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18話「本当の繋がりとキスと」
しおりを挟む18話「本当の繋がりとキスと」
「花霞ちゃん………。」
突然の花霞の言葉に彼は驚いた顔を見せた。
それもそのはずだ。
あんな事があり、本当ならばショックを受けて泣き続けているはずだった。
それなのに、彼への想いが溢れ出て止まらない。今、言わなければいけない。
何故かそんな気がしたのだ。
「自分でも都合がいいと思ってる………。期間限定の恋だったはずなのに、椋さんの優しさとか温かさに触れて、いつの間にか惹かれていたの。……椋さんに「好きだ。」って言われて、戸惑うよりも先に嬉しさを感じたんだ………。それが恋なのか、まだわからなくて。恋人と別れたばっかりだし、ありえない結婚のはずだから、この気持ちは違うって思うようにしてたの。」
泣きはらした目は真っ赤になっている。
きっと酷い顔になっている事だろう。
けれど、花霞の言葉は止まらなかった。
「でも、なくしてしまった指輪を見つけた瞬間。これで、椋さんとまた一緒に居られる。だから、早く会いたいって思ったの………。」
「…………。」
「あなたが大好きで、仕方がないの。ずっと夫婦で居たい………。」
最後の言葉は小さくなってしまった。
言い終わる前に、花霞の体は椋に引き寄せられ、あっという間に彼の胸の中に閉じのめられてしまったからだった。
突き放されたわけではなく、彼が抱きしめてくれた。それだけが嬉しくて、花霞は彼の胸に顔を埋めた。
「嬉しいよ………。本当に。俺を好きになってくれて。」
「それは私の方だよ。」
「…………これで、本当の家族になれるな。」
「うん。………椋さん、大好きです………。」
花霞はそう言って、彼の顔を見上げた。
その意味を椋はすぐに理解してくれて、ゆっくりとキスをしてくれる。
軽いキスから、あっという間に深いキスになる。いつも受け身だった花霞も、自分から椋の首に腕を絡めて、唇を押し付け、椋を求めた。
それが嬉しかったのか、椋が微笑んだのが、目を瞑っていた花霞には何となくわかり、恥ずかしくなりながらも、共に微笑んでしまう。
椋と今までも沢山キスをしてきた。毎日していたと思う。
けれど、どんなキスよりも今のキスが1番幸せで、とても気持ちよく感じてしまう。そして、もっともっと彼の唇と舌を絡めて感じていたいと思ってしまう。
幸せを感じながらも、少しずつ息苦しくなる。それでも、離れるのがイヤだった。
それでも、椋は離れてしまう。
「………椋さん………。」
「………そんな顔しないで……。」
「え………。」
椋は頬を少し赤くし、困り顔を見せながら花霞を見て微笑んだ。
「好きな人に好きって言われただけでも嬉しいのに、君とこんなキスをしたら………俺も我慢出来なくなる。しかも、もっと欲しいって顔が可愛すぎる。」
「……………私も。」
「ん?」
彼が自分を求めてくれているのを知っている。
その時でさえ、彼が欲しいと思っていながらも、我慢してしまった。
その時よりも、自分の気持ちを理解して、彼をもっと好きになっている。
先ほど、あんな事があったばかりだというのに、という気持ちもあるけれど、花霞だって彼からのキスを沢山受けて、体が熱を持たないはずもないのだ。
「………私だって、我慢出来ません。」
「花霞ちゃん…………。」
花霞は椋に抱きつき、真っ赤な顔を隠しながらそう言う。
恥ずかしさから胸が高鳴り鼓動が早くなる。花霞は先程よりも自分の顔を彼の胸に強く当てた。
すると、自分も同じぐらい早い鼓動が彼の中心から伝わってきた。花霞は嬉しくなり、顔を上げて彼を見つめた。
「………俺だって、緊張してる。いい大人なのに恥ずかしいな。」
