剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
上 下
10 / 297

国立と、私立

しおりを挟む


 学園の願書が届くまで、しっかりお金を稼ごうとした僕は出鼻をくじかれる。町の役所に行けば色んな学舎の案内書や願書があると言うのだ。そりゃあその都度遠くから取り寄せてたら時間の無駄だろうしな。

「今受け付けてるのはこれだけね」

「…8、9、10……12もあるよ?」

 セーナに引っ張られて初めての役所。陳列棚に納められた学舎の名前を見て、彼女は僕に向けた物を2冊取り上げた。他もの気になるが、全部読んでたら夜になるな。

 待合椅子に座って案内書を広げる。ペリエ王国国立魔物抗闘専門学校に、学園法人エノン学園、私立スミヨン冒険者学園アッゼニ。長い名前にクラっとする。

「このペリエとかエノンって何?」

「ペリエは国王様のお名前よ。ペリエ王国が作らせた、魔物と戦う術を学ぶ学校ね。エノンはエノン侯爵の事よ。エノン侯爵が自費を叩いて作った、スミヨン市、スミヨン辺境伯の領都にある冒険者を養成する学園のアッゼニ市にある分校って事ね」

「長いっ」

「名前だけで挫けないでよ。国立魔物抗専にスミ学アッゼニ。コレで少しは立ち直れるかしら?」

「お、おう…。で、どっちが良いのかしら?」

「自分で読みなさいっ」

 読んだよ。…まず、国立魔物抗専は名前の通り、魔物との戦闘に特化した教育課程で、魔物の生け捕り、育養、討伐、解体、廃棄を全て生徒の手で行い、調理過程で使う魔物も生徒達が討伐した物を使う、一部寮制の学校…だそうな。

 期間は2年間で、寮生の費用は全部で金貨2枚の一括払い。死んでも返還無し。

「通学の方が安いけど…」

「家賃と食費は親が持ってるからよ」

 成程。…次、スミ学アッゼニは名前の通り、冒険者を養成するための幅広い教育課程で、野外とダンジョンでの活動に重点を置き、戦闘、解錠、罠対策、野営、解体を講師の指導の元行う、全寮制の学園…だそうな。

 期間は1年で、卒業後は上級課程で追加の1年の在籍が認められ、講師の補助をして給与も得られる。費用は初年度金貨2枚の一括払い。死んでも返還無し。上級課程は無料!

「上級課程はタダなんだね」

「1年で辞めるなら国立の4倍以上高いのだけどね」

 2倍じゃないのか?とにかく金貨2枚、2,00万ウーラ。全財産を後3回貯めなきゃ行けない。



「すっかり定宿ね」

 帰りに銀座でお金を振込み、銅貨用の財布を買って宿に戻って来た。干し上がった服を急いで取り込む僕をセーナが弄る。銅貨用の財布は早速役に立ったよ。

「服畳みながらでも聞きなさい。隣に誰が居るか分からないから小声で話すわよ?」

「うん…」

 ベッドに座り話し始めるセーナ。僕は床に座ってベッドで服を畳む。

「入学金を稼ぐとなると、ギルドに目を付けられるわ。主に構成員にね」

「うん」

「だからギルドに卸すのはツルショウガまでにして、キセルタケは全部うちで買い取るわ」

「それは嬉しいけど、そんなにすぐ捌けるの?」

「売る伝手はあるのよ。直接行かなきゃならないけどね」

「それだと、ホリーさんが…」

「そ。それだけがネックなのよ、行き帰りの時間も掛かるしね。だからおばあちゃんは養老院にその間だけ預かってもらうわ。だからあンたはおばあちゃんの養老院代も稼ぎなさい」

「お、お幾ら万ウーラ…」

「20万で良いわ」

「ま、まあ、それなら」

「それと、明日からは住み込みで働いてもらうわ」

「それは、大丈夫なの?僕も男なんだけど…」

「下でおばあちゃんが寝てるのにギシギシアンアン出来る?まあ寝室は別にするけど」

「分かったよ…。曾孫見せろとか言わせないでよ?」

「そんなの月一で言われてるわ。冗談だと思って受け流しなさい」

 ホリーさん、冗談で言ってないでしょソレは。とにかく話は決まってしまった。明日は仕事をして、セーナの店で住み込みする事になった。腹を括るしか無い。

 翌日は朝食を食べて昼食を買い、宿を引き払う。昨日畳んだ服を着て、古着の方は昼食と共にカバンに詰めた。背嚢が欲しいな。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

禁忌地(アビス)に追放された僕はスキル【ビルダー】を使って荒野から建国するまでの物語。

黒猫
ファンタジー
青年マギルは18才になり、国王の前に立っていた。 「成人の儀」が執り行われようとしていた。 この国の王家に属する者は必ずこの儀式を受けないといけない… そう……特別なスキルを覚醒させるために祭壇に登るマギルは女神と出会う。 そして、スキル【ビルダー】を女神から授かると膨大な情報を取り込んだことで気絶してしまった。 王はマギルのスキルが使えないと判断し、処分を下す。 気を失っている間に僕は地位も名誉もそして…家族も失っていた。 追放先は魔性が満ちた【禁忌地】だった。 マギルは世界を巻き込んだ大改革をやり遂げて最高の国を建国するまでの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...