振るのか。僕はちゃんと文字にしているし、眠いけど寝てないぞ?
「…まったく。なら貴方は?」
何故僕に振るのか。答えないとその隣のジュンに行くのだろうか。
「他の子へのヒントになっちゃうから敢えて聞かない事にするよ」
「あら、意外と意地悪さんね。お師匠様の教え方かしら」
「それも答えられないかな」
お師匠様と言うか雇用主なんだけど、セーナは質問者に考えさせる答え方をする事が多かった。講師の質問に答えなかったのは、金になる情報を座ってうつらうつらしてる奴等に聞かせたくなかったからだ。
講師の質問が隣へ流れ、質問が設問に変わったりちょっとした情報公開がされたりして眠気のある者を覚醒させ、終わりを告げる鐘が鳴った。
「昼だー!」
「うるさい」
「明日はこの3種を含めて5種以上を採集してもらいます。ではまた明日」
鐘の音を聞いて叫ぶロシェルに教室内はざわめくが、まだ講師が居るんだぞ?講師の女性は気にするでもなく明日の予定を告げて部屋を出て行った。
「早くご飯食べよ!?それともどっか行って食べる?」
ハラヘリ娘がまくし立て、長机の向こうに飛び跳ねる。どうしようか迷ったが、僕はみんなに告げない事にした。
「天気も良いし、玄関の上でどう?」
「だねっ」「お供します」「ユカタ君も、行こ…?」
生徒用の玄関の上は板張りで歩けるようになっていて、先着した2グループがお弁当を広げてた。どちらも違う組みたい。先着してた男グループは入口横で屯してる。もう1グループは先端の端でまとまる女子達。僕達は女子グループの反対側の端を陣取った。
「あ、ロシェル。敷物敷くからちょっと待ってね」
地べたに座ろうとするロシェルを止めたジュンが敷物を敷くのを見て、僕とロシェル、近くに居た女子グループからも驚きの声が上がる。
「ソレ、マジックバッグ!?」
「うん。これくらいしか入らないけど」
流石商家の娘と言うべきか、お高い物を持ってらっしゃる。
「僕初めて見たよ」
「おいくら万ウーラ?」
これロシェル、はしたないぞ?とは言え僕も気になってた。
「コレね。私が子供の頃、お店で懇意にしてた魔道士のお客さんからもらったの。魔道具屋を始めるから試作したって言われて」
市販品の値段を聞くと、馬車買えそうな値段だった。
20
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる