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改稿版
27.実験
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空間属性を付与した銃弾による波状攻撃は、地竜の光の防御を貫くことができるということが分かった。
このまま銃でトドメを刺してもいいが、まだ試してみたいことが3つほど残っている。
今後地竜以上の防御力を持つ魔物と戦うこともあるかもしれないし、試せるうちに試しておいたほうがいいだろう。
このダンジョンを効率的に周回する参考になるかもしれないし。
地竜には悪いが、実験2といこうか。
まず試すのはワームホール。
ワームホールは空間に穴を開け、穴と穴を繋ぐ魔法だ。
その際の穴を開ける座標の指定は普段、目視による情報を参考にして行っている。
しかし座標を指定するための別の魔法を併用することによって、目視できないほど遠く離れた場所の座標を指定することもできる。
さすがに異世界は無理だが。
今回繋ぐのはそれほど離れた場所の座標ではない。
近くにある温泉街の近辺の座標だ。
モクモクとした煙が常に出続けている活火山の火口。
その溶岩の中に、座標を指定してある。
そんな座標を指定して、空間に穴を開ければどうなるか。
答えは空間の穴からドクドクと溶岩が流れ出す、だ。
『ゲルァァァァァァッ』
頭の上から注がれた灼熱の溶岩に悶絶する地竜。
岩のようにゴツゴツとした分厚い表皮を持っていても、熱いものは熱いようだ。
光の防御はちゃんと仕事しているようだが、溶岩は粘性があるので魔法攻撃のように弾けば消えるわけではない。
星の地熱によってじりじりと焼かれていく地竜。
このままでは地竜の丸焼きになってしまうので俺はワームホールを閉じて攻撃をやめる。
こちらまで熱気が伝わってきて非常に暑い。
溶岩の流出をやめてもすぐに冷めるわけではない。
しょうがなく俺は湖の中の座標とワームホールを繋ぎ、地竜に水をかけてやる。
『グルァァ、アァァァ……』
一瞬にしてボス部屋の中が蒸気に包まれ、蒸し風呂のようになってしまう。
「あ、暑いっすね。ちょっとやりすぎなんじゃ……」
「たぶんまだ生きてると思うけど……」
俺達はあまりの暑さに防具や上着を脱ぎ捨てる。
ついついニーナのナイスバディに目がいってしまうな。
おばばなのにいい身体をしおって。
俺は精神を集中することによって雑念を吹き飛ばす。
まだ実験2までしか終わってない。
俺は実験3を開始する。
『グルルゥ……』
なんかもう虫の息な気がするが、もう少し耐えてくれ地竜。
実験3は結界魔法だ。
今俺が使っている結界魔法には平面バリアの四方結界と全方位バリアの八方結界の2種類がある。
新しい結界魔法は八方結界をいじって作ったものだ。
いじった内容は単純。
八方結界の起点である8つの頂点を自在に動かせるようにしただけだ。
これによって、結界の大きさや形を発動後に変更できるようになった。
これはもはや防御の魔法ではなく、攻撃の魔法だ。
魔法名は圧搾結界と命名。
使い方は名前の通りだ。
俺は地竜の周りを結界の起点とし、結界を張る。
あとは結界を収縮していくだけだ。
俺はギリギリと結界の起点を狭めていった。
やがて地竜と結界の壁面が接するが、俺は狭めるのをやめない。
『グゥ、グ、グルゥ……』
地竜は苦しそうに呻く。
八方結界の強度と地竜の光の防御の強度のせめぎ合いだ。
そして八方結界が勝つ。
光の防御が明滅しだした。
俺は結界を止める。
これ以上やったら地竜が潰れてしまうだろう。
結界を解除し、実験3を終了する。
圧搾結界も、地竜には非常に有効な攻撃であると分かった。
「もう地竜が可哀想になってきたんですが……」
「わかってる。俺もこれ以上いたぶるほど鬼畜じゃないさ。次で終わりにする」
地竜は俺達を睥睨するが、その瞳にはもはや威圧感は無い。
まるで臆病な草食動物のような目だ。
大森林の中層で出会ったときは、完全に俺のことを下に見ていたのにな。
俺は哀れみを感じながら実験4を開始する。
次に試すのも結界魔法。
圧搾結界と同じように八方結界をいじって作った魔法だ。
いじった条件は一つだけ。
結界内を真空にする、ただこれだけだ。
だけと言うほど簡単ではないが。
魔石消費量も跳ね上がった。
しかし、文字通りの必殺の魔法となった。
真空の空間内で生きていられる生き物は地球には数種類しか存在していなかった。
異世界のファンタジーな生き物にも効果があるのか気になるところ。
俺はぐったりとした地竜を必殺の結界に閉じ込めた。
『………………』
地竜はパクパクと口を開けて苦しむ。
空気が無いので鳴き声は出ないようだ。
いくら喉を振るわせようと、振動を伝える空気が無ければ音は伝わらない。
確か人間が真空内で生きていられる時間は、15秒程度らしい。
地竜を結界に閉じ込めてからそろそろ30秒になる。
さすがに人間と同じというわけにはいかないか。
地竜はもがき苦しみ、結界に何度も激突する。
しかし光の防御よりも結界のほうが強度が上ということがさっき判明している。
結界には傷ひとつ入らず、やがて地竜は動かなくなった。
時間は1分くらいか。
ドラゴンであろうと、真空の中では1分で死ぬ。
いいデータが取れた。
「ドン引きです」
「えぐい魔法ですな」
「あれってなんで死んだんです?」
「毒ですか?」
それから奴隷たちに毒ではないということを説明するのに10分くらいかかった。
