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12話「懐かしい再会」
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合コンの会場は、おしゃれなレストランだった。
こんな場所で合コンをやるなんて、今どきはすごいなーと感じながらレストランに入ると、しずくの不安はますます大きくなった。
かっちりとした制服を着こなす礼儀正しいスタッフに、おしゃれな中にも洗練された店内の雰囲気。そして、何より他のお客さん達が違っていた。
カップルや、女の人たち、軽い正装をした家族連れ。みんな、落ち着いて食事や会話を楽しんでいるのだ。
どこを見ても、合コンをするような盛り上がりは全くなかった。
ここで合コンなどしたら場違いすぎる。
「ねえ、美冬。ここであってるの?」
「大丈夫だよ。まだ相手は来てないから、先に座ってましょう。」
美冬は、しずくの不安を気にすることなくスタッフの案内で先にレストランの中に歩いて行ってしまった。
少しはおしゃれをしてきたつもりだったが、自分の格好がこの場に合っているか心配になりながら、しずくは美冬の後を小走りで追いかけた。
通された席は、何故か3人の椅子しか置かれていなかった。
予約してあると美冬は話していたので、3人の予定なのだろう。
合コンで奇数はなかなかないし、それに相手が1人という事になってしまう。
ますますわからなくなって、美冬を見つめる。すると、その視線を彼女は微笑ましそうに見つめ返してきた。
「合コンじゃないと思ってるでしょ?」
「うん。だって場所も人数もおかしい。」
「だよねー。でも、相手がここがイイって言っててさ。」
「相手って?」
「だから、合コン相手。」
「・・・嘘。」
「嘘のような、嘘じゃないような・・・。」
「全くわからないよ!」
美冬は、からかうようにしずくの言葉をかわして、反応を楽しんでいるようだった。
彼女はそういうところがある。しずくをいじめて面白がっているのだ。だが、それも自分を思っての事なので、しずくもイヤな思いはしていなかった。
友達同士もからかい合いだ。
だが、今回は彼女の意図が全くわからなかった。
しずくの誕生日だから、仲のいい友人を呼ぶのだろうか?そう考えていると、美冬が「あ、来た来た!」と目的の相手を見つけたのか手を挙げた。
美冬の視線を辿って、しずくもその相手を見つけた。
その男性も小さく手を挙げて合図をしていたのですぐにわかった。
長身で細身、少しウェーブがかかったネコッ毛の茶色の髪、そして整った顔立ちだった。「爽やか系」というのは、彼の事を言うのだろうなっと感じだった。
細身の黒のスーツもしっかり着こなしている、大人の男性という感じだった。おしゃれなこの店内にとても会う人だった。
「すみません、遅くなりました。」
「いいのよ、主役は遅れてくるものだし。」
「美冬さん・・・今日は俺が主役じゃないでしょ。」
美冬の知り合いは、おしゃれな人が多いな、とその男性を見ていると、大きな瞳をしずくに向けて爽やか男子はしずくに微笑みかけた。
その微笑みが誰かに似ているようで、しずくはドキリとした。
ずっと頭の中から離れない、少年のように笑う彼だろうか。
「こんばんは。お待たせしてしまって、すみません。」
「あ、いえ。初めまして、栗花落しずくです。」
そういうと、何故か爽やか男子は、首を横に振った。その意味がわからず、不思議そうに見つめると隣にいた美冬が「しずくは鈍感さんだからちゃんと言わなきゃだめよー。」と言っていた。
それに反論しようとするが、「なるほど。」とその爽やか男子は笑いながら話を続けた。
「お久しぶり。雨ちゃん。」
「・・・あっ!?その呼び方、もしかして・・・。」
「覚えててくれた?伊坂光哉です。」
「光哉くん!」
その名前を呼んで、幼い頃の記憶が一気に蘇ってきた。
伊坂光哉。小さい頃よく遊んだ同じ学年の仲の良かった男の子。
そして、しずくの初恋の相手だった。
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