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改稿版
19.時間遡及という魔法
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「これはひどい。すぐに宿に連れて行って治癒魔法士の手配を……」
「いや、必要ない。俺が治す」
そういえば、ロドリゲスには時間遡及を見せたことはまだなかったな。
ロドリゲスは様々な業務で俺が使う時空間魔法を目にする機会が多い。
最初は驚いていたが、時空間魔法を使える者が全くいないわけではないのですぐに受け入れた。
だが、時間遡及はどうかな。
この世界に来て時空間魔法のことを色々と調べたが、魔法にも難易度があるということが最初に分かったことだ。
時空間魔法は、時間と空間の魔法だ。
時間や空間のみの単体魔法と両方合わせた複合魔法がある。
当然複合魔法のほうが難易度は高くなる。
しかし単体魔法でも複合魔法と同じくらいの難易度を持つ魔法というのが存在している。
そのひとつが時間遡及だ。
魔法作成の既存魔法に記載された単体魔法の中では上の下くらいの難易度だと思うのだが、この世界には時空間属性の魔法でそれ以上の難易度の魔法を使える人間は今のところ俺だけのようだ。
なぜそんなことが分かるのかといえば、時間遡及の魔法がこの世界では伝説上の存在だからだ。
大昔にはいくつもの魔法具を所有して様々な魔法を開発した大賢者と呼ばれる人物がいて、その人物が時間遡及の魔法も開発した。
しかし大賢者の死後彼だか彼女だかの使っていた魔法具は行方不明にとなり、その高度な魔法もほとんどが失われた。
時間遡及はその大賢者の魔法の中でも、一番研究されている魔法なのだという。
なにせ肉体の年齢を巻き戻せるのだ。
永遠の命とまではいかないまでも、人間の寿命を逸脱できることは確かだ。
そんな魔法、権力者たちが欲しがるに決まっている。
この世界はまだまだ平均寿命は短めだからな。
特に権力者たちは暴飲暴食に重金属の使われた食器や化粧品をバンバン使う。
庶民のほうが健康的な生活をしているために寿命は長いくらいだ。
不摂生の限りを尽くしているくせに長生きがしたいとは我が侭極まりないが、それを実現できてしまうところが時間遡及の怖いところ。
この魔法は極秘にしなければならないな。
ロドリゲス以外には見せないようにしよう。
実際に魔法を受ける奴隷たちには目隠しでもしておくか。
怖がらせてしまうだろうが仕方が無い。
「すぐに宿に連れて行こう」
「かしこまりました」
奴隷は全部で43人。
奴隷商は金貨100枚で売ってくれた。
軽く赤字だと思うのだが、大丈夫なのだろうか。
人の良さそうな奴隷商の男が少し心配になる。
考えても仕方が無い。
奴隷商の様子はまた見にいけばいい。
まだこれから奴隷も増やしていくだろうしな。
今は奴隷の治療だ。
旅館の俺の部屋に集められた男女総勢43人の奴隷の状態は酷い。
小さな子供まで、目をくりぬかれたり全身に火傷があったりする。
見ていると胸がムカムカするので、子供から治していこう。
あらかじめ奴隷には全員に布で目隠しをしている。
ビクビクとほとんどの人が怯えているが、目隠しされるのは慣れているのか声は一切漏らさない。
ロドリゲスに子供を集めさせる。
奴隷たちは子供に酷いことをされるとでも思ったのか皆一様に悲痛な顔で耐えている。
怪我を治すだけなのにな。
「ひぅっ、た、助けて……」
子供たちは何かされると思ったのか、我慢できずにそんな声を漏らす。
やめてほしいな。
俺は声を潜めて子供の耳元で話しかける。
「静かにしろ」
「ひっ、し、静かにじまず。だがら、もう、いだいごとはじないでぐだざい」
しまったな、逆に怖がらせてしまったか。
子供にあまり大きな声を出すと怖がらせてしまうかもしれないと、耳元で小さな声でしゃべったのが裏目にでてしまった。
やっぱり子供はわからんな。
どう接していいのかさっぱりだ。
とにかく怪我を治してやれば誤解も解けるかな。
俺は時間遡及を使って子供の全身の火傷や鞭で打たれた傷を巻き戻していく。
相当長い時間こんな扱いを受けていたのか、戻しても戻しても傷が現れる。
全く胸糞が悪いな。
結局全身の傷がきれいさっぱり治ったのは、子供の全身を1年ほど巻き戻してからだった。
身長も少し縮んでしまったが、また頑張ってくれ。
「あれ?痛くない。からだがどこも痛くない!!」
よし、子供は元気なのが一番だな。
俺は子供たちを順番に治していった。
女の子を治療するときは結構気を使ったが、そんな余裕は途中で無くなった。
なにせ女の子の中には下半身にかなりの重症を負っている子などがいて、何をされたのかは想像がつく。
ロリコンを殺したくなった。
この世界では早ければ12歳くらいで結婚したりするから、100歩譲ってロリコンは許そう。
だが、小さな女の子を拷問して喜ぶような変態はダメだ。
見つけ次第殺すことにする。
俺も結構この世界に染まってしまったようだ。
殺し殺されは当たり前の日常のような世界だ。
だがそれでも、一定の倫理感を持っている人間はいる。
俺も日本での価値観を完全には手放さないように気をつけなくては。
あっという間に殺人鬼になってしまう。
「旦那様、ずいぶんと怖いお顔をされております」
「そうか。直す」