地竜の死に方だけ見たらまるっきり毒で死んだような感じだからしょうがないか。
かくして、俺の必殺技が増えた。
このまま銃でトドメを刺してもいいが、まだ試してみたいことが3つほど残っている。
今後地竜以上の防御力を持つ魔物と戦うこともあるかもしれないし、試せるうちに試しておいたほうがいいだろう。
このダンジョンを効率的に周回する参考になるかもしれないし。
地竜には悪いが、実験2といこうか。
まず試すのはワームホール。
ワームホールは空間に穴を開け、穴と穴を繋ぐ魔法だ。
その際の穴を開ける座標の指定は普段、目視による情報を参考にして行っている。
しかし座標を指定するための別の魔法を併用することによって、目視できないほど遠く離れた場所の座標を指定することもできる。
さすがに異世界は無理だが。
今回繋ぐのはそれほど離れた場所の座標ではない。
近くにある温泉街の近辺の座標だ。
モクモクとした煙が常に出続けている活火山の火口。
その溶岩の中に、座標を指定してある。
そんな座標を指定して、空間に穴を開ければどうなるか。
答えは空間の穴からドクドクと溶岩が流れ出す、だ。
『ゲルァァァァァァッ』
頭の上から注がれた灼熱の溶岩に悶絶する地竜。
岩のようにゴツゴツとした分厚い表皮を持っていても、熱いものは熱いようだ。
光の防御はちゃんと仕事しているようだが、溶岩は粘性があるので魔法攻撃のように弾けば消えるわけではない。
星の地熱によってじりじりと焼かれていく地竜。
このままでは地竜の丸焼きになってしまうので俺はワームホールを閉じて攻撃をやめる。
こちらまで熱気が伝わってきて非常に暑い。
溶岩の流出をやめてもすぐに冷めるわけではない。
しょうがなく俺は湖の中の座標とワームホールを繋ぎ、地竜に水をかけてやる。
『グルァァ、アァァァ……』
一瞬にしてボス部屋の中が蒸気に包まれ、蒸し風呂のようになってしまう。
「あ、暑いっすね。ちょっとやりすぎなんじゃ……」
「たぶんまだ生きてると思うけど……」
俺達はあまりの暑さに防具や上着を脱ぎ捨てる。
ついついニーナのナイスバディに目がいってしまうな。
おばばなのにいい身体をしおって。
俺は精神を集中することによって雑念を吹き飛ばす。
まだ実験2までしか終わってない。
俺は実験3を開始する。
『グルルゥ……』
なんかもう虫の息な気がするが、もう少し耐えてくれ地竜。
実験3は結界魔法だ。
今俺が使っている結界魔法には平面バリアの四方結界と全方位バリアの八方結界の2種類がある。
新しい結界魔法は八方結界をいじって作ったものだ。
いじった内容は単純。
八方結界の起点である8つの頂点を自在に動かせるようにしただけだ。
これによって、結界の大きさや形を発動後に変更できるようになった。
これはもはや防御の魔法ではなく、攻撃の魔法だ。
魔法名は圧搾結界と命名。
使い方は名前の通りだ。
俺は地竜の周りを結界の起点とし、結界を張る。
あとは結界を収縮していくだけだ。
俺はギリギリと結界の起点を狭めていった。
やがて地竜と結界の壁面が接するが、俺は狭めるのをやめない。
『グゥ、グ、グルゥ……』
地竜は苦しそうに呻く。
八方結界の強度と地竜の光の防御の強度のせめぎ合いだ。
そして八方結界が勝つ。
光の防御が明滅しだした。
俺は結界を止める。
これ以上やったら地竜が潰れてしまうだろう。
結界を解除し、実験3を終了する。
圧搾結界も、地竜には非常に有効な攻撃であると分かった。
「もう地竜が可哀想になってきたんですが……」
「わかってる。俺もこれ以上いたぶるほど鬼畜じゃないさ。次で終わりにする」
地竜は俺達を睥睨するが、その瞳にはもはや威圧感は無い。
まるで臆病な草食動物のような目だ。
大森林の中層で出会ったときは、完全に俺のことを下に見ていたのにな。
俺は哀れみを感じながら実験4を開始する。
次に試すのも結界魔法。
圧搾結界と同じように八方結界をいじって作った魔法だ。
いじった条件は一つだけ。
結界内を真空にする、ただこれだけだ。
だけと言うほど簡単ではないが。
魔石消費量も跳ね上がった。
しかし、文字通りの必殺の魔法となった。
真空の空間内で生きていられる生き物は地球には数種類しか存在していなかった。
異世界のファンタジーな生き物にも効果があるのか気になるところ。
俺はぐったりとした地竜を必殺の結界に閉じ込めた。
『………………』
地竜はパクパクと口を開けて苦しむ。
空気が無いので鳴き声は出ないようだ。
いくら喉を振るわせようと、振動を伝える空気が無ければ音は伝わらない。
確か人間が真空内で生きていられる時間は、15秒程度らしい。
地竜を結界に閉じ込めてからそろそろ30秒になる。
さすがに人間と同じというわけにはいかないか。
地竜はもがき苦しみ、結界に何度も激突する。
しかし光の防御よりも結界のほうが強度が上ということがさっき判明している。
結界には傷ひとつ入らず、やがて地竜は動かなくなった。
時間は1分くらいか。
ドラゴンであろうと、真空の中では1分で死ぬ。
いいデータが取れた。
「ドン引きです」
「えぐい魔法ですな」
「あれってなんで死んだんです?」
「毒ですか?」
それから奴隷たちに毒ではないということを説明するのに10分くらいかかった。
地竜の死に方だけ見たらまるっきり毒で死んだような感じだからしょうがないか。
かくして、俺の必殺技が増えた。
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