溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を

蝶野ともえ

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 椋と出会ってから1年後。
 雨に打たれていた花霞に声を掛けてくれ、助けてくれた椋と出会った時と同じ日。


 花霞は真っ白なドレスを着て、小さな教会の前に立っていた。

 髪は綺麗にアップしてまとめられ、淡い色でメイクされた顔はキラキラと光っていた。髪には大好きな花たちが咲いており、椋を助けてくれたラベンダーも一緒に添えられていた。


 「あー。何だか緊張するな。本当に俺で良かったのか?」
 「はい。滝川さんは私たちの命の恩人ですし。椋さんは言葉では言いませんけど、滝川さんの事をすごく尊敬しているので、嬉しいと思います。私も父がいないので、こうやって引き受けて貰えてとっても嬉しいです。」


 ヴェールの下で微笑みながら滝川を見ると、彼も緊張しながらも笑ってくれていた。
 
 両親がいない、椋と花霞の結婚式。そのヴァージンロードを歩くのを滝川にお願いしたのだ。
 椋は恥ずかしくて言えないようだが、父のように慕っていたのが滝川だと花霞は知っていた。そのため、それを提案すると椋は驚きながらも、「いいんじゃないか。」と言ってくれた。
 滝川もすぐに承諾してくれたので、花霞は今、滝川の腕を優しく掴んでいた。


 「花霞さん。………鑑はしっかり者に見えてどこか危なっかしい。それはあなたがよく知ってる事かもしれない。けど、あいつはかっこいい男だ。信じて、見守って……時には叱ってやってくれ。」
 「…………はい。椋さんの事は任せてください。私がしっかり幸せにします。」
 「ははは。君は本当に頼もしい人だ。本当に警察に誘いたいものだ。」
 「それを言ったら、椋さんに怒られますよ。」
 「…………それは不味いな。あいつは怒ると何をするかわからんからな。」



 ドアが開く前に、滝川とそんな話しをしていた。
 椋が滝川を慕うように、滝川も椋を大切にしているのがわかる。本当の親子のようだな、と花霞は思っていた。


 「それでは、ドアが開きます。ゆっくりとお進みください。花嫁様、お幸せに。」


 スタッフにそう言われ、花霞は「ありがとうございます。」と、微笑み滝川にエスコートされながら、ヴァージンロードを歩いた。


 小さな教会に集まってくれたのは、栞や椋の友人など少人数だった。
 椋と花霞の親戚はいない。
 けれど、とても温かい和やかな雰囲気で、花霞を迎えてくれている。

 椋に「結婚式をしよう。」と、言われたときは迷ってしまったけれど、やはりしてよかったと思えるぐらいに、みんなが笑顔で見てくれた。
 いろいろあったけれど、幸せだよ。そう伝えるために、この結婚式はあるのだと花霞は実感した。


 ヴァージンロードの真ん中で、シルバーのタキシードを着た椋がこちらを見て微笑んでいる。少し怒っているのは、滝川ととても楽しそうに歩いていたからかもしれない。


 「花婿がそんな顔をするな。」
 「滝川さんのせいですよ。花霞ちゃんの見ながらデレデレしないでください。」
 「しょうがないだろう。こんなに綺麗な人をエスコートしているんだ。おまえには勿体ないわ。」
 「………結婚式でそんな事言う人いませんよ。」


 ヴァージンロードで喧嘩を始める2人を見て、お客さん達も思わず笑ってしまっている。花霞もクスクスと笑いながら、滝川にゆっくりと頭を下げた。


 「滝川さん、ありがとうございます。これからも、椋さんをよろしくお願いいたします。」
 「あぁ………2人共、お幸せに。」
 「はい。」


 花霞は椋に腕に手を添える。
 そして、ゆっくりと歩き始める。

 1年前、こんな風に椋と結婚するなど思ってもいなかった。
 けれど、今では椋が居ない日々なんて考えられるはずもなかった。

 椋と出会えて、本当の幸せを知った。
 椋と過ごして、大切な人を守りたいと強くなった。
 椋と愛し合えて、2人で過ごす未来を見ようと思えた。


 
 「椋さん。私、幸せだよ。」
 「あぁ。俺もだ。………あいつにも見せてやろう。幸せな姿を。」



 花霞と椋は、2人でゆっくりと歩き続ける。
 お互いを守り、そしてキラキラと花が咲くように、笑い合いながら幸せを感じながら、歩き続けるのだ。



             (おしまい)
 
 
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