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八の段 大団円 悲傷(三)
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あやめが新三郎の臥す部屋に連れてこられるまでには、いくらかの時間がかかった。
その間、容態は急変している。手足が冷え切り、脈すら徐々に弱くなっていった。
(あやめの顔を見るまで、気を喪ってはならぬな。)
眠くなる鎮痛の薬を飲むのをやめたが、足と腹の激しい痛みは薄れ始めていた。その代り、しばしば意識が飛ぶのをおぼえた。
戸口に気配がした。たくさんのひとが来る。
(来たか……)
新三郎は、従者に、半身を起こせと目で合図した。ためらう様子に、なだめるような笑いで催促する。
「兄上、十四郎でございます。」
新三郎がようやく体を起こし、支えられてそちらに対すると、新三郎の横に二人の女がいて、ひとりが上体が崩れて倒れそうな相手を支えていた。長い髪の女の頭が、ぐらぐらと不規則に揺れている。
(あやめか……?)
新三郎は、衝撃を受けた。
あやめは泥まみれの着物こそ替え、乱れた髪も整えて貰っていたが、表情は、新三郎ですらみたことのないものだった。
あやめをいたぶっていた頃の新三郎がしばしば目にした泣き顔ですら、これほどの怯えや恐怖に支配されていなかった。まるで、ものに怖がる幼女のようである。現に、支えてくれるもう一人の女の後ろに隠れたいかのようなそぶりだ。
(あやめ……!)
新三郎はあやめの目をみつめようとしたが、悲鳴をあげるようにしてそらされてしまう。細かく震えているのではないか。
「あやめ、どうした?」
新三郎は、自分の声が咽喉に引っかかるのを覚えた。ひどく小さい。
「どうしたのだ、あやめ?」
力を入れて、いい直してみる。
あやめは反応したが、恐怖に目を見開いただけである。口を真一文字に閉じて、荒い息を吸った。
三人は、新三郎の床に近づいた。引きずられるようになったあやめも、座りはする。
「十四郎! これは、どうした仕儀じゃ?」
「……。」
十四郎は黙って首を振った。
「おやかたさま、御寮人さまは、お口が利けなくなられております。」
「おセン……いや、小春か。」
新三郎はそこで気づいた。
「覚えていてくだすって。」
「お前にも会えるとはな。息災であったか。」
「はい。お目にかかれ、うれしうございます。」
「……あやめの世話をしておるのか。」
「はい。」
「身内が斬られたから、斯様のままなのか。」
「おやかたさまも、お怪我をなさいました。……御寮人さま、おやかたさまでございますよ。」
「あやめ、」新三郎は、会話がまるで耳に入っていないようなあやめに、いい聞かせる。「すべて、戦のならいじゃ。お前の家人も、武家ではなくとも、戦に出る者であったろう? 気に病むでない。あれも、お前のためを思うてのこと。今頃、あの世で満足しておろう。おれも、……」
(耳に入らぬか? 心が割れた、とは、そういうことか……。)
「あやめ、聞こえぬか?」
あやめは怯えを顔に張りつかせたままだが、厭々をするように首を微かに振ったようにみえた。
(聞こえてはおるな。)
「十四郎。お前の話も、よう聴けんのか?」
「はい。これで、落ち着いた方にございます。屹度これも、兄上のおかげ」
「十四郎!」
新三郎は、怒声を発した。その瞬間、半身に力が失せて、揺れる。十四郎が慌てて崩れるのを支えた。
「……おれたち蠣崎の者が……兄弟が、ふたりで、あの納屋の御寮人を斯様にしてしもうた。」
新三郎の目から、一条の涙が流れたのに、十四郎は気づいた。
「どうすれば、元のあやめに戻ってくれる?」
「わかりませぬ。」
(お前がわからなくてどうするのか?)
新三郎は、昔のように十四郎に歯がゆい思いがした。
と、激しい息の苦しさがまた忘れようもなく迫ったのを感じる。
(もう時がない。……このままのあやめを放って、地獄に行けぬわ!)
