上 下
6 / 13

6.父の種

しおりを挟む
「先日、シャーロット様にお子様がいるという情報を小耳に挟みました。調べさせたら本当でした」

「なんだと?」

 シャーロット様は亡くなった私の母の後に父の正室となった女性です。
 後妻ということで少し家格が低めの男爵家から嫁いでいらっしゃった方ですが、いつまで経っても子供が出来なかったために父が怒って一方的に実家に追い返してしまった過去があります。
 シャーロット様は父に捨てられて貴族の令嬢としては傷が付いてしまった状態ですのでご実家でも冷遇されたようですが、塞ぎこんでいたところを商家の若旦那と出会って恋に落ち、バツイチでも気にしなかったその方とご結婚なされたのです。
 その後子供をご懐妊なされました。
 
「たまたま兄上とは出来ず、その男とは出来ただけではないのか?」

「お2人に子供が出来たのは結婚してすぐのことだそうです。シャーロット様はそこまで子供の出来難い体質ではなかったのではないでしょうか」

「では……」

「子供が出来なかったのはお父様が原因の可能性があります。確か私が生まれた次の年、流行り病で高熱を出されたと聞きましたが」

「そんな、まさか……」

 父はその流行り病で高熱を出した時に、種なしになっていたのかもしれません。
 そうなるとアレックスが父の子供である可能性はさらに下がります。
 アレックスが誰の子供であるかなどは確かめようがありませんが、これだけの状況証拠がそろっていれば叔父は懐疑的にならざるを得ません。
 
「そ、そんなの嘘よ!!アレックスはレオナルド様の息子です!!」

「そうだそうだ!!なんなんだよさっきからよ。エレオノーラ、お前調子に乗りすぎじゃないのか?」

「私はただ調査で判明した事実を申し上げているだけです」

 今更喚き散らしたところで覆りませんよ。
 叔父はただでさえ平民の血が入ったアレックスを次の当主に据えることに抵抗を覚えていたのです。
 それが残り半分の貴族の血も怪しいとなってはもはや女でも両親ともに貴族である私のほうが当主としてマシという考えに至るのは必然です。

「アレックス、貴様のような薄汚い平民かもしれん男を次の当主にすることはできん。よって次の当主はエレオノーラとする。もう異議はないな?」

「ありません」

 他の分家当主からも異議なしの声が上がります。

「あります異議!!アレックスが当主になれないなんておかしいわ!!」

「そうだそうだ!!異議ありまくりだ!!俺が当主だろうが!!さっきまでそうだったろうが!!!」

 アリーシャとアレックスの主張は叔父様に鼻で一笑されて流されました。
 そうして私が、次の当主となったのです。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私には何もありませんよ? 影の薄い末っ子王女は王の遺言書に名前が無い。何もかも失った私は―――

西東友一
恋愛
「遺言書を読み上げます」  宰相リチャードがラファエル王の遺言書を手に持つと、12人の兄姉がピリついた。  遺言書の内容を聞くと、  ある兄姉は周りに優越を見せつけるように大声で喜んだり、鼻で笑ったり・・・  ある兄姉ははしたなく爪を噛んだり、ハンカチを噛んだり・・・・・・ ―――でも、みなさん・・・・・・いいじゃないですか。お父様から贈り物があって。  私には何もありませんよ?

どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜

水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」  わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。  ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。  なんということでしょう。  このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。  せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。 ◇8000字程度の短編です ◇小説家になろうでも公開予定です

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

死んだ妹そっくりの平民の所為で婚約破棄と勘当を言い渡されたけど片腹痛いわ!

サイコちゃん
恋愛
突然、死んだ妹マリアにそっくりな少女が男爵家を訪れた。男爵夫妻も、姉アメリアの婚約者ロイドも、その少女に惑わされる。しかしアメリアだけが、詐欺師だと見抜いていた。やがて詐欺師はアメリアを陥れ、婚約破棄と勘当へ導く。これでアメリアは後ろ盾もなく平民へ落ちるはずだった。しかし彼女は圧倒的な切り札を持っていたのだ――

【9話完結】お茶会? 茶番の間違いでしょ?『毒を入れるのはやり過ぎです。婚約破棄を言い出す度胸もないなら私から申し上げますね』

西東友一
恋愛
「お姉様もいずれ王妃になるなら、お茶のマナーは大丈夫ですか?」 「ええ、もちろんよ」 「でも、心配ですよね、カイザー王子?」 「ああ」 「じゃあ、お茶会をしましょう。私がお茶を入れますから」  お茶会?  茶番の間違いでしょ?  私は妹と私の婚約者のカイザー第一王子が浮気しているのを知っている。  そして、二人が私を殺そうとしていることも―――

婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました

奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」  妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。 「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」 「ど、どうも……」  ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。 「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」 「分かりましたわ」  こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

処理中です...