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 何度かお邪魔したことがある蛍の家。
 家主である彼がいないと、こんなにも静かで寒い場所だったのだと気付かされる。
 無機質なパソコンやゲーム機、本や書類が置かれており、食べ物などは整理されているのかリビングにはない。生活感があまり感じられない部屋だ。そんなところから、彼が毎日を忙しく過ごしているのだと感じ取ることが出来る。

 花霞は、「ほたるくんがここで待っててって。鍵はしっかり閉めてね」と言って、友人の運転で帰っていった。どうやら自分の子どもが帰宅する時間らしく、「本当は一緒に残りたかったんだけど、ごめんなさい。でも、ほたるくんを信じて待っててね」と、申し訳なさそうにしながら帰っていったのだ。本当に優しい人だなっと透碧は思った。

 蛍はこんな夜中に何をしているのだろうか。
 危ないことはしていないのだろうか。

 そんな不安が透碧を襲ってくる。
 それに、透碧は実家から逃げ出してきたのだ。今頃両親は必死になって透碧を探しているだろう。大企業の力を使えば、蛍の家が割り出されるのは時間の問題だろう。そうなれば、鍵をかけていたとしても、どんな手段を使ってでも扉を開けて、また透碧をあの部屋に閉じ込めるだろう。
 自分も何かをしないと。
 けれど、どうしてだろうか。この部屋に来ると安心してしまい、疲れがドッと押し寄せてきた。
 いつも座らせてくれるソファに腰を下ろすと、もう1歩も動けなかった。

 卒業に向けての論文や、出版する本の執筆、HPの更新。そして、婚約の心配などもあり、眠れぬ夜も多かった。その疲れが一気に出てきたのだろう。
自分の部屋でも、実家でも眠れなかったのに、蛍の香りに包まれて安心したのだろう。


「……少しだけ横になてもいいかな」


 罪悪感を感じつつも、体は限界を迎えていたのだろう。
 言葉と同時に体は硬めのソファに埋もれてしまう。必死に目を開けようとしたものの、瞼は鉛のように重くなって、あっという間に目を閉じてしまう。


「……ほたるさん、早く帰っていて」


 寂しさからなのか、不安からなのか。
 一粒の涙が目頭から落ちて、ソファに垂れる。
 その頃には、透碧は深い深い夢の世界へ落ちていったのだった。










 夢を見ないほどに深く眠れたのはいつぶりだろうか。
 いつも、婚約が不安で、卒業後の進路は上手くいくだろうかと迷ったり戸惑ったりしていたせいで、悪い夢が多かった。普段は強がりな透碧だが、内心では不安も多い。それが夢に現れてしまうのだろう。そのため、夜中に起きるのが日常だった。
 けれど、透碧が次に目を開けた時には、窓から明るい日差しが差し込んできてた。とても穏やかな暖かい太陽の光り。冬になると、太陽の暖かさを感じるだけで幸せを実感できるのだろうか。
 そんな事を考えながら、目を開ける。と、次にいつもは感じない香りが透碧の鼻先をかすめた。


「コーヒーの香り?」
「透碧。起きた?」


 その声はずっと待ちわびた大切な彼の声だった。名前を呼ばれた事に気づかず、透碧はソファから飛び起きて、声の方へと駆け足で向かう。


「ほたるさんっ!」


 彼の顔を見た瞬間に、そのまま蛍の体に飛び込んでいた。驚いた様子で小さく声をあげた蛍だったが、すぐに落ち着き透碧の頭を優しく撫でてくれる。それだけで、透碧は一気に心が満たされていくのを体全体で感じた。冬だというのに、体の奥底からぬくもりを感じられるのだ。
 大切な人と触れ合うだけでこんなにも満ち足りた気分になれるなど、透碧は初めてその感覚を味わっていた。


「ただいま。遅くなってごめんね」
「心配してました。あ、あれ、ほたるさんそのスーツと髪型は!?」


 先ほどは蛍を一目見て抱きついてしまったので普段を違う雰囲気だとは全く気づかなかった。
 今、彼の近くまで気づいた。いつもとは違うかっちりとした黒のスーツに星空のような紺色のネクタイ。そして、髪型が変わっていた。長くてサラサラした髪は短くなり、中性的なイメージから爽やかな雰囲気のものへと変わっていた。それに、いつもつけていたピアスも取っている。アクセサリー類をつけない、モノトーンな服装。銀座を颯爽とあるく若手サラリーマンのような身だしなみをしていたのだ。

「あんまり見ないでよ。自分でも似合ってないいのはわかってるから」
「そんな事ないです!かっこいいです。元々もかっこいいですが、何だか大人な男ってかんじがして、これはこれで私は感動で涙が出そうですよ」
「な、涙?ま、まあ透碧が喜んでくれたならよかったよ」


