1 / 3
1.ゴーレム作りしか能の無い令嬢
しおりを挟む
「重量を20%軽減することができたけど、強度は25%減か。この配合は違うな……」
ずらりと並んだゴーレムを前に、私は独り言をぶつぶつとつぶやきながら記録を付けていく。
この地味な作業が高性能なゴーレムに繋がるということに気が付いていない研究者は多い。
私も地味な作業は正直嫌いだけれど、それが大好きなゴーレムに関することならば我慢はできる。
「はぁ、でもそれも限界があるよ」
あんなに大好きでずっと弄っていられたゴーレムが、最近は見たくもないと思うことも多くなってきた。
理由はわかっている。
自分が望む方向性の研究ではないせいだ。
私はゴーレムの重量軽減の研究になんて大して興味がない。
だけど以前国軍から発注された高性能ゴーレム1万機の代金を支払ったらもう軍の予算はすっからかんになるというので、仕方なく魔導ジェネレーターも装備も装甲も全部ダウングレードした廉価版ゴーレムを研究しているのだ。
わざわざ性能を低くしてできる限り安くゴーレムを作る研究なんて全く私の好みじゃない。
「空、飛ばせたいなぁ。ねえペリー、あなたみたいに飛べるゴーレムがやっぱり最高よね」
私は右肩にとまっている薄ピンク色をした海鳥型ゴーレム、ペリーに話しかける。
ペリーは私が物心ついた時からずっと資源を投入し続けて鬼のようにアップグレードしてきたゴーレムだ。
他のゴーレムとは物が違う。
私に話しかけられたペリーはまるで本物の鳥のように首を傾げてクェェと鳴いた。
そしてバサリと翼を広げるとまるで重さに囚われていないかのように宙に浮かび上がると、翼を羽ばたかせて研究室の中を優雅に一周して私の肩に戻ってきた。
やっぱり空を飛ぶゴーレムはいい。
できることなら軍から依頼されたゴーレムすべてに空を飛べる機構を取り付けてやりたいところだ。
しかし空を飛ばせることでエネルギーコストは10倍以上になる。
今よりダウングレードしろと言われているのに勝手にそんなことをすることはできない。
「お嫁に行くってもっと楽しいものだと思ってたよ」
私がこのお屋敷の研究室で軍用ゴーレムの研究をしているのは、軍閥貴族のマイルズ子爵家の嫡男アレックス様に嫁入りしたからだ。
田舎の貧乏男爵家の娘である私が格上でしかも役職持ちの子爵家に嫁ぐことができたのはゴーレム作りの才能のおかげだと思っている。
というかそうとしか思えない。
なぜなら私の容姿は一言で言えばちんちくりん、背が低いのは令嬢としてプラスかもしれないけど他の成長すべき場所もすべて幼い。
胸は平たんでお尻も貧相、それでいて腰はそれほど細くない。
寸胴体形、土偶、合法ロリ、王都の貴族院に通っていた頃には様々な陰口を叩かれた。
令嬢らしく優雅なダンスでもできればまた違ったのだろうが、運動神経が最悪な私のダンスは酷いもので、パーティに出ても誰にも踊りに誘われることはなかった。
そんな私に、突如として縁談が降って湧いたのは貴族院卒業間際だった。
どこから聞きつけたのかマイルズ子爵家の現当主であるブライアン様は私のゴーレム作りの腕に期待しているとおっしゃって息子のアレックス様の嫁にと縁談を申し込んでくださったのだ。
アレックス様は私の容姿を見てあからさまにがっかりした様子だったけれど、貴族の縁談は好き嫌いで結ぶものではないので仕方がない。
そんなわけで私はマイルズ子爵家の嫁になり、日々軍用ゴーレムの研究をしているわけだ。
子爵家での生活は居心地が悪いというのが正直なところ。
大きく分けて問題が3つある。
1つ目は好きなゴーレム研究ができないこと。
これは仕方ないからいい。
いつか余裕ができて自分の好きな研究もできるようになるだろう。
2つ目は屋敷の使用人との関係が微妙なこと。
