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予告 奴らの足音がきこえる

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補遺 やつらの足音が聞こえる

「御所さまは、亡くなられた……。」

「何故、きさま、止められなんだ!」
「おかしらさえ、この内館におられながら、お気づきにならなんだな。」
「ううう……!」
「……咎は受けよう。」

「川原御所の乱」によって、浪岡御所は激震に見舞われた。
御所さま―浪岡具運暗殺は、「かれら」の運命をも翻弄する。

(いかぬ! この男ではいかぬ! ……浪岡御所は終わりではないか?)

「左衛門尉さまに従うだと。ありえぬ! 謀叛人ではないか?」
「いまさら、あだしごとを口にするでない。わしらの任はなんじゃ。陰から御所……浪岡北畠さまをお支えする。そのためにわしらは、この津軽まで来た。」
「……新しい御所さまは、おられる。」
「童じゃな。……お育ちまで、十年を待つか。」
「先の御台さまがおられるが……?」

「左衛門尉さま……。つっと、かくなりたいと望んでおりました。」
「義姉上。お許しくだされ。」

「おぬしが、”伊勢の者“の頭目じゃったか。」
「四位さまのみ代より、お仕えいたしております。これよりも、変わらず……。」
「何の顔(かんばせ)あって、まかり越したか!……このたび、謀叛を未然に防げなんだ。その科は重い。」
「……!」

(これで、おれの邪魔をする者どもは消えた。……おれの罪を知るのは、さ栄だけでよい。)

「なにが浪岡御所か! こんなところにはおられぬ! 伊勢に戻らせて貰うぜ!」「おれも。」「儂も、左様しよう。」「伊勢など知らぬが、ここにいては命があぶのうござる。」

「蠣崎新三郎どの……?」

「ならぬ。ご猶子さまは、松前にお帰りになるのじゃ。」

「若旦那あああっ!」

「蠣崎新三郎どの、鉄砲に撃たれよった。……あれは、死ぬな。」
「死んでしまわれては、な。」

「りく、久しいな。」
「あんたかい? 相変わらず、大事な命を無駄遣いしておるか。」
「言いよる。今なら、おれの女にしてもやれるが?」
「御免被るね。」

崩壊する浪岡御所。
生き残りをかけた、「やつら」の暗闘が……。

「おれは、もう、なんの望みもない。ひとの世に、喜びを求めようとは思わぬ。……だが、おれの、やらねばならぬらしいことがある。それだけを、果たすために生きていく。」
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