 きっと予想以上の反応が返ってきて驚いたのだろう。蛍は苦笑を浮かべながらも、ホッとした様子だった。
 けれど、彼が髪型まで変えて出掛けていたのがよくわからずに、透碧はすぐに蛍に質問をしようとする。が、それより先に、蛍の指先が透碧の目元に触れられた。


「目元に泣いた跡がある。ご両親に何か酷いこと言われた?」
「そういうわけではないです。閉じ込められることには慣れてますから。ただ、この部屋で一人になるのが寂しかっただけです」
「そっか。ごめんね。時間かかっちゃって。それに、俺が迎えに行けなくて申し訳なかったよ」
「いえ。ほたるさんの初恋の人に会えたので私は嬉しかったですよ」
「それはよかった。素敵な人でしょ?」
「私も大好きになりました」


 少し前までは、蛍の初恋の相手であり恩人さんでもある花霞に嫉妬心に似た感情を抱いていたように思う。
 自分の知らない過去の蛍を知る人物。とても穏やかな表情で花霞の事を語る蛍を見ていると、自分は叶わない恋をしているのだと思えて切なくなった。けれど、それは蛍の憧れの心であることを知った。 花霞も友達以上の大切な存在として見ていることを理解した。
 2人の関係は本当の家族のように近くて温かいものなのだと知れたのだ。それも羨ましくもあるけれど、安心もしたのだ。
 私は蛍を好きになってもいいのだと。


「俺は違う場所でやることがあったから花霞さんにお願いしたんだ」
「ほたるさんは何をしてくれていたのですか?」


 わかっている。蛍は自分のために動いてくれていたことを。
 けれど、それが何なのか全くわからない。次に続く言葉を緊張した面持ちで透碧は待った。


「君のご両親に会ってきた」
「え!?ま、待ってください。どうしてそんな事を」
「君を解放してもらうのには、ご両親にお願いするのが一番有効的な方法だから」
「それはそうですが。危険ですよ」
「でも大丈夫だっただろ?こうやって帰ってきているのだし、透碧も脱出できたでしょ?」
「それはそうですか……」


 透碧が追っ手にも終われずに無事に蛍の家に辿り着き、そのまま連れ戻されなかったのも、蛍のおかげだったのだと今の言葉でわかる。何も心配することはなかったのだ。蛍が遠くから守っていてくれたのだから。


「君のご両親から透碧との婚約を正式に認めてもらってきた」
「え、今何て……」


 信じられない言葉が頭の中を回って、上手く整理出来ない。
 自分の両親が、蛍との婚約を認めたと言ったのだろうか?そんな信じられない事が現実に起こり得るのか。
 それを確かめたくて、蛍はもう一度彼に同じ言葉を求めた。
 すると蛍は少し恥ずかしそうに頬を染め、視線を横に逸らしながらも透碧の願いを叶えてくれる。

「君との婚約を認めてもらえた」
「そんな。嘘、……そんな事が信じられないことがあるの?」
「簡単にはいかなかったから、こんな時間までかかった。俺の過去は闇にまみれていて、ご両親が反対する理由もわかったから。だから、今の自分の生き方とか考えを必死に伝えたんだ」
「でも、元婚約者の会社との関係はどうなったのですか?華嶽家にとって大切な取引相手だったはずです」
「そことも上手くやってもらったよ。まあ、少し汚い手は使わせてもらったけど……」

 そこでようやく蛍はニヤリとした含みのある笑みを浮かべた。
 どうやら、何かと取引をしたらしい。簡単には済む話しではないのはわかっている。
 透碧が心配しているのは、今後蛍が危険な目に合わないかどうかだ。


「大丈夫。ちゃんと、いろいろ対策はしてる」


 透碧の心配しきった眼差しが彼に届いたのだろう。透碧が何を言う前にそれを察知して、蛍は優しく微笑んだ。


「元婚約者のご両親にちょっとしたスキャンダル、幹部にも不正取引をした形跡を見つけたから、それを忠告しておいた。俺が警察庁で働いていると知っているみたいだから、かなり焦ったみたい。今回は自分はオフでやってることだから、目をつぶってあげるけど、またやったら操作をすると言ったら、婚約の話しはなかったことにしてくれるって言ってくれたんだ。優しい人達でよかったよ」
「………ほたるさん」
「透碧のご両親には、ネットのセキュリティの甘さを指摘してあげたんだ。俺が、トップやある一部の幹部しか知り得ないマル秘事項を知っていたり、これからの計画している新事業のデメリット点も指摘したら、顔色が真っ青になってたから、俺がセキュリティ関係でお手伝いをしますよって提案したんだ。そしたら、喜んでくれたみたいでね。それで俺の力を認めてくれたみたいなんだよ。本当に誰も不幸にならない解決方法でよかったよね」
「………」


