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大体は、僕のせい
しおりを挟む「私達、この場での食事を終えたらここを立つつもりなの。話は以上よ、出て行って頂戴」
レイさんは冷たい言葉を言い放つ。貴族が終わりと言ったら終わりなのだ。取り付く島は無い。支配人は言葉も無く立ち尽くしてしまったが、レイさんはそれをも許さなかった。
「ユカタ、その者を部屋から出して頂戴」
「う、うん。おじさん、行こ」
僕は支配人を押して無理矢理下がらせる。フラフラする支配人を出口前まで押し込んで、ドアを開けた。
「わた…私は…、どうしたら……」
「宿賃の他に金貨まで出して、こんな事されたら何しても無駄だよ」
支配人の目は僕を睨み、肩を震わせる。情けない姿に僕は続ける。
「レイさんに雇われてなくて、舐められたのが僕だけだったら僕が折れるだけで終わりだけどさ。今は違うよね?雇い主にも舐めた態度取ってるって事。分かる?」
「く…」
「剣、抜くよ?」
腰を落として斜めに構え、剣に手を掛ける。その瞬間部屋の奥から強い風が吹き、支配人の背中を押した。セーナだ。杖を向けたセーナが威嚇したのだ。
「次は本気のが来るから」
僕の言葉を聞いたのか、支配人は肩を落として部屋を出た。階下に向かう姿を確認して僕はドアを閉めて鍵を掛けた。
「僕もっと強くなりたいよ」
「学園で頑張りなさい」
「ユカタ、あの時の貴方の目は本物よ。自信を持って」
ベッドに腰掛け息を吐くと、寄って来た2人が奪い合うようにして撫でて来る。何だか恥ずかしくなって干し肉に噛み付いた。
宿屋を出て、馬車の乗り込みが始まる昼まで時間を潰す。特にやる事も無いが移動用の食料を少し使ってしまったので、昼と夜の分だけでも買っておこうと言う話になり、食料品屋を見て回る事になった。
「昼と夜だけならパンを買うのはどうかしら?」
「僕もパン食べたかったんだよね。移動中だと作る暇が無くってなかなか焼けないし」
「そうね。夜しか焼けないわね。さりとて焼くと魔物が湧くわ」
「私は堅パンを買ったけど、2人は麦粉だけで買わなかったわね。何故?」
「単純に見落としかしら」「雨降ったら干し肉だけになっちゃうし、忘れてたよ」
話をしながら横にあったパンの専門店に立ち寄る。パンの話が出たのは店から良い匂いがしてたからに他ならない。今すぐ食べる用のも欲しくなる匂いの中へ入って行くと、その考えは2人も同じである事が分かる。
「お昼はコレと串焼きで良いわね」
「飲み物を用意して外で食べましょうか」
「賛成」
この店では少し硬くて日持ちするパンの他に、柔らかく日持ちしないパンや煮込んで味付けしたペーストを塗って焼いた平たい惣菜パンも売っていて、今、昼、夜、明日とそれぞれの時間に食べられるパンが揃っていた。お客もたくさん買ってるし、評判な店なのだろう。
足りなかった朝食と昼の分に惣菜パン2種類を6つ。夜以降の分は黒麦パンを3つ買った。堅パンも売ってたので僕とセーナの分を買ったが、冒険者用のより少しだけ日持ちしないと言われた。堅パンは20,00ウーラ。それ以外はレイさんが出してくれたよ。その代わり僕のカバンに入る事になるのだが。
飲み物は生鮮食料品店。お酒は僕が居るし、これから移動で飲めないので選択肢は果実水に絞られるのだが、果実水としては売ってない。勿論日持ちしないからだ。店の平棚に盛られた野菜や果物を自分で潰し、水増しして飲む事になる。主婦の人達が集まる中に分け入って、搾って飲める作物を物色する。
「その丸い物は果物かしら」
「ええ。コレは海沿いで採れるサンの実って言うのさ。中身を潰して、焼いた肉や魚に掛けて食べても美味しいよぉ」
「ならそれを1つ頂くわ」
相変わらず決断が早い。店屋のおばさんに話を聞くと、即決でサンの実を選んでいた。僕は食べ慣れたアカナス2つ、セーナは悩んでウロの実20粒を選択。これもレイさんが払ってくれた。
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