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77.生贄
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ピーピーという魔王城の管理端末が発する警戒音に気付いて久しぶりのぐっすり快眠からたたき起こされる。
最悪の気分だ。
かつてないほど最高に気持ちよく寝ていたので余計に腹が立つ。
しかしこの端末が警戒音を発しているということは結界に攻撃が加えられたということであり、緊急事態ということだ。
今寝たらかつてないほど最高に気持ちが良い二度寝になるかもしれないが、人生最後の睡眠になる可能性もあるのでやめておく。
管理端末の画面には結界が受けたダメージが表示されるようになっている。
そこにはダメージ12と表示されていた。
数字的には小さなダメージだが、人間の兵士たちの槍の攻撃がゼロダメージだったことを考えると楽観的に捉えることはできない。
というかかなりヤバい奴かもしれない。
鬼人族である怪力のゲイルのノックが1ダメージ、ショットガンの銃撃が7か8ダメージくらい、そして巨人のジャイアントスイングが1200ダメージくらいであることを考えると、今回の攻撃はショットガン以上巨人以下の攻撃ということになる。
相手が魔物であった場合想定される相手は通常攻撃がショットガン以上の威力を持つ奴だ。
確実にオークよりは強い奴だな。
私は素早く装備を整えると玄関を開けた。
外は薄っすらと明るくなってきているが、まだ夜明け前だ。
こんな朝早くから押しかけてくるとは、ずいぶんと早起きな奴だ。
玄関を出て母屋の周りをぐるりと歩きまわり、結界に攻撃した奴を探す。
攻撃を受けたのはどうやら裏手の畑の向こう側のようで、そのあたりに何か巨大な生き物が鎮座していた。
近づくとそれがトカゲのような姿をしていることに気が付く。
トカゲには色々とトラウマがあるのだが、気配の大きさから絶望的な敵ではないということに気が付く。
見ただけで存在の強さがわかるわけではないので絶対ではないが、少なくとも森で見かけた化け物のような恐ろしく強大な気配ではない。
近づいていくとその姿がはっきりと見えてくる。
オールドサラマンダーの炎球のイグニスよりも一回りくらい大きい体躯、砂色の鱗にはゴツゴツとした突起が生えている。
更に背中にトゲのようなものをたくさん背負っており、まるで恐竜のようだ。
感じ取れる魔力や生命力は炎球のイグニスや大転のユミルよりも大きく、あの2体よりも格上の存在であることが読み取れる。
結界のすぐそばまで近づくと、巨大な顔がこちらを向く。
牙を剥きだしにして威嚇しているのだろう。
『貴様人間の小娘、この結界を解け。それではお主を食えぬだろうが』
「は?」
急に頭の中に声が響いて私はマヌケに聞き返す。
『だから結界を解けと言っている。貴様が此度の贄であろう。柔らかくて美味そうな小娘だ。早くその忌々しい結界を解いて出てこぬか』
「は?」
もしかして目の前のこのトカゲがしゃべっているのだろうか。
ひろしの世界の二次元作品では動物や魔物がしゃべったりするのはよくあることだが、この世界でもそうなのだろうか。
私は孤児なのであまりこの世界の常識には詳しくない。
ひろしの世界の二次元作品に出てくるしゃべる魔物は相当高位な魔物で知性も高く理性的だったりするのだが、こいつは先ほどから贄がどうのと人のことを食べ物を見るような目で見てくる。
どう見ても野蛮な魔物だ。
『我に食われるためにこの生贄の台地までやってきたのであろう?出てこぬなら村の人間どもを皆殺しにして全員食らってやってもいいのだぞ?』
しゃべるし知性は多少あるみたいだが、理性的ではなさそうだな。
結構クズっぽいし。
おそらくこの近くには人間の村があって、定期的に生贄とかを捧げさせてる奴なのだろう。
何か生贄の代わりにお願いしている役割とかがあったらこいつを討伐したら村人たちが困るのだろうか。
「あの、私が生贄になる代わりに村に何をしてくれるのでしょうか……」
『我がか?何もするわけなかろうが。定期的に生贄を差し出すから皆殺しにするのはやめてくれと頼んできたのはお前たちのほうだ』
よし、ヤッてよしということだな。
「ユキト」
「…………!!」
白い閃光と化したユキトの蹴りが岩トカゲのアゴにヒットする。
『いでぇぇぇ!!なんだ貴様この兎がっ!!』
一撃で首を圧し折るつもりで叩き込まれたユキトの一撃は、岩トカゲを少しのけ反らせる程度で終わってしまった。
見た目どおりかなり硬いようだ。
私はマジックバッグから金棒を取り出し、魔力で強化して思いきり叩きつけた。
ユキトよりも遅い私の攻撃も当たった。
スピードはそれほどではないのかもしれない。
しかし手ごたえはない。
ビリビリと手がしびれるような衝撃。
まるで岩を殴ったような感覚だ。
岩トカゲはまた少しのけ反り、牙を剥きだしにして怒りをあらわにする。
『小娘がぁぁぁ!!貴様絶対に許さんぞ!!貴様を食らったあと村人全員食ってやるからな!!!』
参ったな、攻撃手段が思い浮かばない。
相手は鈍重で、攻撃も当たる。