「………そんな事ないよ…………。」
「あんな事があった後だ。花霞ちゃんを求めていいのか、って思うけれど………。それは建前で、今すぐにでも君を貰いたいって思ってる。」
椋はそう言うと、花霞の頭を撫でた。
いつもはそれを嬉しいと思うけれど、今は違った。もっと彼に触れて欲しい。キスして欲しい。そして、それ以上も。と、足りないと思ってしまうのだ。
いつから自分はこんなに貪欲になってしまったのだろうか。
そんな事を思いながらも、その気持ちは止まるはずもなかった。
「椋さんをください。」
「………あぁ。もう君のものだ。」
そう言うと、花霞を抱きしめて、ゆっくりと抱き上げた。花霞は驚き、彼に抱きついてしまう。すると、彼は笑って「大丈夫。落とさないよ。」と言って、ゆっくり歩き始める。
彼が連れていく場所など1つしかない。
いつも2人で寝ているベットがある寝室だ。
椋は、ゆっくりと花霞をベットに下ろすと、そのままベットに手をついて、花霞に頬や額、首筋などに小さくキスを落とす。
その度に、くすぐったい気持ちになり、花霞はクスクスと笑ってしまう。
「何だか、余裕だね………花霞ちゃん。」
「そ、そんな事ないよ。緊張して、椋さんの事見れないよ。」
「だめ。ちゃんと見て。」
「でも………。」
「誰にキスされて、気持ちよくされて、抱かれているのか………ちゃんと見て。俺も、花霞ちゃんを見てるから。」
「………うん。」
花霞は自分から体を浮かせて、椋にキスをした。椋はその同意の言葉と、キスで嬉しそうに微笑んだ後、花霞の頬に触れながらベットに沈むようなキスを繰り返した。
その後の事は、花霞は朦朧としながらも彼を見つめていた。彼の指が体に触れると、熱を感じそこからどんどん温かさが広がっていった。
キスをされれば、もっとして欲しいと願ってしまった。
椋の言葉、ひとつひとつが嬉しくて、甘い声を出しながら、彼に返事をする。すると、彼はとても愛おしいものを見つめるように目を細めて花霞を見つめては、更に甘い言葉を紡いでくれた。
水音と2人の吐息。
シーツがすれる音と、ベットの軋む音。
それの音たちが、花霞の耳に届き、目の前には彼の顔、そして彼の匂い。
すべてで彼を感じらて、花霞は幸せなはずなのに、切なさも感じてしまう。
不思議な感覚と気持ちよさに、つい瞳から涙が溢れてしまうと、椋はそれにすぐに気づき、「大丈夫?」と言いながら、指で涙を拭ってくれた。
「何だか、幸せだなって………幸せなのに………もっと欲しくて切なくなるの。」
「………花霞ちゃんは欲しがりだね。」
「ん…………。」
話ながらも、彼の動きは止まらず、花霞は甘い声が出そうになる。すると、彼は「声、我慢しないで。」と、言ってくるのだ。その言葉を何回言われてしまっただろうか。けれど、つい恥ずかしさから我慢してしまうのだ。
「でも、俺ももっと欲しい。だから、花霞ちゃんをもっとくれたら。俺もあげる。」
「………あげる。………あげるから、もっと椋さんが欲しい。」
「うん………。」
「っっ…………ぁ……………。」
そう言い終わらないうちに、彼は花霞の体を激しく求めた。
花霞はすぐに快楽の波に飲み込まれる。これで終わりではない。もっと彼を感じられる。もっと彼に触れていられる。
それがわかると、花霞は安心してしまう。
「…………花霞、好きだ。」
「うん………大好き、椋さん………。」
2人は熱を帯びた声で、言葉を重ねて、何度も何度も求めた。
それは、2人が本当の恋人になった日の初めの夜であり、本当の夫婦になった瞬間でもあった。
その長く甘い夜は、2人を幸せな時へと変えてくれた。
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