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17.閑話 関係省庁の会話
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【東京・霞が関・警察庁】
「三上君、報告書は読んだよ。しかし理解できなかった。もう一度口頭で説明してくれないか」
「はい。8月13日正午頃、現役の自衛官である日野将吾さん27歳が岐阜城を散策中に行方不明になりました。その後、妹さんやそのお友達の証言から日野さんは突如として現れた扉に入ったきり出てきていないとのことでした」
「そこがわからないんだがね、突如として現れた扉というのはなんだ?あとその扉に入ったきり出てこられなくなったというのならば扉を壊すなりなんなりして助け出せばいいのではないかね?」
「通報を受けて現場に駆け付けた警官が扉を壊そうとしたのですが、びくともしなかったそうです。扉は金属製でしたのでエンジンカッターを使って切断も試みたそうなのですが、傷一つ付かなかったそうです」
「なんだその扉は。誰が設置したものかわからないのかね」
「一部始終をスマートフォンのカメラで撮影していた人から映像を入手したのですが、本当に突如として現れたとしか思えませんでした」
「ふむ、続けたまえ」
「はい。その後警察が扉の周りを包囲して一般人が立ち入らないようにしていたのですが、20日正午頃にまた突如として扉が開き日野さんがひょっこりと姿を現したそうです」
「素性のわからない外国人風の男と一緒に、か」
「そうです。一緒にいた男性は名前をリノスさんとだけ名乗ったそうで、苗字はないそうです」
「異世界から来た男か。わけがわからん世の中になったものだ」
「現実逃避しないでください。今現在この日本で起こっていることですよ」
「わかっている。だがこんなものは私の仕事ではない。私は警察庁の人間だ。市民の安全を守る警察官を統括する立場だ。本当に扉の向こうが国外になっているのならば外務省や防衛省の仕事だ。税関も置かなければならないから財務省もか。日本が未知の国と新たに国境を接したというのならば内閣府の指示も仰がねばならんだろう。このことは防衛省にはもう伝わっているんだったな?」
「はい。行方不明者が現役の自衛官だったこともあり、別口で報告がいっているはずです」
「ならば私の仕事はここで終わりだ。君もご苦労だったな。くれぐれもこのことは内密に」
「わかりました」
【東京・市ヶ谷・防衛省】
「参ったな。こんなわけのわからんことになるとは……」
「しかし本当に扉の向こうが別の世界であるならば一大事ですよ。我が国が陸地で他国と接してしまっていることになりますからね」
「だがその扉というのは7日に1度10分間しか開かんのだろ?なんなら海よりも守りやすくないか?」
「そうですね。でも扉の向こう側へは車両の乗り入れもできませんよ。航空戦力なんてもってのほかですし」
「部品を持ち込んで向こうで組み立てればいいんじゃないか?」
「10分の間にどれだけ持ち込めるでしょうね」
「確かにな。今あちらはドラゴンが守護しているらしいが、ドラゴンっていわれてもな」
「ピンときませんよね。ドラゴンってミサイルで倒せるんでしょうか」
「私に聞くな。君のほうが年代的にゲームや漫画などに詳しいんじゃないか?」
「私もメガド〇イブが発売された当初はかなりハマってやり込みましたが、あいにくドラゴンと戦闘機で戦うゲームはやったことがないですね」
「すまない、現実逃避してしまっていたようだ。面倒だからもう防衛大臣にすべて投げてしまえ」
「ええ、防衛大臣ってあのぼーえーだいじんですか?」
「そうだ。あのぼけ大臣にすべて委ねろ」
「本気ですか?」
「どのみちこんな問題は私たちだけで判断するわけにもいかん。総理大臣の耳にも入れる必要がある。だがいくら無能だからといって防衛大臣を飛び越えるわけにもいかないだろ」
「そう、ですよね……」
「まああのぼけ大臣が下からの報告を抱え込んで勝手なことをしそうで怖いという気持ちもわからんでもない。一応別口で官房長官と総理にも報告がいくように手を回しておいてくれ」