 予想以上の蛍の動き、いや悪巧みに透碧は言葉を失った。
 けれど、すぐに感情が湧き上がってくる。
 最高の婚約者だという感情だ。


「ふふふふっ………ほたるさん、最高です。面白すぎますっ!」
「喜んで貰えてよかったよ」
「まさか、両親の説得だけじゃなくて元婚約者の会社問題まで解決してくれるなんて、すごすぎます」
「結構大変だったんだよ。法律ギリギリのところまで入り込んじゃったし。いや、少しアウトかな。これバレたら警察クビになるかも」
「そんな事は私がさせません。だって、蛍さんは正しい事をしたのですから。次は私が警察庁に乗り込んじゃいますよ」
「その時は期待している」



 透碧と蛍は顔を合わせてしばらくの間、笑い合った。
 その蛍の笑顔を見て、透碧はハッとした。いつも恩人さんの話をしている時と同じ慈しむような穏やかな微笑みで自分を見つめていたのだ。その瞳の先には自分がいる。いつからだろうか。こんなにも優しい目に見ていてくれたのに、自分は気づいてなかったのだろうか。

「……ほたるさん?」
「俺はさ、誇れるような過去は生きてないかもしれないけど、これでも精一杯生きてきた。自分の力で、まともな仕事をして生きていけるようになったのは最近だけど、これからは大切な人を悲しませる事だけは絶対にしない。過去に大きな過ちを犯しているからこそわかるんだ。間違った道を歩いていると、守りたい人をいざって時に守れないって事に」


 蛍が生きた険しい過去の道のりを透碧は知っている。
 それを悔やんで、後悔して生きている事も。だからこそ、一人で生きていこうと決めていた事も。だから、透碧との婚約も偽のものにした。けれど、蛍は透碧の両親に婚約させて欲しいと頼んだのだ。
 それが、どんなに大きな決断だったのか。
 わかるからこそ、嬉しさが込み上げてくる。
 蛍にとって、自分は大きな存在に、守りたい存在になれたという幸せを感じられるのだ。


「きっと透碧を困らせたり、心配させてしまうこともあるかもしれないけど、俺は君のことを愛してるし、絶対に守ると誓うよ。だからさ、偽の婚約なんかじゃなくて、俺と結婚してくれませんか?」


 一生に一度のプロポーズはどんな場所でどんな風にされるのだろうか。
 女の子ならば、一度は夢見たシチュレーションがあるかもしれない。けれど、今その時を迎えてわかる。
 一番大切で愛しい相手ならば、どんな場所でもどんな言葉でも嬉しいものなのだ。

 自分の好きな人が、自分を好いてくれている。
 そして、未来を思い描いた時に自分も彼の夢にいる。それが、とてつもなく幸せな事なのだと今まさに実感していた。


「私もずっと一緒にいたいです。結婚したい、です」


 最後の言葉は、嬉し涙によって酷い声音になってしまった。
 寝起きで化粧も落ちて、洋服もシワだらけ、寝る前に泣いてしまったからか目も腫れているだろう。

 きっと完璧に着飾った時よりも綺麗だとは言えない状態なのに、蛍は嬉しそうに目を細めて嬉しそうに微笑んでくれる。

 優しく透碧の体を抱き寄せ、大切に大切に抱きしめてくれる。
 こんなにも近くに彼を感じたのは初めてで、透碧は緊張してしまう。が、それも一時。
 すぐに心地よさと幸福感から、離れられなくなってしまう。

「透碧」
「……はい」
「キスしていい?」
「私のファーストキスはプロポーズなんて思ってもいなかったです」
「奇遇だね。俺もだよ」
「……え」


 思ってもいなかった言葉に透碧は驚いたが、すぐにその感情は甘いキスによって消されてしまう。
 恋人達はどうして、抱きしめ合いキスを交わすのか。

 こんなにも幸せなで満ち足りた気持ちになるのだ、と理解した透碧は納得してしまう。

「こんなに幸せなんて、クセになっちゃいそう」
「それはいい事を聞いたな」
「蛍さんも同じ気持ち?」
「ああ。奇遇だな」


 キスの合間にクスクスと笑い合い、冬の寒さも気にならないぐらいに温かいキスを交わす。


 2人の出会いは冬。初めてのキスもプロポーズも冬。
きっと、この季節は特別なものになる。

 そう思い、うっとりと目を閉じて全ての感覚でお互いを求め合った。




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