「……あやめ、来ぬか?」
新三郎は片手を差し伸べた。
「御寮人さま、さあ。」
小春は身じろぎするあやめを、病床に近寄らせる。あやめはますます怯えを強くしながら、小春に手を取られ、新三郎の細かく震える手に添えさせられた。
新三郎の手は、血の気が失せ、爪先まで真っ白になっている。
(ああ、このお方も長くない。死ぬ前の手だ!)
小春はあやめの手を被せてやりながら、戦慄した。
「あやめ、わかるじゃろう? おれはもうすぐ死ぬ。」
(なにをいわれるのだ。兄上?)
(おやかたさま、なにを?)
語りかけられたあやめは、目を見開いて無言で震えた。にじんでいた涙が落ちる。
「お前は、連れて行ってやれん。」
あやめが口を開いたが、意味のない呻きが出ただけだ。身を揉みながら、なにか喋ろうとしているのだろうが、表情はそれがわからないほど、恐怖にひきつっているばかりだ。
「さきほど、お前を褒めてやった。あとで、十四郎に聞け。」
「……。」
「あやめ、お前につらい思いをさせ、まことにすまなかった。お前を苦しませた償いに、お前の望みを今、かなえてやる。」
あやめの手は、ただ新三郎の手の上に乗っているだけで、力を入れて握ったりはしない。ただ、その目は恐れるように見開かれ、それでも新三郎を見つめていた。
「兄上?」
新三郎は、小春に目で合図した。目を真っ赤にした小春は、あやめの手を外し、あやめとともに元の場所に戻った。あやめの上体はそのときも揺れた。
「十四郎。おれは今より腹を切る。介錯せよ。」
「なにをいわれるか?」
新三郎は、あやめの表情が動いたのをみた。
「納屋の御寮人、今井あやめ殿の御災難の責は、我ら蠣崎家一統にある。よって、総領の前蝦夷代官が腹を切ってお詫び申し上げる。」
「そのようなことはさせぬぞ、兄上! 諦められるな、ご養生されよ。あやめのためでもある。」
「あやめ、お前が望んださまを見せてやる。これでお前の宿願は全て果たせる。」
「……!」
あやめの表情が、驚愕に染まっていく。
「お刀など渡してはならんぞ!」
十四郎は、後ろで控えていた従者たちに叫んだが、息を呑んだ。
新三郎の手に、抜身の短刀が既に握られていた。
飛びつこうとした十四郎に、迷うことなく新三郎は短刀を振った。十四郎の掌が少し切れた。傷よりも、新三郎の確固たる態度に、十四郎は気押されて下がった。
「やっと一矢報いたか。」
新三郎は、人懐こい笑いを浮かべた。
「兄上っ?」
「十四郎、先ほどお前が見舞うてくれたときから、夜着の中にこれがあった。それをお前、わざわざ近づいてきよって……。二度と油断するな。およそ無駄でも、最後まであきらめぬ者もおる。仕返ししたいだけの者もおる。……先ほど、つい、いいそびれたわ。」
「あ……。」
「十四郎、この場はお前の敗けじゃ。よって、おれの命に従え。あやめのために、俺が最後にしてやれるのは……」
十四郎は膝をついた。あやめのほうを見る。
(あやめ、……お前は?)
あやめの表情が、あやしい。驚愕に震えて、口を開いたり閉じたりしているが、呻き声が変わってきている。
「あやめ……お前のいとしい十四郎が、憎い名代の首を刎ねる。お前の仇を討つ。昔、組み伏せられたとき、夢にまでみたであろう? そのときの気持ちに戻れ。そうすれば、なにも哀しむことはないぞ。……そして、元のあやめに戻れるのだ。」
(また笑ってくれ。たくさん、面白いことを喋ってくれ。お前の好きな、新しい商いのことだけを考えて暮らせ。よいな、あやめ!)
