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昨夜と、今朝
しおりを挟む「トントントーン。僕だけど手が塞がってるから開けてー」
ドアを蹴ったら怒られそうだし、セーナを呼んで開けてもらう。
「口でノック言う人始めて見たわ。…何それ?」
「果実水だってさ」
部屋にテーブルは無いから僕のベッドの上にトレーを置くしか無い。さっき支配人が言ってたご不足、あったな。
「作ってる所は見た?」
「うん。何でか知らないけどコップとかも目の前で洗ってたよ」
「そ、念入りね」
「有難く頂きましょう。で、ユカタ。どうかしら?」
立ち上がったレイさんは左手を腰に添え、右手を斜め下に伸ばす。ドヤ顔で格好付けたポーズだ。ズボンは腰から下まで編み込みがあり、サイズの調整が出来るタイプで皮自体も柔らかく加工されているようだ。上に視線を上げるとこっちは少し硬そうな皮のビスチェ…シャツ越しに柔らかい物を持ち上げているな。とにかく、良い物だ。
「似合ってます」
「赤くなったわ」「ありがとう、嬉しいわ。外ではやはりローブを纏う事になるかしらね」
是非そうしてください。果実水飲んだら横になる。暗くなる夕飯の時間までゆっくり休んだ。女性と同室でも寝ちゃえば気にならない。
セーナとレイさんに起こされて食堂へ降りて行くと、夕食にお酒と果実水が出て、何でも好きな物食べて良いと言われた。そんな事言われてもスープとパンと川魚に粉付けて焼いたの食べたらお腹いっぱいだ。大人な2人もお酒1杯ずつ飲んだら普通の量だったし。
「久しぶりに果実酒なんて飲んだわ」
「私も家に帰ってからは飲まなかったわね。今夜はぐっすり寝られそ」
そう言うと、2人は服を脱ぎ出した!
「ちょっと!?僕部屋出るから待ってよっ」
「布団被ってなさい。すぐ終わるから」
「目を瞑っていれば良いわ。別に素っ裸になるんじゃ無いのだし」
「んもーっ」
僕も装備外したかったのに、布団を被って2人の着替えを耐えた。
まだ外は薄暗い時間だが、廊下からチャカチャカと音がする。内張りしてある鎧…金属鎧だろうか。鞘に当たる音もあり、稼ぎの良い冒険者と思われる一団が通り過ぎる。
「起きた?」
「起きたよ」
「眠いわ。何の音?」
「冒険者が宿を出る音よ」「稼ぎの良い冒険者だね」
「勤勉ね。眠いわ」
レイさんがまだ眠いそうなので少しだけ目を閉じてゆっくりしたら、起きて着替えて外に出る。
「先に下に降りてなさい。着替えたら向かうから」
セーナに言われて食堂に行くと、冒険者の姿は無い。先にギルドで仕事を請けてから食事をするからだ。なので今は平服の客が多い。空いてるテーブルに着くと、従業員の女性が注文を聞きに来る。
「後2人来るからもう少し待っててね」
「はぁ。長居されても困るんですけどね」
「そんな事言わないでよ。支配人さんに怒られるよ?」
「は?」
なんか機嫌が悪いみたい。ロビー行って待つか。悪態吐かれるのを耳を塞いで食堂を出ると、ロビーでお客の対応してる支配人と目が合った。軽く会釈だけして端で待つ。
「おはようございます。昨夜はゆっくり過ごされましたでしょうか。先程食堂から出て来られましたが、どうしました?」
「2人が降りて来るのを食堂で待とうと思ったけど、何も頼まないで居座るのも良くないかと思って」
「問題ありません。ささ、席をお取りします」
お客との対応が終わった支配人がこちらに来て挨拶をくれる。手を差し伸べて迎えてくれるのだから今度は悪態吐かれないだろう。テーブルに着くと焦がし茶が出た。朝に飲むと目が冴えるそうな。少し渋くて少し苦い、大人の味だ。
「あの、まだ料金もらってないんだけど」
お茶を持って来た従業員が待ってたみたいでお金払えと言って来た。さっき悪態吐いて来た女だ。
「僕は頼んでもないんだけど?コレ持って行けって言ったの支配人さんだよねきっと。何か聞いて無い?」
「無いわよ。その必要あるの?」
「確認は必要じゃない?」
女は頑なに僕を否定する。
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