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改稿版

12.ある冒険者の災難

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 冒険者なんて、もう辞めようと思っていた。
 俺ももう歳だ。
 若い頃からずっとパーティを組んでいたやつらはみんな結婚して冒険者を引退したし、今更自分より若い他の冒険者と組む気にもなれない。
 子供の頃から1日たりとも休むことなく振り続けた剣はそんじょそこらのやつらには負ける気はしないが、身体がもうついてこない。
 あちこち痛むし、息も切れる。
 ここいらが潮時だと思った。
 森で今まで聞いたこともないような轟音を聞いたのは、最後の仕事と決めたシャドウヴァイパー狩りの最中のことだ。
 突然の轟音の数瞬後、何もかもが吹っ飛んで上も下も分からなくなった。
 とんでもない痛みが身体を襲った。
 あっという間に気を失ったぜ。
 もう死んだとも思ったが、目が覚めたら身体はなんともなかった。
 服や防具はボロボロだったから、怪我はしたのかもしれない。
 だが不思議なことに身体には傷一つねえ。
 俺の目の前では20そこそこの若い男が心配そうに俺を見ていた。
 こいつが助けてくれたのか?
 凄腕の治癒魔法使いかもしれねえ。
 どことなく育ちの良さそうな顔をしている気がする。
 魔法具を持っているとしたらそれはどこぞの良家の出身か、遺跡なんかで偶然見つけた幸運者しかいねえ。
 どっちにしろ俺なんかとは一生関わりの無いような人種だ。
 それがなんで俺を助けたのか。
 話を聞いたらあの轟音はその坊ちゃんが地竜を倒したときの音だという。
 おいおい、どんな攻撃をしたらあんな音がするんだよ。
 この坊ちゃんは人の良さそうな顔してとんだ化け物だってのか?
 倒した地竜を見せてもらったが、悲壮な死に顔してやがった。
 俺が吹き飛ばされた衝撃も、地竜を地面に叩きつけたときのものらしい。
 それで詫びに怪我を治してくれたのかよ。
 それでも足りなきゃ地竜の素材をタダで好きなだけ持っていっていいと言ってきやがった。
 なんとなくプライドが傷つくが、プライドで飯は食えねえ。
 鱗と牙を少し貰った。
 これを売るだけで残りの人生遊んで暮らせるだろうな。
 でもなぜだか売る気がしねえ。
 この坊ちゃんに触発されたわけじゃねえが、俺は冒険者としてまだ終わりたくねえ。
 もうこの先どれだけ身体が動いてくれるかわからねえ。
 だが、やれるだけやってみようと思う。
 心なしか身体が軽いような気がしやがる。
 年甲斐もなく胸が熱いぜ。
 まるで若返った気分だ。
 ちょうど防具も壊れちまったし、地竜の素材で新調するか。
 牙は剣にしよう。
 竜の素材を使った武器と防具なんて、昔憧れていた冒険者みたいじゃねえか。
 俺も若い奴から憧れられる冒険者ってやつに、なってみてえな。



 
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