「おやかたさま! おやめに!」
小春が立ち上がったが、それを新三郎が目で叱咤する。
「お止めするな。」
十四郎が続いた。小春はくたくたと膝をつく。
新三郎は、静かに笑った。傷に巻いたさらしを引きちぎるように解くと、赤黒く開いた傷口の横に、短刀を一気に突き入れた。傷口に向けて横に引く。縦に、十文字に、と突き立てたところで、力が急速に失せていく。血に真っ赤に濡れた手が、もう動かない。
「十四郎、……頼む。」
あやめが戦慄して、息を長く引いた。じっと見つめたままだが、がくり、と前のめりに崩れた状態を、肘で支えた。
新三郎は、あやめの姿を上目遣いに追った。
(見よ、あやめ、お前の仇が討たれるぞ。)
(なにを驚いておる? これでいいのだぞ。)
(喜べ、あやめ。)
(これでお前は全ての恨みから解き放たれた。元のお前に戻れる。)
十四郎は迷わなかった。身に着けていた脇差を抜き、一閃させた。新三郎の首筋から鮮血が迸り、ゆっくりと上体が斜めに倒れた。
倒れていく新三郎の目は、あやめの姿を一瞬とらえた。
(あやめ……!)
(幸せになれ。)
倒れたとき、妻子の気配がした。うむ、待たせた、いま行くぞ、と答えた。
新三郎の意識は消えた。
血の海の中で、新三郎のからだは二、三度痙攣し、そして、止まった。
十四郎は、遺骸に向かって、深々と頭を下げる。
(兄上……お安らかに。)
(この蝦夷島のこと、もっとお話しを伺いたかった。おれも、見聞をお伝えして、おれなりの考えを聴いていただきたかった。たがいに間違いを正し、よりよい道をともに探りたかった。)
(ともに……? 三人で?)
「あやめっ?」
十四郎は、あやめが立ち上がったのを見て、驚いた。
あやめは震えている。だが、その表情はどうだ。先ほどとは異なり、昂揚とか喜悦としか言いようのないものが浮かんでいる。やがて、笑顔になった。
「御寮人さま……?」
泣き伏しかけていた小春が、驚いて座り込んだまま、あやめを見上げている。
(なぜ、笑う?)
「あっ?」
その場にいたすべての者が驚愕に震えたのは、あやめの口から、ついに笑い声が漏れたからだ。やがて、激しく、甲高い笑い声が響いた。
「あやめ、どうした?」
「御寮人さま、なんで?」
あやめは新三郎の死骸を覗き込むと、指差し、またけたたましい笑い声をあげた。躍るように部屋を歩き、身を揉んで笑い続ける。
(狂ったか……? ああ、兄上のお気持ちは仇になった?)
(御寮人さまのお心が、持たなかった? おやかたさまのあのさまは、やはり、……)
「蠣崎新三郎、ついに討たれおったか!」
「あやめ、喋れるのか?」
(だが、……誰だ、この声は?)
十四郎の耳に、あやめの声は別人のそれに聞こえた。
「これでまた、仇が討てたわ。蠣崎の男、弟どもはことごとく死ぬがよい。」
「弟?」
(ああ、これは御寮人さまだ。お声と訛りが他人のように変わっているようだが、御寮人さまに違いない。)
小春にはわかる。だが、自分と違って、そのように演じているのではないだろう。
(怨霊がついた、とはこれなのだろう。あやめさまのご乱心が産んだ、怨霊だ。)
「わらわは南条越中の室。永禄の昔、弟たち二人に毒を盛ったとの濡れ衣をわらわに着せた、蠣崎家に祟りをなしておる。」
「……あやめ!」
「左様、我が名はあやめ。同じ名の、この堺女に憑りついてやったものよ。どうじゃ、蠣崎の男どもは、これで何人非業の死をとげよったかの? すべて、蠣崎志摩守が蝦夷代官のとき、おのが子殺しの罪を、わらわと南条にかぶせよった非道の報いぞ。」
「あやめ、……頼む、もとに戻れ! お前は、怨霊など……」
「触るでないわ、十四郎。おぬしは当分、生かしておいてやるが、おぬしの罪業も別に深いぞ。この堺女とともに、何十何百人のひとを殺めた?」
「……っ?」
十四郎は怯んだ。あやめの罪の意識の深さに、たじろいでいる。
騒ぎをききつけて、家中の者がまた集まってきた。
「鎮まれ。前蝦夷代官様は、戦の責をおひとりで負うて、見事に自裁された。蠣崎家永代を守護する御霊となられたのじゃ。」
「なにが永代じゃ。この家が長続きしてよいものか?」
あやめはけたたましく笑った。
