上 下
82 / 96

81.生産活動

しおりを挟む
 白い炎に焼かれた岩ドラゴンは骨すら残らず灰になってしまった。
 灰の中を探しても魔石すらも見つからない。
 残ったのは岩ドラゴンが悪態をついたときにペッと吐き出した折れた牙が数本くらいだ。
 狐の記憶の中の陰陽師はもう少し燃やしたいものだけを燃やすことができていたような気がするのだが、私にはまだそこまでのコントロールはできないようだ。
 ドラゴンを殺すことのできる強力な切り札を手に入れることはできたが、使いどころには気を付けたほうがいいのかもしれない。
 貴重なドラゴンの素材が骨すら残らず灰になってしまったのはもったいなさすぎる。
 ドラゴン素材で装備を作ったら強力な武器や防具が作れただろう。
 どうせ再生するのだから爪とか牙とか鱗とかを生きているうちに剥ぎ取っておけばよかったか。
 嫌な奴だったけどさすがにそれは可哀そうか。
 強敵との戦いで私自身は成長することができたという実感はあるが、物理的に得たものは少ない。
 不毛な戦いだったな。
 変身を解いて幼女の姿に戻ると、とんでもなくお腹が空いていることに気が付く。
 魔力は霊力と違って身体の内側から放出される力だ。
 それを生成しているのは肉体や魂と呼ばれるものなのだろう。
 当然使えば使うほど体力や精神力を消耗する。
 そしておそらくカロリーも。
 私は狐から強い魔力を受け継いだが、こんなに一度に大量の魔力を使ったのは初めてだった。
 お腹の虫がとにかく何かを胃袋にぶち込めとうるさく鳴いている。
 普段は全く苦にならない調理工程すらも今は億劫だ。
 大量に作り置いた料理でも食べるとしよう。





 魔王城のダイニングテーブルの上にはおにぎりやサンドイッチなどの主食、揚げ物や煮物などのおかず類が所狭しと並んでいた。
 それらを片っ端から食べていく。
 私は身体の大きさのわりには食べる方だけど、こんなに食欲が溢れて止まらないことは初めてだ。
 お肉を選んでチマチマ食べていたユキトも軽く驚いていた。
 ユキトは岩ドラゴンに自分の攻撃が全く通用しなかったことで少し落ち込んでいるようだ。
 今回の戦いでドラゴンを相手にするなら物理攻撃だけでは厳しいことがわかってしまった私は慰める言葉が出てこなかった。
 もともとユキトは最近伸び悩んでいた。
 最強を目指す兎であるユキトは今まで強大な敵に立ち向かって、それを乗り越えてきた少年漫画の主人公のような兎だ。
 今回もきっと乗り越えてくれると信じている。
 とりあえず一緒に気功術の修業でもしてみよう。





 たらふく食べて二度寝を決め込んだら夕方だった。
 もう眠れる気がしないので朝まで生産活動をすることにする。
 岩ドラゴンの話では近所に村もあるようなので、ここから先は人間の生存圏を旅することになるだろう。
 今まで着ていたようなアイドルのステージ衣装みたいなワンピース鎧は少し恥ずかしい。
 それに私は今年で13歳になるのだが、未だに姿は10歳くらいのままだ。
 狐の力を受け継ぐまでは微々たる成長くらいはしていたような気がしたのだが、今は全く成長の兆しが見えない。
 このまま成長しないことを想定するならば、姿は少し変えていったほうがいいだろう。
 普通に考えて10歳女児が一人で旅をしていたらおかしいからな。
 年齢は15歳くらいに見えるように変化しておくのがいいだろう。
 変化を維持するために尻尾は出しておく必要があるが、獣人でも尻尾が2本や3本ある奴は見たことがないので1本だけにしておこう。
 獣人だったら能力も高いし、15歳の少女が一人で旅をしていてもそんなに変なことではないだろう。
 鎧は兵士たちが着ていた皮鎧を参考にして、変化した姿に合わせて地味なのを作ろう。
 素材は巨人の皮を使うので性能だけは高いものができるだろう。
 武器はガチャで出た槍とサーバル、それから人里では使うかどうかはわからないが銃だ。
 このへんはマジックバッグに入っているから今までどおりでいいだろう。
 マジックバッグは持っていることを隠したほうがいいと思うので、サーベルは腰にぶら下げて槍は手に持っておくほうがいいかもしれない。
 そうなると長槍は邪魔なので短槍にするか。
 武器以外手ぶらというのもおかしいのでリュックもいるな。
 人里の旅は面倒なことが多いな。
 とりあえず作るものは皮鎧とリュックの2つか。
 あとは空から落とせる重量物とか、巨人の姿に変身したときに使える武器もあるといいな。
 岩ドラゴンはかなり頑丈でゾンビみたいにしぶとかったが、さすがに首を切り落とせば死んだだろう。
 少なくとも巨人の力で思いきり振ることのできる武器があればドラゴンは物理攻撃のみで倒せるのかという実験ができたはずだ。
 まあこれはすぐには無理だな。
 錬金術を使えば金属の加工は可能だが、変成陣という魔法陣の上に乗る大きさのものしか加工することができない。
 巨大なものを作るためにはまず巨大な変成陣を書かなければならないのだ。
 そちらは落ち着いてしばらく魔王城を設置したままにするようなことがあったら作ることとして、今はとりあえず皮鎧とリュック、隕石爆撃用の鉄塊の3つのみを作ることにしよう。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

離婚届は寝室に置いておきました。暴かれる夫の執着愛

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:539pt お気に入り:1,222

【完結】あなただけが特別ではない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:695pt お気に入り:4,392

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,216

魅了が解けた世界では

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:326pt お気に入り:9,770

あなたの幸せを願うから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,016

金になるなら何でも売ってやるー元公爵令嬢、娼婦になって復讐しますー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:597pt お気に入り:123

処理中です...