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涙は、出さない
しおりを挟む店の裏庭で雑草を毟っているとセーナが帰って来た。
「草毟り?……大丈夫ね。よしよし」
どうやら雑草の中にも有用な物があるそうで、僕もそれを知ってて少し驚かれた。食べれるヤツだと言ったら呆れられたが。
「おばあちゃんの入れる施設が決まったわ。2ヶ月くらい会えなくなるから寂しいわ」
「1人か2人か。会えるまで元気で居なくちゃねぇ」
次に会えるのはセーナだけだから1人だね。1年経ったら顔を出そうと思うけど。
お茶を持ってくからと言われて作業部屋で待つ。少ししてお茶を持ったセーナがドアを蹴るので開けてやった。
「おねしょはしてない様ね」
「瓶も使ってないよ」
「良い事ね。で、どっちに通うかは決めた?」
国立魔物抗専か、スミ学アッゼニか。どちらも良いと思うが、ダンジョンでの活動って所に興味を持ったとセーナに告げた。
「あら、あンたなら直ぐに冒険者になれるからって決めるんだと思ってたわ」
「アッゼニなのは予想してたのか」
「冒険者の活動にダンジョンは欠かせないからね。ダンジョンで採取される薬草なんかも、地上で取れる物より薬効が高いのよ」
「それを取って来いって事だね」
「期待してるわ。ただ、書いてはなかったけど国立もダンジョン対策はしてると思うのよね。国としては氾濫してからの対策が主なのだろうけど」
「ぷ、氾濫?」
「放ったらかしにするとダンジョンから魔物が出て来ちゃうのよ。洪水みたいにね」
村の近くの洞窟でも、年に1回は中に潜って狩ってたな。規模は全然違うけど、放っとくと被害が増すのは同じだと言われた。
「おばあちゃんの入居は明後日。それからアッゼニに移動になるわね。支度はまだ全然でしょ?」
「うん。カバン買った店で何が要るかは聞いて来たよ」
「お金はあるんだし、好きな物買いなさいな」
「銀座からお店まで着いて来てよ」
「…一気に買おうとするとお金持ちになるって事ね。良いわ」
「ありがどーごぜーますだぁ」
「止めてよ気持ち悪い」
貴族が喜ぶ感謝の意を表すと気持ち悪いと言われた。お貴族様は気持ち悪いのが好きなんだな。
食料買い出しのついでに僕の買い物もしてしまおうって事で早速外へ出る。生鮮野菜の代わりに干し肉と干し野菜、塩等の調味料を身銭を切って買う。総額1万ウーラ也。出発までに、店にある食べ物を食べ尽くしながら、コレ等の食べ方を練習しろって事らしい。
「ねえ、こう言うのも、要るわよね?」
干し果物。コレはフサベリーの赤いヤツだ。干した後、お酒に漬けてまた干した物で、日持ちがして甘いらしい。1kgで30,00ウーラもした。買わざるを得なかった。
夕飯を食べて寝る。そして朝。今日は終日閉店で、僕の買い物に付き合ってくれた。銀座で引き出した銀貨100枚が心と体に重く伸し掛る。
「うう、敵が、敵が見える…」
「全部倒しちゃいなさい」
「武器、武器は…」
「鍛えた手足で頑張りなさい」
後ろから杖で突っつかれて店に行き、昨日言われた品々を吟味して行った。背嚢、寝袋、タオル5枚、ランタン、雨具、食器、水筒。総額6,65,00ウーラ也。泣きそうだ。
「泣いて良いかな?」
「はいはい。コッチで武器を見ましょうねー」
樽に刺された武器を見て溢れそうな涙が引っ込む。引き抜いて、色々見て、次を引き抜く。命を預ける物だけに妥協は出来ない。どれも直しが必要そうで、コレだと言える物が無かった。
「良いのあった?」
「無かった」
「悪いモンじゃ無いハズだぜ?」
「直さなきゃいけないし、直す時間が無いんだ」
「それなら武器屋に行くしか無えな」
防具も僕の背丈に合うのが無かったので専門店に行く事となった。
「あンた、この店知ってたのね」
「来年来るって言ったけど今年中に来れたよ」
「おや、セーナかい。そっちのは…冷やかしに来た子だね?連れ子かい?」
「可愛いでしょ?他人よ」
僕は可愛いらしい。
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