「聞いたか、皆の者。わらわは南条越中の室。俗名は、あやめ。そこの父上に、弟たち二人に毒を盛ったとの濡れ衣を着せられた者よ。永禄のころの蝦夷代官こと蠣崎若州さまは、意に従わぬ気配みせたとて、おのが嫡子と次男を殺し、その罪をわらわにかぶせた。」
部屋の戸口で様子をうががっていた廊下の一同があっと驚いて平伏すると、蠣崎志摩守が供回りを連れて現れていた。
「近頃は跡継ぎの新三郎を牽制せんとその弟たちを操ったが、ことが露見せんとするや、それらを見捨てた。そして、こたびの戦も、父上のせいで起きたのではないか。老齢の身でありながら、故もなく降ってきたご官位を手放さず、嫡子たる蝦夷代官を元の主家との板挟みにして悩ませた。挙句は、戦の責をまたひとりに負わせよったか。子を喰う親じゃな。鬼よ。我が父ながら、感じいるわ。」
「乱心者じゃ。手討ちにせよ。」
志州は供回りに命じた。
「待て。ならぬ。」
十四郎が叫んだ。舞うように部屋の中を行き来するあやめを、庇うように立つ。
「十四郎。邪魔立てするな。」
「たしかに怨霊、いや物の怪にございましょう。納屋の御寮人が、斯様な作り話をわめきたてる理由がない。」
「そうじゃ、作り事じゃ。黙らせよ。」
「この者を斬ったところで、怨霊なり物の怪なりが別の者につく恐れがある。そこの女あたりに、また?」
誰かの悲鳴が聞こえた。
「わらわは、まだまだ祟ってやろうぞ。子殺しの卑怯者がこともあろうに主上の御命を受けて志摩守の位を頂戴し、お役目を務めるなど、あろうことかよ。」
新三郎の無惨な遺骸が目に入ったときに、十四郎は「怨霊を払った」とはどうやったのかに頭をめぐらした。
(兄上なら、した手には出られぬ。)
「下がれ、物の怪! それ以上の世迷い事は許さぬぞ!」
「十四郎、それが姉に向かっての口の利き方か?」
「……もし、まことに亡き姉というのなら、蠣崎の家の者。亡き蝦夷代官様の御霊前を騒がすのは、やめられよ。」
「この新三郎も、わらわが、このあやめが、祟り殺してやったようなものよ。」
そう叫んで大声で笑った瞬間、あやめの目から涙が溢れ出た。
(あやめ……!)
「じゃが、おぬしが殺したのではないのだな。左様よの。おぬしは一度、亡き兄上に祓われてしもうたはず。もう、祟る力はないのじゃ。ご封印が解けて、また罪科もない納屋御寮人のからだに入っただけじゃが、もう成仏せよ。」
「できぬ。」
「姉上。儂はいま、蝦夷地宰領の任にある。蠣崎の家の女なら、亡き代官様より跡を預かり、いずれ志摩守家を継ぐ、蝦夷地宰領の言に従え!」
「……十四郎?」
志摩守が前に思わず出た。蠣崎家の跡目の話をここで出された。
「志州さま。父上。蠣崎の家の長として、父上からも亡き姉上に、退散をお命じください。姉上のご供養は、父上が立派にされている筈。それをこの者に思い出させてくださりませ。」
蠣崎志摩守は虚をつかれたように、曖昧に頷いた。亡き長女と認めてしまえば、その言が事実だといったことにもなりかねないが、いまは相続を規定事実のように十四郎がいったのに気をとられている。なにか声を上げようとした瞬間だった。
「……おやかたさま。」
小さく呟いて、あやめはくたくたと倒れかかる。十四郎はそれを抱きとめた。
「御寮人さまっ?」
「あやめ!」
顔面蒼白になっているあやめは、完全に気を喪っていた。
軽いあやめの躰を抱いた十四郎は、あのソヒィアを腕に抱いたときと同じような、病の匂いを感じ、身を震わせた。
「あやめ……あやめっ!」
その間、容態は急変している。手足が冷え切り、脈すら徐々に弱くなっていった。
(あやめの顔を見るまで、気を喪ってはならぬな。)
眠くなる鎮痛の薬を飲むのをやめたが、足と腹の激しい痛みは薄れ始めていた。その代り、しばしば意識が飛ぶのをおぼえた。
戸口に気配がした。たくさんのひとが来る。
(来たか……)
新三郎は、従者に、半身を起こせと目で合図した。ためらう様子に、なだめるような笑いで催促する。
「兄上、十四郎でございます。」
新三郎がようやく体を起こし、支えられてそちらに対すると、新三郎の横に二人の女がいて、ひとりが上体が崩れて倒れそうな相手を支えていた。長い髪の女の頭が、ぐらぐらと不規則に揺れている。
(あやめか……?)
