事前事後短編集

へさね

文字の大きさ
上 下
2 / 6

罪の香りの煙

しおりを挟む
危険な男と寝てる人


物音がして、目を開けた。
気配と眠る前の記憶で、誰かは解っていた筈だった。
ごめん、と短く謝った彼は、その後に 嫌いだった?と続けた。
俺が起きることは想定していても、彼を睨むように見つめてしまうことは考えてなかったのだろう、いいや、と答えて少し体を起こした。
「煙草、吸うんだな」
意外だ、と口にすると、こちらに向けられた瞳が細められた。
「そう?」
彼の笑うような囁き声が薄闇に響き、微かな月明かりに濡れた瞳が光っているのを見て、闇に目が慣れたのを認識した。
「たまに吸うんだよ、その辺にあれば」
ベッドサイドの灰皿に灰を落としながら彼が言った。
煙の匂いや彼の唇に差し込まれた銘柄は俺が普段吸うものとは違ったので、誰かに貰ったのだろうかとその状況を想像した。
街中まちなかで出会った彼に興味を持った者から口数を減らすために頂戴したのかもしれないし、血と硝煙の中で彼が出会った者のふところから箱ごとくすねたのかもしれない。
どちらにしろ気の毒なことだ。

「夜中に目が覚めると、なにか口寂しいのはどうしてだろうね、」
彼が独り言のように呟いた。
彼の細い指がその口元に近付いて、青白い煙草を挟んで離れていった。
唇と、そこから離れていく煙を目で追っていて、彼が煙草の吸い口を俺の方に近づけていたことに気付けなかった。
少し目を見開いて首を後ろに退いた俺に、彼が薄く肩を揺らして笑った。
「吸う?」
答えずに、彼の指先から煙草を奪ってその手を引き寄せた。
顔を近付けると唇を割って、煙を追い出すように味わった。
体を離して、あんた寝惚けてるだろう、と笑う彼に再び顔を寄せながら、煙草を灰皿へと押し付けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

エステティシャンと美少年

聖性ヤドン
BL
乳首の色がきれいになる、そんな評判の高級エステに美少年アイドルがやってきた。 美少女と見紛うような可憐な美少年が、乳首エステで感じてしまう! エステティシャンはたまらず彼に“いけないサービス”を施すのだが……。 乳首責めをテーマに書いた作品です。 ※コミッションサービスで受託し書かせていただいた作品ですが、一般公開OKという条件でしたのでこちらにも掲載させていただきます。

孤独な戦い(6)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜

ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。 高校生×中学生。 1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。

孤独な戦い(8b)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

わんこな部下の底なし沼

千環
BL
朝が弱いサラリーマンの鈴井。普段は通勤ラッシュの満員電車を避けるために少し早く起きて出社しているのだが、寝過ごしてしまう日も。 ある朝、そんな満員電車に揺られていると誰か手が臀部に触れて…… ※完結済み 気が向いたらポロッと掌編更新します。

孤独な戦い(5)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

処理中です...