あまり歓迎されていないなと感じることが多々ある。
私が普通の貴族の妻っぽくないことも原因なのかもしれない。
私は見た目もこんなんだし1日中ゴーレムの研究をしているから、たまに馬鹿にされているような気がすることがある。
そのくせ当主であるブライアン様には気に入られているから妬みなんかもあるのかも。
でも軽く見られる原因は私にもあるだろうからこれも仕方ないのかなぁ。
3つ目、これが一番重要。
アレックス様が一度も私を寝所に呼ばない。
貴族の妻の役目というのは色々あるし家によっては私のように多少特殊な役目を期待されることもある。
しかしどこの家でも変わらない一番重要な役目は世継ぎを生むことだろう。
これができないとせっかく第一婦人として嫁入りしたのに側室にランクダウンされてしったり酷い時には実家に送り返されてしまうようなこともありえると聞く。
子供ができにくい体質の人もいるというのに、酷い話だ。
しかし現実問題世継ぎ問題というのは貴族にとってそんな綺麗ごとを言っていられないくらい重要な問題であることは確かだ。
私も男児の一人も産めば使用人たちの当たりも優しくなるかもしれないので早いところ身籠りたいところ。
アレックス様にとってもそれは重要な役目なはずなのに、なぜ結婚して半年も経った今でも寝所に呼ばないのか。
私だって進んで苦手なアレックス様とそういうことをしたいわけではないのだけど、どうせいつかやらなければならないなら早くしてほしいものだ。
どうせアレックス様はどこぞの女とやりまくりなんだろうけど、貴族がそんなにあちこちに種を蒔きまくって後で困っても私は知らない。
というかもう世継ぎは他からもらうから私は子作り免除とかにしてくれないかな。
「はぁ、考え事してたらお腹空いた」
どうせ私のご飯は用意されてないんだろうけどね。
使用人との関係もどうにかしないとな。
ずらりと並んだゴーレムを前に、私は独り言をぶつぶつとつぶやきながら記録を付けていく。
この地味な作業が高性能なゴーレムに繋がるということに気が付いていない研究者は多い。
私も地味な作業は正直嫌いだけれど、それが大好きなゴーレムに関することならば我慢はできる。
「はぁ、でもそれも限界があるよ」
あんなに大好きでずっと弄っていられたゴーレムが、最近は見たくもないと思うことも多くなってきた。
理由はわかっている。
自分が望む方向性の研究ではないせいだ。
私はゴーレムの重量軽減の研究になんて大して興味がない。
だけど以前国軍から発注された高性能ゴーレム1万機の代金を支払ったらもう軍の予算はすっからかんになるというので、仕方なく魔導ジェネレーターも装備も装甲も全部ダウングレードした廉価版ゴーレムを研究しているのだ。
わざわざ性能を低くしてできる限り安くゴーレムを作る研究なんて全く私の好みじゃない。
「空、飛ばせたいなぁ。ねえペリー、あなたみたいに飛べるゴーレムがやっぱり最高よね」
私は右肩にとまっている薄ピンク色をした海鳥型ゴーレム、ペリーに話しかける。
ペリーは私が物心ついた時からずっと資源を投入し続けて鬼のようにアップグレードしてきたゴーレムだ。
他のゴーレムとは物が違う。
私に話しかけられたペリーはまるで本物の鳥のように首を傾げてクェェと鳴いた。
そしてバサリと翼を広げるとまるで重さに囚われていないかのように宙に浮かび上がると、翼を羽ばたかせて研究室の中を優雅に一周して私の肩に戻ってきた。
やっぱり空を飛ぶゴーレムはいい。
できることなら軍から依頼されたゴーレムすべてに空を飛べる機構を取り付けてやりたいところだ。
しかし空を飛ばせることでエネルギーコストは10倍以上になる。
今よりダウングレードしろと言われているのに勝手にそんなことをすることはできない。
「お嫁に行くってもっと楽しいものだと思ってたよ」