新三郎は、衝撃を受けた。
あやめは泥まみれの着物こそ替え、乱れた髪も整えて貰っていたが、表情は、新三郎ですらみたことのないものだった。
あやめをいたぶっていた頃の新三郎がしばしば目にした泣き顔ですら、これほどの怯えや恐怖に支配されていなかった。まるで、ものに怖がる幼女のようである。現に、支えてくれるもう一人の女の後ろに隠れたいかのようなそぶりだ。
(あやめ……!)
新三郎はあやめの目をみつめようとしたが、悲鳴をあげるようにしてそらされてしまう。細かく震えているのではないか。
「あやめ、どうした?」
新三郎は、自分の声が咽喉に引っかかるのを覚えた。ひどく小さい。
「どうしたのだ、あやめ?」
力を入れて、いい直してみる。
あやめは反応したが、恐怖に目を見開いただけである。口を真一文字に閉じて、荒い息を吸った。
三人は、新三郎の床に近づいた。引きずられるようになったあやめも、座りはする。
「十四郎! これは、どうした仕儀じゃ?」
「……。」
十四郎は黙って首を振った。
「おやかたさま、御寮人さまは、お口が利けなくなられております。」
「おセン……いや、小春か。」
新三郎はそこで気づいた。
「覚えていてくだすって。」
「お前にも会えるとはな。息災であったか。」
「はい。お目にかかれ、うれしうございます。」
「……あやめの世話をしておるのか。」
「はい。」
「身内が斬られたから、斯様のままなのか。」
「おやかたさまも、お怪我をなさいました。……御寮人さま、おやかたさまでございますよ。」
「あやめ、」新三郎は、会話がまるで耳に入っていないようなあやめに、いい聞かせる。「すべて、戦のならいじゃ。お前の家人も、武家ではなくとも、戦に出る者であったろう? 気に病むでない。あれも、お前のためを思うてのこと。今頃、あの世で満足しておろう。おれも、……」
(耳に入らぬか? 心が割れた、とは、そういうことか……。)
「あやめ、聞こえぬか?」
あやめは怯えを顔に張りつかせたままだが、厭々をするように首を微かに振ったようにみえた。
(聞こえてはおるな。)
「十四郎。お前の話も、よう聴けんのか?」
「はい。これで、落ち着いた方にございます。屹度これも、兄上のおかげ」
「十四郎!」
新三郎は、怒声を発した。その瞬間、半身に力が失せて、揺れる。十四郎が慌てて崩れるのを支えた。
「……おれたち蠣崎の者が……兄弟が、ふたりで、あの納屋の御寮人を斯様にしてしもうた。」
新三郎の目から、一条の涙が流れたのに、十四郎は気づいた。
「どうすれば、元のあやめに戻ってくれる?」
「わかりませぬ。」
(お前がわからなくてどうするのか?)
新三郎は、昔のように十四郎に歯がゆい思いがした。
と、激しい息の苦しさがまた忘れようもなく迫ったのを感じる。
(もう時がない。……このままのあやめを放って、地獄に行けぬわ!)