だが、その強靭な鱗を突き抜けてダメージを与える手段が私には無かった。
また目玉に向けて対物ライフルでもぶっ放すしかないのだろうか。
最悪の気分だ。
かつてないほど最高に気持ちよく寝ていたので余計に腹が立つ。
しかしこの端末が警戒音を発しているということは結界に攻撃が加えられたということであり、緊急事態ということだ。
今寝たらかつてないほど最高に気持ちが良い二度寝になるかもしれないが、人生最後の睡眠になる可能性もあるのでやめておく。
管理端末の画面には結界が受けたダメージが表示されるようになっている。
そこにはダメージ12と表示されていた。
数字的には小さなダメージだが、人間の兵士たちの槍の攻撃がゼロダメージだったことを考えると楽観的に捉えることはできない。
というかかなりヤバい奴かもしれない。
鬼人族である怪力のゲイルのノックが1ダメージ、ショットガンの銃撃が7か8ダメージくらい、そして巨人のジャイアントスイングが1200ダメージくらいであることを考えると、今回の攻撃はショットガン以上巨人以下の攻撃ということになる。
相手が魔物であった場合想定される相手は通常攻撃がショットガン以上の威力を持つ奴だ。
確実にオークよりは強い奴だな。
私は素早く装備を整えると玄関を開けた。
外は薄っすらと明るくなってきているが、まだ夜明け前だ。
こんな朝早くから押しかけてくるとは、ずいぶんと早起きな奴だ。
玄関を出て母屋の周りをぐるりと歩きまわり、結界に攻撃した奴を探す。
攻撃を受けたのはどうやら裏手の畑の向こう側のようで、そのあたりに何か巨大な生き物が鎮座していた。
近づくとそれがトカゲのような姿をしていることに気が付く。
トカゲには色々とトラウマがあるのだが、気配の大きさから絶望的な敵ではないということに気が付く。
見ただけで存在の強さがわかるわけではないので絶対ではないが、少なくとも森で見かけた化け物のような恐ろしく強大な気配ではない。
近づいていくとその姿がはっきりと見えてくる。
オールドサラマンダーの炎球のイグニスよりも一回りくらい大きい体躯、砂色の鱗にはゴツゴツとした突起が生えている。
更に背中にトゲのようなものをたくさん背負っており、まるで恐竜のようだ。
感じ取れる魔力や生命力は炎球のイグニスや大転のユミルよりも大きく、あの2体よりも格上の存在であることが読み取れる。
結界のすぐそばまで近づくと、巨大な顔がこちらを向く。
牙を剥きだしにして威嚇しているのだろう。
『貴様人間の小娘、この結界を解け。それではお主を食えぬだろうが』
「は?」
急に頭の中に声が響いて私はマヌケに聞き返す。
『だから結界を解けと言っている。貴様が此度の贄であろう。柔らかくて美味そうな小娘だ。早くその忌々しい結界を解いて出てこぬか』
「は?」
もしかして目の前のこのトカゲがしゃべっているのだろうか。
ひろしの世界の二次元作品では動物や魔物がしゃべったりするのはよくあることだが、この世界でもそうなのだろうか。
私は孤児なのであまりこの世界の常識には詳しくない。
ひろしの世界の二次元作品に出てくるしゃべる魔物は相当高位な魔物で知性も高く理性的だったりするのだが、こいつは先ほどから贄がどうのと人のことを食べ物を見るような目で見てくる。
どう見ても野蛮な魔物だ。
『我に食われるためにこの生贄の台地までやってきたのであろう?出てこぬなら村の人間どもを皆殺しにして全員食らってやってもいいのだぞ?』
しゃべるし知性は多少あるみたいだが、理性的ではなさそうだな。
結構クズっぽいし。
おそらくこの近くには人間の村があって、定期的に生贄とかを捧げさせてる奴なのだろう。
何か生贄の代わりにお願いしている役割とかがあったらこいつを討伐したら村人たちが困るのだろうか。
「あの、私が生贄になる代わりに村に何をしてくれるのでしょうか……」
『我がか?何もするわけなかろうが。定期的に生贄を差し出すから皆殺しにするのはやめてくれと頼んできたのはお前たちのほうだ』
よし、ヤッてよしということだな。
「ユキト」
「…………!!」
白い閃光と化したユキトの蹴りが岩トカゲのアゴにヒットする。
『いでぇぇぇ!!なんだ貴様この兎がっ!!』
一撃で首を圧し折るつもりで叩き込まれたユキトの一撃は、岩トカゲを少しのけ反らせる程度で終わってしまった。
見た目どおりかなり硬いようだ。
私はマジックバッグから金棒を取り出し、魔力で強化して思いきり叩きつけた。
ユキトよりも遅い私の攻撃も当たった。
スピードはそれほどではないのかもしれない。
しかし手ごたえはない。
ビリビリと手がしびれるような衝撃。
まるで岩を殴ったような感覚だ。
岩トカゲはまた少しのけ反り、牙を剥きだしにして怒りをあらわにする。
『小娘がぁぁぁ!!貴様絶対に許さんぞ!!貴様を食らったあと村人全員食ってやるからな!!!』
参ったな、攻撃手段が思い浮かばない。
相手は鈍重で、攻撃も当たる。
だが、その強靭な鱗を突き抜けてダメージを与える手段が私には無かった。
また目玉に向けて対物ライフルでもぶっ放すしかないのだろうか。
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