「わかりました」
【東京・永田町・総理大臣官邸】
「稲村君、君のところにもたぶん報告がいってるはずだよね」
「は、はい……」
「なぜ君からの報告がなかったのかね」
「申し訳ありません。何か進展があってから総理にはご報告しようと思っていました」
「そういうスタンドプレーはやめてって前にも言ったでしょうが。報・連・相を密にしていこうって」
「申し訳ありません……」
「まあ今回は、気の利く官僚さんが私と菅山君にも報告が来るようにしてくれていたからよかったけどね。今後こういうことはないように。あとマスコミにも絶対このことはしゃべらないように。わかったね?」
「はい……」
「そんじゃあ気を取り直して、会議を始めます。菅山君、頼んだよ」
「はい。では岐阜城天守閣に突如現れた扉が異世界に繋がっていた件についての会議を始めたいと思います。議題は大きく分けて2つ。1つ、扉とその先の世界についてどうするか。2つ、扉からやってきた異世界人の処遇について。まずは1つ目について議論したいと思います。何か意見のある方はいらっしゃいますか」
「どうするっていったって扉という不可思議なルートではあるものの、基本的には諸外国に対するものと同じ対応をとるしかないのでは?」
「相手国に赴いて外交ルートを築くということですか?」
「扉を介して国境を接しているのはエルフという種族が治める国だそうですね。その国ではエルフは特権階級で人間は一段劣る階級に置かれているそうじゃないですか。そんな国と対等に国交を結べるのですか?」
「そもそも言葉の問題もある。2つ目の議題を先に議論しませんか。異世界からの訪問者を雇うことができれば言葉の問題以外にも多くの問題が解決することになる」
「にわかには信じられませんが元日本人の転生者だそうじゃないですか。きっと快く協力してくれますよ」
「そういった奢った考え方はやめるべきかと。彼の協力は今後絶対に必要です。誠意をもってお願いするべきかと」
「だが彼は元日本人だろう?日本人の魂を持っているわけだ。ならば日本国に協力するのは当然の……」
「ですからそういった……」
会議は踊る、されど進まず。
「三上君、報告書は読んだよ。しかし理解できなかった。もう一度口頭で説明してくれないか」
「はい。8月13日正午頃、現役の自衛官である日野将吾さん27歳が岐阜城を散策中に行方不明になりました。その後、妹さんやそのお友達の証言から日野さんは突如として現れた扉に入ったきり出てきていないとのことでした」
「そこがわからないんだがね、突如として現れた扉というのはなんだ?あとその扉に入ったきり出てこられなくなったというのならば扉を壊すなりなんなりして助け出せばいいのではないかね?」
「通報を受けて現場に駆け付けた警官が扉を壊そうとしたのですが、びくともしなかったそうです。扉は金属製でしたのでエンジンカッターを使って切断も試みたそうなのですが、傷一つ付かなかったそうです」
「なんだその扉は。誰が設置したものかわからないのかね」
「一部始終をスマートフォンのカメラで撮影していた人から映像を入手したのですが、本当に突如として現れたとしか思えませんでした」
「ふむ、続けたまえ」
「はい。その後警察が扉の周りを包囲して一般人が立ち入らないようにしていたのですが、20日正午頃にまた突如として扉が開き日野さんがひょっこりと姿を現したそうです」
「素性のわからない外国人風の男と一緒に、か」
「そうです。一緒にいた男性は名前をリノスさんとだけ名乗ったそうで、苗字はないそうです」
「異世界から来た男か。わけがわからん世の中になったものだ」
「現実逃避しないでください。今現在この日本で起こっていることですよ」
「わかっている。だがこんなものは私の仕事ではない。私は警察庁の人間だ。市民の安全を守る警察官を統括する立場だ。本当に扉の向こうが国外になっているのならば外務省や防衛省の仕事だ。税関も置かなければならないから財務省もか。日本が未知の国と新たに国境を接したというのならば内閣府の指示も仰がねばならんだろう。このことは防衛省にはもう伝わっているんだったな?」