まあ手放しそうになったときには、ロドリゲスが戻してくれるだろう。
本当にいい部下を拾ったものだ。
捨てた奴の気がしれない。
「いや、必要ない。俺が治す」
そういえば、ロドリゲスには時間遡及を見せたことはまだなかったな。
ロドリゲスは様々な業務で俺が使う時空間魔法を目にする機会が多い。
最初は驚いていたが、時空間魔法を使える者が全くいないわけではないのですぐに受け入れた。
だが、時間遡及はどうかな。
この世界に来て時空間魔法のことを色々と調べたが、魔法にも難易度があるということが最初に分かったことだ。
時空間魔法は、時間と空間の魔法だ。
時間や空間のみの単体魔法と両方合わせた複合魔法がある。
当然複合魔法のほうが難易度は高くなる。
しかし単体魔法でも複合魔法と同じくらいの難易度を持つ魔法というのが存在している。
そのひとつが時間遡及だ。
魔法作成の既存魔法に記載された単体魔法の中では上の下くらいの難易度だと思うのだが、この世界には時空間属性の魔法でそれ以上の難易度の魔法を使える人間は今のところ俺だけのようだ。
なぜそんなことが分かるのかといえば、時間遡及の魔法がこの世界では伝説上の存在だからだ。
大昔にはいくつもの魔法具を所有して様々な魔法を開発した大賢者と呼ばれる人物がいて、その人物が時間遡及の魔法も開発した。
しかし大賢者の死後彼だか彼女だかの使っていた魔法具は行方不明にとなり、その高度な魔法もほとんどが失われた。
時間遡及はその大賢者の魔法の中でも、一番研究されている魔法なのだという。
なにせ肉体の年齢を巻き戻せるのだ。
永遠の命とまではいかないまでも、人間の寿命を逸脱できることは確かだ。
そんな魔法、権力者たちが欲しがるに決まっている。
この世界はまだまだ平均寿命は短めだからな。
特に権力者たちは暴飲暴食に重金属の使われた食器や化粧品をバンバン使う。
庶民のほうが健康的な生活をしているために寿命は長いくらいだ。
不摂生の限りを尽くしているくせに長生きがしたいとは我が侭極まりないが、それを実現できてしまうところが時間遡及の怖いところ。
この魔法は極秘にしなければならないな。
ロドリゲス以外には見せないようにしよう。
実際に魔法を受ける奴隷たちには目隠しでもしておくか。
怖がらせてしまうだろうが仕方が無い。
「すぐに宿に連れて行こう」
「かしこまりました」
奴隷は全部で43人。
奴隷商は金貨100枚で売ってくれた。
軽く赤字だと思うのだが、大丈夫なのだろうか。
人の良さそうな奴隷商の男が少し心配になる。
考えても仕方が無い。
奴隷商の様子はまた見にいけばいい。
まだこれから奴隷も増やしていくだろうしな。
今は奴隷の治療だ。
旅館の俺の部屋に集められた男女総勢43人の奴隷の状態は酷い。
小さな子供まで、目をくりぬかれたり全身に火傷があったりする。
見ていると胸がムカムカするので、子供から治していこう。
あらかじめ奴隷には全員に布で目隠しをしている。
ビクビクとほとんどの人が怯えているが、目隠しされるのは慣れているのか声は一切漏らさない。
ロドリゲスに子供を集めさせる。
奴隷たちは子供に酷いことをされるとでも思ったのか皆一様に悲痛な顔で耐えている。
怪我を治すだけなのにな。
「ひぅっ、た、助けて……」
子供たちは何かされると思ったのか、我慢できずにそんな声を漏らす。
やめてほしいな。
俺は声を潜めて子供の耳元で話しかける。
「静かにしろ」
「ひっ、し、静かにじまず。だがら、もう、いだいごとはじないでぐだざい」
しまったな、逆に怖がらせてしまったか。
子供にあまり大きな声を出すと怖がらせてしまうかもしれないと、耳元で小さな声でしゃべったのが裏目にでてしまった。
やっぱり子供はわからんな。
どう接していいのかさっぱりだ。
とにかく怪我を治してやれば誤解も解けるかな。
俺は時間遡及を使って子供の全身の火傷や鞭で打たれた傷を巻き戻していく。
相当長い時間こんな扱いを受けていたのか、戻しても戻しても傷が現れる。
全く胸糞が悪いな。
結局全身の傷がきれいさっぱり治ったのは、子供の全身を1年ほど巻き戻してからだった。
身長も少し縮んでしまったが、また頑張ってくれ。
「あれ?痛くない。からだがどこも痛くない!!」
よし、子供は元気なのが一番だな。
俺は子供たちを順番に治していった。
女の子を治療するときは結構気を使ったが、そんな余裕は途中で無くなった。
なにせ女の子の中には下半身にかなりの重症を負っている子などがいて、何をされたのかは想像がつく。
ロリコンを殺したくなった。
この世界では早ければ12歳くらいで結婚したりするから、100歩譲ってロリコンは許そう。
だが、小さな女の子を拷問して喜ぶような変態はダメだ。
見つけ次第殺すことにする。
俺も結構この世界に染まってしまったようだ。
殺し殺されは当たり前の日常のような世界だ。
だがそれでも、一定の倫理感を持っている人間はいる。
俺も日本での価値観を完全には手放さないように気をつけなくては。
あっという間に殺人鬼になってしまう。
「旦那様、ずいぶんと怖いお顔をされております」
「そうか。直す」
まあ手放しそうになったときには、ロドリゲスが戻してくれるだろう。
本当にいい部下を拾ったものだ。
捨てた奴の気がしれない。
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