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酸味、一杯

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「貴方達のはどちらも赤いのね。大きさは違うけどなんだか似ているわ」

「僕のは野菜だよ。赤い方の惣菜パンに塗られてるヤツだね。セーナのは、薬草に近いのかな」

「ポーションの原料の1つね。そのままでも食べられるし、料理にも使えるのよ?色は種類によって違うけど、これは赤い種ね」

「ちなみにだけど、私が買ったのは?」

「僕食べた事無い」

「私も同じく。けど酸味が強いと聞いた事があるわ」

「不安になるわね」

 現在地から近い出口は南門。昨日ギルドに寄った時に見掛けた町の案内図では、このスコフィールドの町は東西に長い形をしてる。生鮮屋が銀座のある広場の1本南側の通りにあるので、いち早く外に出るなら南門しか無い訳だ。南北を貫く大通りに出たら南下する。正面には高い壁と門が見えていた。

「荷馬車が多いね」

「東西の通りより太いから、荷馬車の往来を見越して作られている道なのよきっと。横道から何か来るわ」

 ゴロゴロ鳴らして手押し車が通る。荷馬車から降ろされた品物は、コレに乗せられ各店舗に送られているのだろう。

 南門を潜り、外を眺める。街道も太くて馬車2台が余裕ですれ違える程の幅があり、周りの草も短く刈られてかなり広い草原に、タマゲルが何個も転がっていた。

「ここならゆっくり過ごせそうね」

「平時ならではね。戦時にはテントや負傷者で一杯になるのよ」

 セーナの言葉にレイさんは続ける。その戦争なら僕も知ってる。僕が5歳の頃に始まったヤツだ。

「海の取り合いだっけ?8年くらい前に終わったんだよね」

「名前はともかくその通りね」

「負けてたらこの実も買えなかったのだから、戦った兵士達には感謝しないとね。さ、朝食の続きをしましょう」

 広い草原とは言えあまり遠くには行きたくないので街道から離れ、ゲルやうんこが落ちてない場所を陣地にした。

「そのまま座るとお尻が濡れたりするから毛布や寝袋を敷くんだ」

「そうするわ」

 コップやカトラリーを取り出した背嚢をテーブル代わりにして、買って来た惣菜パンや果実水の材料を並べてく。僕はアカナスを、セーナはウロの実を軽く刻んでスプーンで潰し、水を注ぐ。お店だと種や皮は漉したりするんだけど、売り物じゃ無いから気にしない。

「私はどうしたら良いのかしら…」

「ユカタ、剣で割ってあげなさい」

「剣で?まあ、良いけど」

 サンの実を預かったが地面には置けないので背嚢に乗せて叩き割る。試しにコンコン強めに叩くとカパッと鳴って白い中身が見えた。

「コレで良いかな?」

「外側だけ割ってくれたのね。ありがとう」

 手入れしてるとは言えブフリム切ってる剣だしね。レイさんはサンの実の殼を外し、プルプルした白い身を匂う。そして金属製のナイフとフォークで切り分けて口に運んだ。

「~~~~っ、酸っぱいっ。甘いけど、コレは酸っぱい。初めて口にしたわっ」

「お肉に合いそう?」

「分からないわね。店主の言葉を信じるしか無いわ」

 切り分けたプルプルをコップに入れて潰し、水筒の水を注いで混ぜた。

「ユカタ、毒味してくれないかしら」

「それをするなら身の状態でするものでしょう…」

 酸っぱいと聞いて愚痴が漏れるが、差し出して来るのだから拒めない。コップを預かり1口飲んだ。

「……すっぺ」

「お口に合って?」

「店主の言葉は間違ってないかも。他の物を食べたくなるね。果実水に足すのも良さそう」

「私も少し頂いて良いかしら」

 セーナはそう言うとレイさんから切り分けた身を貰い、自分の果実水に入れて潰して混ぜる。果たして…。

「ウロの実だけより甘さが増した気がするわ。酸味も強いけど。どうぞ?」

 セーナが差し出したコップの中身をスプーンで掬い、少し見て口に運ぶレイさん。そして僕のアカナス水にもサンの実が入れられ毒味され、結局サンの実水単品より他のと混ぜた方が良いとなり、お椀にアカナス、ウロの実、サンの実を入れた赤い飲み物となって3人のコップに注がれた。





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