「はい。行方不明者が現役の自衛官だったこともあり、別口で報告がいっているはずです」
「ならば私の仕事はここで終わりだ。君もご苦労だったな。くれぐれもこのことは内密に」
「わかりました」
【東京・市ヶ谷・防衛省】
「参ったな。こんなわけのわからんことになるとは……」
「しかし本当に扉の向こうが別の世界であるならば一大事ですよ。我が国が陸地で他国と接してしまっていることになりますからね」
「だがその扉というのは7日に1度10分間しか開かんのだろ?なんなら海よりも守りやすくないか?」
「そうですね。でも扉の向こう側へは車両の乗り入れもできませんよ。航空戦力なんてもってのほかですし」
「部品を持ち込んで向こうで組み立てればいいんじゃないか?」
「10分の間にどれだけ持ち込めるでしょうね」
「確かにな。今あちらはドラゴンが守護しているらしいが、ドラゴンっていわれてもな」
「ピンときませんよね。ドラゴンってミサイルで倒せるんでしょうか」
「私に聞くな。君のほうが年代的にゲームや漫画などに詳しいんじゃないか?」
「私もメガド〇イブが発売された当初はかなりハマってやり込みましたが、あいにくドラゴンと戦闘機で戦うゲームはやったことがないですね」
「すまない、現実逃避してしまっていたようだ。面倒だからもう防衛大臣にすべて投げてしまえ」
「ええ、防衛大臣ってあのぼーえーだいじんですか?」
「そうだ。あのぼけ大臣にすべて委ねろ」
「本気ですか?」
「どのみちこんな問題は私たちだけで判断するわけにもいかん。総理大臣の耳にも入れる必要がある。だがいくら無能だからといって防衛大臣を飛び越えるわけにもいかないだろ」
「そう、ですよね……」
「まああのぼけ大臣が下からの報告を抱え込んで勝手なことをしそうで怖いという気持ちもわからんでもない。一応別口で官房長官と総理にも報告がいくように手を回しておいてくれ」
「わかりました」
【東京・永田町・総理大臣官邸】
「稲村君、君のところにもたぶん報告がいってるはずだよね」
「は、はい……」
「なぜ君からの報告がなかったのかね」
「申し訳ありません。何か進展があってから総理にはご報告しようと思っていました」
「そういうスタンドプレーはやめてって前にも言ったでしょうが。報・連・相を密にしていこうって」
「申し訳ありません……」
「まあ今回は、気の利く官僚さんが私と菅山君にも報告が来るようにしてくれていたからよかったけどね。今後こういうことはないように。あとマスコミにも絶対このことはしゃべらないように。わかったね?」
「はい……」
「そんじゃあ気を取り直して、会議を始めます。菅山君、頼んだよ」
「はい。では岐阜城天守閣に突如現れた扉が異世界に繋がっていた件についての会議を始めたいと思います。議題は大きく分けて2つ。1つ、扉とその先の世界についてどうするか。2つ、扉からやってきた異世界人の処遇について。まずは1つ目について議論したいと思います。何か意見のある方はいらっしゃいますか」
「どうするっていったって扉という不可思議なルートではあるものの、基本的には諸外国に対するものと同じ対応をとるしかないのでは?」
「相手国に赴いて外交ルートを築くということですか?」
「扉を介して国境を接しているのはエルフという種族が治める国だそうですね。その国ではエルフは特権階級で人間は一段劣る階級に置かれているそうじゃないですか。そんな国と対等に国交を結べるのですか?」
「そもそも言葉の問題もある。2つ目の議題を先に議論しませんか。異世界からの訪問者を雇うことができれば言葉の問題以外にも多くの問題が解決することになる」
「にわかには信じられませんが元日本人の転生者だそうじゃないですか。きっと快く協力してくれますよ」
「そういった奢った考え方はやめるべきかと。彼の協力は今後絶対に必要です。誠意をもってお願いするべきかと」
「だが彼は元日本人だろう?日本人の魂を持っているわけだ。ならば日本国に協力するのは当然の……」
「ですからそういった……」
会議は踊る、されど進まず。
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