剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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1日、1便

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 魔法の話に夢中になって、ベッドを占拠した2人のおかげで、僕は端っこで横になるはめに遭う。長旅で疲れてる体に湯上りの脱力感が効いて来て眠いんだけど?

「僕寝るから。話すならそっちのベッドに行ってよ…」

「ん、そうね。明日からまた馬車だし、休める時に休みましょ」

 僕の頭をペタリと触り、セーナは自分のベッドへ向かう。レイさんも頭を撫でて下がってくれた。やっと落ち着いて寝られる。

「あ、お金。起きたら分けよう」

「あンた、律義者よね」「良い事よ。それじゃあ後でね。お休みなさい」

 暗くなるまで熟睡してしまった。気付くとランタンに明かりが灯ってて、どれだけ寝たか分からない。

「う…、夕飯食べそびれた…かな?」

「あら、よく寝てたわね」「まだそれ程経って無いわ」

 2人は先に目覚めてたけど、食べに行かずに待っててくれたようだ。2人に礼を言って、寝る前に言ってたお金を分ける。1人当たり3,13,23ウーラに分けられたので、余った銀貨と鉄貨をそれぞれ2枚、レイさんに渡した。

「ユカタ、もっと貪欲になりなさい」

 レイさんは余りのお金を返そうとするが僕にも言い分がある。

「寝泊まり分上乗せしただけだよ?」

「まあ、そう言う事にしといてあげて。アクセサリーが売れたらあンたに全部あげるわ。拾ったのはあンただし」

 セーナが納得させてくれたので、レイさんも手を引っ込めた。レイさんには宿代と食事代を出してもらってるし、貰ってもらわないと困るのだ。

「ご飯代くらいにはなると信じてるよ」

「沢山食べて、立派な男になるのを期待してるわ」

 そんなに食べられるのかな?僕には装飾品の価値を見定めるなんて能力は無い。3食食べられるくらいになればなーって思ってた。

「あれ?僕昼食食べたっけ?」

「大変、ユカタがおじいちゃんになったわ」

「貴方、起こしても起きないから2人で食べたのよ?」

 やっぱり食べて無かったか。道理でお腹空いてた訳だ。夕飯は少し多めに食べました。



 翌日。馬車の出発は昼過ぎなので日が高くなってから宿を引き払い、馬車の事務所で確認を取る。今回の乗客は今の所僕達を含めて9人で、6人パーティーの冒険者だそうだ。僕達の前に立ってた男は平服で、とても冒険者には見えない体付きをしてる。駆け出しなのかと思いきや、髪には白が混じっているし、よく分からない。

「なあ、済まないがこの6人で客止めしてもらえんだろうか。荷物も無しで」

 白髪混じりの背中からとんでもない発言が聞こえた。それって僕達が乗れないって事だよな?

「待ってよ。ソレって僕達乗れないって事?」

「悪いが、そうなるな。悪い事があると断言する。次のに乗ってくれ、頼む」

 振り返り、そう話す男は心底済まなそうにしている。しかも悪い事がと断言してる辺り、一癖ある冒険者達なのかも知れない。

「勝手に話を進めてもらってナンだが、それなら貸切料金で払ってもらわにゃならん。それに、そう言う事はしっかり事前に予約を入れてくれ」

 予約はともかく、貸切料金も馬車を護衛するからと踏み倒そうとした。気弱そうな成りで随分大きい口を叩く男だ。勿論荷物も積まずに護衛もクソも無いと突っぱねられてた。

「取り敢えず上に話を通して来るから待ってろ。おーい、少し受付代わってくれー」

 平服冒険者と受付が席を外し、新たな受付に代わると僕達の番。僕達は貸切じゃないのですんなり受付を済ませられた。

「あ、気になったんだけど」

「なんだい?」

 僕はまだ経験した事無かったので聞いてみたが、乗車予定が満員になったらどうするのかを聞くと、諦めて翌日の馬車に乗るしか無いと言う。ただ、その時に予約して定員でなければ翌日確実に乗れるし、ソコでまた定員になると更に1日待つ事になると教えられた。予約、大事。覚えた。



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