寝て起きたら世界がおかしくなっていた

兎屋亀吉

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8.探索

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 翌日だ。
 一晩寝たら二日酔いのような魔力枯渇症状は治った。
 異世界転生などでは何度もこの枯渇を繰り返すことで、魔力を筋肉のように鍛えることができるという設定が多い。
 ネット掲示板にはこの設定がこの世界にも適用されているのではないかと何度も枯渇を繰り返して試した人もいたが、残念ながら魔力値は全然上昇しなかったらしい。
 二日酔いみたいな苦しみに耐えても何もないなんて理不尽な世界だ。
 俺も一応ステータスを確認してみたが、昨日と変わらず魔力値は12だった。
 やはり魔力値を上げるにはモンスターを倒すしかないようだな。
 そのためにもスキルを使いこなせるようにならないといけない。
 まず確かめておかなければならないのは、引きこもりスキルの使い方だ。
 この部屋が自分のテリトリーとして異空間に保護されているのはわかるが、それは逆に言えばここから動けないということじゃないのか。
 しばらくはここを拠点とするつもりなので問題ないが、いざ安全地帯目指して移動しようとした時に部屋が固定されていたら引きこもりスキルが死にスキルになってしまう可能性がある。
 引きこもりというスキル名なことから、引っ越し禁止というデメリットを背負っていることも考えられるのだ。
 このスキルは俺が生きていくために絶対必要なスキルなので細かい部分を調べておきたい。
 俺は昨日と同じようにおそるおそる部屋の外に出て、ドアを閉めた。
 ドアノブから手を離すと扉は消え、扉が破壊された空っぽの部屋が出てくる。
 今消えていった扉と、この破壊された扉は別物なんだよな。
 ということは、扉はスキルが作り出したものだ。
 この場所以外の場所ではどうなるのだろうか。
 試しに隣の部屋の壊れた扉のあたりでスキルを使用してみる。
 すると同じように壊れていない扉が現れ、それを開けると自分の部屋だった。
 扉がある場所ならどこでも自分の部屋に繋がるのか?
 そうだとしたら移動の問題も無くなる。
 では扉の無い場所ならどうか。
 俺は何もない通路に向かってスキルを使用してみた。
 すると普通に扉が現れる。
 どこでもいいのか。
 引きこもりというスキル名だから引っ越し不可とか、考えすぎだったな。
 むしろどこにでも家を持っていくことができる良いスキルだ。
 どこにいてもすぐにこの扉に逃げ込むことができることが分かって安心した。
 これならこのマンション内くらいは探索しても大丈夫そうだな。
 マンション内は荒らされているが今はモンスターはいなさそうだし、自分の部屋に拘る必要が無いなら別の階を拠点にしてもいい。
 俺の住んでいるマンションは鉄筋コンクリート製の13階の建物だ。
 今いる階は自分の部屋があった4階。
 しかしエレベーターが動かない今、ゴブリンなどの雑食性のモンスターが来るとしたら階段からだ。
 だったら4階よりも上層階の方が安全かもしれない。
 上層階は上層階で空を飛ぶモンスターとかがいるかもしれないが、このマンションは通路が外に面していないタイプなので飛行型モンスターが入って来るのは大変だろう。
 俺は荒らされた部屋から使えるものや食べられそうな物を頂きつつ、最上階を目指すことにした。
 丸腰では少し怖いのでまず武器を探した。
 幸いにも隣の人が剣道をやっている人だったみたいで、木刀があった。
 鍛錬用の重たい鉄芯が入ったやつだ。
 軽く振ってみたが素人では上手く振ることはできなかった。
 いくら【剣術】というスキルを持っているからといっていきなり剣の達人になったりはしないのだ。
 せいぜい才能がある素人くらいの感覚だろう。
 だけど何か武器を持っているというだけで安心感はある。
 真ん中あたりを持って槍のように使うとしよう。
 探索ができたところで俺は自室のドアを開けて玄関に陣取る。
 探索といっても何も自分で見て回らなくとも、俺には便利なスキルがあるのだ。
 手のひらを掲げ、そこに粘魚を1匹生み出す。
 こいつの視界と聴覚を使って偵察すれば、安全な自室の玄関に居ながら探索することができるのだ。
 ちなみにドアを閉めると外に出ている粘魚は消えてしまう。
 さすがに安全地帯からノーリスクで探索というわけにはいかないらしい。
 それでもモンスターが来たらすぐに扉を閉めればほとんど安全なわけだし、ノーリスクに近いな。
 粘魚の口は粘体と同じように物を異空間に飲み込む力があるので、欲しいものがあればその場で飲み込めばいい。
 数匹生み出して全てに脳を生成させれば自室の周辺を警戒しながら、探索も同時に行うことが可能だ。
 【ショゴス】はキモいがかなり有用なスキルだな。
 俺は粘魚を更に3匹生み出して全てに耳と脳を生成させた。
 軽い倦怠感を感じる。
 魔力欠乏の症状だ。
 脳と耳の付いた魚4匹が今の俺の限界らしいな。
 相変わらずキモい見た目の魚だ。
 しかしキモいと感じているということはまだ俺が正気な証拠だ。
 まだSAN値には余裕があるな。
 2匹には扉の周辺を警戒させ、2匹を飛ばして俺は1階から順に全ての部屋を見て回らせた。
 火事場泥棒は犯罪だが、超法規的措置というやつだ。
 この危険地帯にいつか人が戻って来るかはわからないが、戻って来た時になってもまだ価値がありそうな物については手を付けないでおくか。
 
 
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