「……あやめ、来ぬか?」
新三郎は片手を差し伸べた。
「御寮人さま、さあ。」
小春は身じろぎするあやめを、病床に近寄らせる。あやめはますます怯えを強くしながら、小春に手を取られ、新三郎の細かく震える手に添えさせられた。
新三郎の手は、血の気が失せ、爪先まで真っ白になっている。
(ああ、このお方も長くない。死ぬ前の手だ!)
小春はあやめの手を被せてやりながら、戦慄した。
「あやめ、わかるじゃろう? おれはもうすぐ死ぬ。」
(なにをいわれるのだ。兄上?)
(おやかたさま、なにを?)
語りかけられたあやめは、目を見開いて無言で震えた。にじんでいた涙が落ちる。
「お前は、連れて行ってやれん。」
あやめが口を開いたが、意味のない呻きが出ただけだ。身を揉みながら、なにか喋ろうとしているのだろうが、表情はそれがわからないほど、恐怖にひきつっているばかりだ。
「さきほど、お前を褒めてやった。あとで、十四郎に聞け。」
「……。」
「あやめ、お前につらい思いをさせ、まことにすまなかった。お前を苦しませた償いに、お前の望みを今、かなえてやる。」
あやめの手は、ただ新三郎の手の上に乗っているだけで、力を入れて握ったりはしない。ただ、その目は恐れるように見開かれ、それでも新三郎を見つめていた。
「兄上?」
新三郎は、小春に目で合図した。目を真っ赤にした小春は、あやめの手を外し、あやめとともに元の場所に戻った。あやめの上体はそのときも揺れた。
「十四郎。おれは今より腹を切る。介錯せよ。」
「なにをいわれるか?」
新三郎は、あやめの表情が動いたのをみた。
「納屋の御寮人、今井あやめ殿の御災難の責は、我ら蠣崎家一統にある。よって、総領の前蝦夷代官が腹を切ってお詫び申し上げる。」
「そのようなことはさせぬぞ、兄上! 諦められるな、ご養生されよ。あやめのためでもある。」
「あやめ、お前が望んださまを見せてやる。これでお前の宿願は全て果たせる。」
「……!」
あやめの表情が、驚愕に染まっていく。
「お刀など渡してはならんぞ!」
十四郎は、後ろで控えていた従者たちに叫んだが、息を呑んだ。
新三郎の手に、抜身の短刀が既に握られていた。
飛びつこうとした十四郎に、迷うことなく新三郎は短刀を振った。十四郎の掌が少し切れた。傷よりも、新三郎の確固たる態度に、十四郎は気押されて下がった。
「やっと一矢報いたか。」
新三郎は、人懐こい笑いを浮かべた。
「兄上っ?」
「十四郎、先ほどお前が見舞うてくれたときから、夜着の中にこれがあった。それをお前、わざわざ近づいてきよって……。二度と油断するな。およそ無駄でも、最後まであきらめぬ者もおる。仕返ししたいだけの者もおる。……先ほど、つい、いいそびれたわ。」
「あ……。」
「十四郎、この場はお前の敗けじゃ。よって、おれの命に従え。あやめのために、俺が最後にしてやれるのは……」
十四郎は膝をついた。あやめのほうを見る。
(あやめ、……お前は?)
あやめの表情が、あやしい。驚愕に震えて、口を開いたり閉じたりしているが、呻き声が変わってきている。
「あやめ……お前のいとしい十四郎が、憎い名代の首を刎ねる。お前の仇を討つ。昔、組み伏せられたとき、夢にまでみたであろう? そのときの気持ちに戻れ。そうすれば、なにも哀しむことはないぞ。……そして、元のあやめに戻れるのだ。」
(また笑ってくれ。たくさん、面白いことを喋ってくれ。お前の好きな、新しい商いのことだけを考えて暮らせ。よいな、あやめ!)