私がこのお屋敷の研究室で軍用ゴーレムの研究をしているのは、軍閥貴族のマイルズ子爵家の嫡男アレックス様に嫁入りしたからだ。
田舎の貧乏男爵家の娘である私が格上でしかも役職持ちの子爵家に嫁ぐことができたのはゴーレム作りの才能のおかげだと思っている。
というかそうとしか思えない。
なぜなら私の容姿は一言で言えばちんちくりん、背が低いのは令嬢としてプラスかもしれないけど他の成長すべき場所もすべて幼い。
胸は平たんでお尻も貧相、それでいて腰はそれほど細くない。
寸胴体形、土偶、合法ロリ、王都の貴族院に通っていた頃には様々な陰口を叩かれた。
令嬢らしく優雅なダンスでもできればまた違ったのだろうが、運動神経が最悪な私のダンスは酷いもので、パーティに出ても誰にも踊りに誘われることはなかった。
そんな私に、突如として縁談が降って湧いたのは貴族院卒業間際だった。
どこから聞きつけたのかマイルズ子爵家の現当主であるブライアン様は私のゴーレム作りの腕に期待しているとおっしゃって息子のアレックス様の嫁にと縁談を申し込んでくださったのだ。
アレックス様は私の容姿を見てあからさまにがっかりした様子だったけれど、貴族の縁談は好き嫌いで結ぶものではないので仕方がない。
そんなわけで私はマイルズ子爵家の嫁になり、日々軍用ゴーレムの研究をしているわけだ。
子爵家での生活は居心地が悪いというのが正直なところ。
大きく分けて問題が3つある。
1つ目は好きなゴーレム研究ができないこと。
これは仕方ないからいい。
いつか余裕ができて自分の好きな研究もできるようになるだろう。
2つ目は屋敷の使用人との関係が微妙なこと。
あまり歓迎されていないなと感じることが多々ある。
私が普通の貴族の妻っぽくないことも原因なのかもしれない。
私は見た目もこんなんだし1日中ゴーレムの研究をしているから、たまに馬鹿にされているような気がすることがある。
そのくせ当主であるブライアン様には気に入られているから妬みなんかもあるのかも。
でも軽く見られる原因は私にもあるだろうからこれも仕方ないのかなぁ。
3つ目、これが一番重要。
アレックス様が一度も私を寝所に呼ばない。
貴族の妻の役目というのは色々あるし家によっては私のように多少特殊な役目を期待されることもある。
しかしどこの家でも変わらない一番重要な役目は世継ぎを生むことだろう。
これができないとせっかく第一婦人として嫁入りしたのに側室にランクダウンされてしったり酷い時には実家に送り返されてしまうようなこともありえると聞く。
子供ができにくい体質の人もいるというのに、酷い話だ。
しかし現実問題世継ぎ問題というのは貴族にとってそんな綺麗ごとを言っていられないくらい重要な問題であることは確かだ。
私も男児の一人も産めば使用人たちの当たりも優しくなるかもしれないので早いところ身籠りたいところ。
アレックス様にとってもそれは重要な役目なはずなのに、なぜ結婚して半年も経った今でも寝所に呼ばないのか。
私だって進んで苦手なアレックス様とそういうことをしたいわけではないのだけど、どうせいつかやらなければならないなら早くしてほしいものだ。
どうせアレックス様はどこぞの女とやりまくりなんだろうけど、貴族がそんなにあちこちに種を蒔きまくって後で困っても私は知らない。
というかもう世継ぎは他からもらうから私は子作り免除とかにしてくれないかな。
「はぁ、考え事してたらお腹空いた」
どうせ私のご飯は用意されてないんだろうけどね。
使用人との関係もどうにかしないとな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
40
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる