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金無くて、野宿
しおりを挟む草を編み、長方形にしたら二つ折りにして端二ヶ所を編み込んでくっ付ける。材料となる草は丈が長く、カゴを編むのに適していた。1m四方のカゴを3つ作り、今夜の寝床を確保する。ゲルの姿は見なかったが、夜になって何が出るかなんて分からないのだ。
休憩地の近くに移動して、僕が横になって荷物を置ける分の草を互い違いに交差するよう折りたたむ。そして休憩地に敷いてある草を持って来て、寝床の際に生える草を壁にするため、カゴ同様に編み込んで行った。足りない分は引っこ抜いて追加する。上に行く程窄めて行って、引っくり返したカゴみたいにして入口以外を編み終えた。一度外に出て、更に抜いて来た草で寝床を隠すように積んで行く。
離れた場所でトイレして、寝床に入ったら入口を編み込んで明日まで出ない。外は赤みを帯びていたが、寝床の中は暗い。真っ暗にするのが理想だけど、雨や魔物が来ない事を祈るしかない。ジャリソウを摘み、空腹と渇きを解消して寝た。
風に揺れる草の音に、ガサガサと足音の様な音が混ざり、目が覚める。息遣いが違うから四つ足では無い。多分ブフリムだ。緑色の肌をした臭いハゲのガキで、得物有りのタイマンなら僕でも殺せる程度の魔物だ。2匹居たら危険と言われるが、今寝床の近くをガサガサしてるのは少なくとも3匹は居る。息を潜め、動かない事でやり過ごす。臭ガキ共は休憩地の土を掘り、トイレした跡地の方へ向かってった…ように感じる。ホッとしても息は吐けない。今夜はもう寝られないや。
外が明るくなったのか、ガラガラと馬車の行く音がする。やっと朝だ。ジャリソウを頬張り、カゴの入り口を解いて外に出た。
「ふぅ~」
やっと一息吐ける。荷物とカゴを取り出して、一杯になるまで採集した。ジャリソウの他にツルショウガの群生を見付けてカゴ一杯に出来た。キセルタケはあまり取れなかった。
「あら、君昨日の」
「帰るにも旅費が無いので色々採集して来たんだ。買取り出来る?」
朝の混む時間を避けられたおかげで、ギルドの中には貼り出しの依頼書を睨む数人だけ。受付嬢もこの時間は人が減り、たまたま居たのが昨日の受付嬢さんだった。
「大丈夫よ。買取りは君から見て左側、あの水晶玉の所の職員の所に行ってね。それにしても一杯採ったのね。流石村の子」
褒められて悪い気はしない。礼を言い、買取りカウンターへと向かった。
「貴方初めてなのね」
受付嬢さんとの話が聞こえたのだろう。買取嬢さんは笑顔で迎えてくれて、カウンターの下から浅いカゴを取り出した。
「うん。売れないと帰れないからよろしくね」
「きっと大丈夫よ。ジャリソウって意外と買取り高いから」
草カゴの中が見えたようで、ジャリソウを浅カゴに移すと凄いと言ってくれた。町の子はジャリソウの存在を知らなかったり、採集が面倒で採りたがらないそうだ。
「ジャリソウと、ツルショウガじゃない。それにキセルタケは大当たりね。凄いわ」
どう凄いのか。買取価格が凄いのだ。ジャリソウは100g50鉄貨。ツルショウガは10本1束2銅貨。キセルタケは1g50銅貨もするのだ。正に大当たりである。
「こんなに採れるなら町でも暮らせるわね」
ジャリソウの重さを量りながら買取嬢が口を開く。
「採り切ったら暮らせなくなっちゃうよ。採れない時期もあるから」
「慢心しないのは良い事ね。けど採り過ぎも敵を作るわ。貴方、外に出たら奪われるわよ?」
「え?」
途中から小声になった買取嬢に聞き返すと、人気の多い方をチラリと見て、僕を見た。
「落ち着いて聞きなさい。貴方はまだギルドの構成員じゃ無いの。ギルドカードも無いの。ギルドカードはお金を預ける事が出来て、カードで直接買い物が出来る便利な物だけど、本来はお金を奪われないようにするための物なのよ」
買取嬢は声を潜め、諭すように話してくれた。
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