「おやかたさま! おやめに!」
小春が立ち上がったが、それを新三郎が目で叱咤する。
「お止めするな。」
十四郎が続いた。小春はくたくたと膝をつく。
新三郎は、静かに笑った。傷に巻いたさらしを引きちぎるように解くと、赤黒く開いた傷口の横に、短刀を一気に突き入れた。傷口に向けて横に引く。縦に、十文字に、と突き立てたところで、力が急速に失せていく。血に真っ赤に濡れた手が、もう動かない。
「十四郎、……頼む。」
あやめが戦慄して、息を長く引いた。じっと見つめたままだが、がくり、と前のめりに崩れた状態を、肘で支えた。
新三郎は、あやめの姿を上目遣いに追った。
(見よ、あやめ、お前の仇が討たれるぞ。)
(なにを驚いておる? これでいいのだぞ。)
(喜べ、あやめ。)
(これでお前は全ての恨みから解き放たれた。元のお前に戻れる。)
十四郎は迷わなかった。身に着けていた脇差を抜き、一閃させた。新三郎の首筋から鮮血が迸り、ゆっくりと上体が斜めに倒れた。
倒れていく新三郎の目は、あやめの姿を一瞬とらえた。
(あやめ……!)
(幸せになれ。)
倒れたとき、妻子の気配がした。うむ、待たせた、いま行くぞ、と答えた。
新三郎の意識は消えた。
血の海の中で、新三郎のからだは二、三度痙攣し、そして、止まった。
十四郎は、遺骸に向かって、深々と頭を下げる。
(兄上……お安らかに。)
(この蝦夷島のこと、もっとお話しを伺いたかった。おれも、見聞をお伝えして、おれなりの考えを聴いていただきたかった。たがいに間違いを正し、よりよい道をともに探りたかった。)
(ともに……? 三人で?)
「あやめっ?」
十四郎は、あやめが立ち上がったのを見て、驚いた。
あやめは震えている。だが、その表情はどうだ。先ほどとは異なり、昂揚とか喜悦としか言いようのないものが浮かんでいる。やがて、笑顔になった。
「御寮人さま……?」
泣き伏しかけていた小春が、驚いて座り込んだまま、あやめを見上げている。
(なぜ、笑う?)
「あっ?」
その場にいたすべての者が驚愕に震えたのは、あやめの口から、ついに笑い声が漏れたからだ。やがて、激しく、甲高い笑い声が響いた。
「あやめ、どうした?」
「御寮人さま、なんで?」
あやめは新三郎の死骸を覗き込むと、指差し、またけたたましい笑い声をあげた。躍るように部屋を歩き、身を揉んで笑い続ける。
(狂ったか……? ああ、兄上のお気持ちは仇になった?)
(御寮人さまのお心が、持たなかった? おやかたさまのあのさまは、やはり、……)
「蠣崎新三郎、ついに討たれおったか!」
「あやめ、喋れるのか?」
(だが、……誰だ、この声は?)
十四郎の耳に、あやめの声は別人のそれに聞こえた。
「これでまた、仇が討てたわ。蠣崎の男、弟どもはことごとく死ぬがよい。」
「弟?」
(ああ、これは御寮人さまだ。お声と訛りが他人のように変わっているようだが、御寮人さまに違いない。)
小春にはわかる。だが、自分と違って、そのように演じているのではないだろう。
(怨霊がついた、とはこれなのだろう。あやめさまのご乱心が産んだ、怨霊だ。)
「わらわは南条越中の室。永禄の昔、弟たち二人に毒を盛ったとの濡れ衣をわらわに着せた、蠣崎家に祟りをなしておる。」
「……あやめ!」
「左様、我が名はあやめ。同じ名の、この堺女に憑りついてやったものよ。どうじゃ、蠣崎の男どもは、これで何人非業の死をとげよったかの? すべて、蠣崎志摩守が蝦夷代官のとき、おのが子殺しの罪を、わらわと南条にかぶせよった非道の報いぞ。」
「あやめ、……頼む、もとに戻れ! お前は、怨霊など……」
「触るでないわ、十四郎。おぬしは当分、生かしておいてやるが、おぬしの罪業も別に深いぞ。この堺女とともに、何十何百人のひとを殺めた?」
「……っ?」
十四郎は怯んだ。あやめの罪の意識の深さに、たじろいでいる。
