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43.私の選択と招待石

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 エルフとおカマが来てから今日で1週間、長いようで短い賑やかな時間もそろそろ終わりを迎えようとしていた。

「明日、ゴブリンキングを討伐するわ」

「そしたら私たち、街に戻るわ。今度はしっかりと責任を持って聞くけど、一緒に来ない?アリアちゃんとならきっと孤児と保護者としてではなく、一人の冒険者として仲間になれると思うわ。実力も数年もすれば抜かれてしまうかもしれないし、私たちにとっても利益のある話だと思うから」

「ありがとう。誘ってくれたのはうれしいけれど、私はもう少しここで暮らしていたい。自分の可能性をもっと探していきたい。そのために今は一人で頑張りたいと思う。ゲイルやエリシアと一緒にいるのはとても楽しいし、一緒に冒険できたらきっと最高だと思う。でもきっと私は2人に頼りきってしまうから」

「はは、そう言うと思っていたわ」

「寂しくなるわねぇ」

 2人の寂しそうな顔に胸が締め付けられる。
 1週間という短い時間だったけれど、私は未だかつてないほどにこの2人のことが好きになっていた。
 今まで孤児として割とギリギリの人生を送ってきて、誰かと親しくなるような余裕はなかったように思える。
 軽く人というものに絶望していたし、あまり近づきたくないとすら思っていた。
 だけどこの2人の人柄に触れて、どんどん惹かれていった。
 明るくて面白く、おカマのくせにどこか男らしさを感じさせるゲイル。
 すごいクールそうな美人なのに涙もろくて情に厚いエリシア。
 本当は一緒に行きたいけれど、私ではまだまだ2人と肩を並べられないのは明白だ。
 そりゃあ私だって毎日気功術や武術のトレーニングは欠かしていないから、きっとあと何年かしたらそこそこ戦えるようになるだろう。
 銃だってあるし、そこらの魔物には負けないくらい強くなれると思う。
 だけどそれが何年後のことなのかはわからない。
 鬼人族もエルフ族も長命種だから、この2人は数年なんてすぐだと思っているのだろう。
 しかし私にはすぐだとは思えない。
 この1年、私はこの山奥で一人自分を磨いてきた。
 ガチャから魔王城が出てなかったら死んでいただろう。
 衣服が無かったから裁縫を覚えたし、強くなりたかったから筋トレや気功術の訓練を頑張った。
 自分を高め続けるというのは意外と難しいことなのだ。
 きっとこの強い2人と一緒にいたら私は怠けてしまう。
 だから2人とは行けない。
 だけど友達になることはできる。
 手始めにまず、魔王城に招待してみるとしよう。
 私は管理端末で2人の顔写真をパシャリと撮り、MPを5消費して招待石というアイテムを生み出した。
 魔王城のセキュリティ的にあと数日で街に戻るという2人にユキトのような結界を何度でも素通りできるパスを発行することはできない。
 だからこの招待石というゲスト専用のアイテムを発行した。
 これは72時間で消えてしまうアイテムで、これを持っている間だけ魔王城の結界を通過することができるというものだ。
 
「これは何?」

「この家の鍵みたいなもの。これがあればこの家の結界を通過することができる。3日で勝手に消えちゃうから返さなくてもいいよ」

「私たちもお家に入れてくれるってこと?いいの?」

「いいよ。私は2人とは一緒に行かない選択をしたけれど、友達であることには変わりないから」

「「アリアちゃん!」」

 涙を流して抱き着いてくるおカマとエルフ。
 普段ならばおカマだけ押しのけてエルフの抱擁を楽しむところだが、今日はなんとなく3人で抱き合いたい気分だった。
 私はおカマのゴツコツした身体とエルフのほっそりとした身体に手を回して思いきり抱き締めた。
 1日森の中を歩き回ってその後私に稽古をつけてくれた2人の身体は当然汗臭いけれど、なんだかそれが自分以外の人間が確かにここに存在しているんだという証拠のような気がして私はずっと匂いを嗅いでいた。
 もちろんエルフの匂いを中心的に。
 エルフの真っ白な鎖骨と首筋のあたりに顔を擦りつけるようにしてフガフガする。

「ちょ、ちょっとアリアちゃん?嗅ぎすぎじゃない?」

「うーん、エルフ臭最高」

「やめてよ恥ずかしい!」

「アリアちゃん鬼人臭は!?鬼人臭はどうなの!?」

「鬼人臭はちょっとおっさん臭だから遠慮しておく」

「んもうっ、失礼しちゃうわ!乙女に向かっておっさんなんて!!」

 見た目はおっさん頭脳は乙女なおカマはプリプリ怒った。
 しかしそれもなんだかおかしくて3人で笑う。
 楽しい時間がもう終わってしまうということに少し寂しさを感じるけれど、それが私の選択だ。
 今日と明日は精一杯楽しく過ごして、笑顔で別れたい。
 あとエルフと一緒にお風呂に入りたいとずっと思っていたのでそれを実行する。
 この日のためにバスルームを大人が5人くらい入れるような小さめの共同浴場レベルにまでグレードアップさせておいたのだ。

「え、お風呂あるの?やった!一緒に入りましょ!」

「あら、いいわねぇ。アタシはさすがに一緒に入るのは遠慮しておくけど、嬉しいわ」

 お風呂があると言うとエリシアは飛び跳ねて喜び、ゲイルは謎の気遣いを見せた。
 おカマの股間の一物にも多少興味があったので残念だが、まあ仕方がない。
 心は乙女でも身体は男の中の男なのだ、幼女と美人エルフと一緒にお風呂というのはさすがにまずいと思ったのだろう。
 1人では可哀そうなのでお風呂大好きユキト君をお供につけてあげよう。

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