騒ぎをききつけて、家中の者がまた集まってきた。
「鎮まれ。前蝦夷代官様は、戦の責をおひとりで負うて、見事に自裁された。蠣崎家永代を守護する御霊となられたのじゃ。」
「なにが永代じゃ。この家が長続きしてよいものか?」
あやめはけたたましく笑った。
「聞いたか、皆の者。わらわは南条越中の室。俗名は、あやめ。そこの父上に、弟たち二人に毒を盛ったとの濡れ衣を着せられた者よ。永禄のころの蝦夷代官こと蠣崎若州さまは、意に従わぬ気配みせたとて、おのが嫡子と次男を殺し、その罪をわらわにかぶせた。」
部屋の戸口で様子をうががっていた廊下の一同があっと驚いて平伏すると、蠣崎志摩守が供回りを連れて現れていた。
「近頃は跡継ぎの新三郎を牽制せんとその弟たちを操ったが、ことが露見せんとするや、それらを見捨てた。そして、こたびの戦も、父上のせいで起きたのではないか。老齢の身でありながら、故もなく降ってきたご官位を手放さず、嫡子たる蝦夷代官を元の主家との板挟みにして悩ませた。挙句は、戦の責をまたひとりに負わせよったか。子を喰う親じゃな。鬼よ。我が父ながら、感じいるわ。」
「乱心者じゃ。手討ちにせよ。」
志州は供回りに命じた。
「待て。ならぬ。」
十四郎が叫んだ。舞うように部屋の中を行き来するあやめを、庇うように立つ。
「十四郎。邪魔立てするな。」
「たしかに怨霊、いや物の怪にございましょう。納屋の御寮人が、斯様な作り話をわめきたてる理由がない。」
「そうじゃ、作り事じゃ。黙らせよ。」
「この者を斬ったところで、怨霊なり物の怪なりが別の者につく恐れがある。そこの女あたりに、また?」
誰かの悲鳴が聞こえた。
「わらわは、まだまだ祟ってやろうぞ。子殺しの卑怯者がこともあろうに主上の御命を受けて志摩守の位を頂戴し、お役目を務めるなど、あろうことかよ。」
新三郎の無惨な遺骸が目に入ったときに、十四郎は「怨霊を払った」とはどうやったのかに頭をめぐらした。
(兄上なら、した手には出られぬ。)
「下がれ、物の怪! それ以上の世迷い事は許さぬぞ!」
「十四郎、それが姉に向かっての口の利き方か?」
「……もし、まことに亡き姉というのなら、蠣崎の家の者。亡き蝦夷代官様の御霊前を騒がすのは、やめられよ。」
「この新三郎も、わらわが、このあやめが、祟り殺してやったようなものよ。」
そう叫んで大声で笑った瞬間、あやめの目から涙が溢れ出た。
(あやめ……!)
「じゃが、おぬしが殺したのではないのだな。左様よの。おぬしは一度、亡き兄上に祓われてしもうたはず。もう、祟る力はないのじゃ。ご封印が解けて、また罪科もない納屋御寮人のからだに入っただけじゃが、もう成仏せよ。」
「できぬ。」
「姉上。儂はいま、蝦夷地宰領の任にある。蠣崎の家の女なら、亡き代官様より跡を預かり、いずれ志摩守家を継ぐ、蝦夷地宰領の言に従え!」
「……十四郎?」
志摩守が前に思わず出た。蠣崎家の跡目の話をここで出された。
「志州さま。父上。蠣崎の家の長として、父上からも亡き姉上に、退散をお命じください。姉上のご供養は、父上が立派にされている筈。それをこの者に思い出させてくださりませ。」
蠣崎志摩守は虚をつかれたように、曖昧に頷いた。亡き長女と認めてしまえば、その言が事実だといったことにもなりかねないが、いまは相続を規定事実のように十四郎がいったのに気をとられている。なにか声を上げようとした瞬間だった。
「……おやかたさま。」
小さく呟いて、あやめはくたくたと倒れかかる。十四郎はそれを抱きとめた。
「御寮人さまっ?」
「あやめ!」
顔面蒼白になっているあやめは、完全に気を喪っていた。
軽いあやめの躰を抱いた十四郎は、あのソヒィアを腕に抱いたときと同じような、病の匂いを感じ、身を震わせた。
「あやめ……あやめっ!」
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