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3.謎の触手
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「なんだよこの気持ち悪いの」
宝箱から出てきたということはなんらかのアイテムなのだろうが、どう見てもナマ物だ。
心なしかピクピクと動いているような気すらする。
触手は太い1本から5本に枝分かれしており、まるで何かの生物の腕のように見えなくもない。
指のように見える5本の触手は1本1本微妙に様子が異なっており、それがまた余計に気持ち悪かった。
1本目、親指にあたる触手は鱗のようなゴツゴツした物質に覆われていた。
2本目、人差し指にあたる触手は先っちょに尖った爪のような物が生えていた。
3本目、中指にあたる触手はヌラヌラと薄ピンクの液体で濡れていた。
4本目、薬指にあたる触手はブツブツと気色悪いイボに覆われており、時折黄色い液体が噴出していた。
5本目、小指にあたる触手はまるで男性器のような形をしており、時折先っちょから白濁した液体が噴出していた。
結論、最高に気持ちが悪い。
これ以外に何か金箱に入っていないかとナイフで触手を突いてみるが、残念ながら何も見当たらない。
本格的に死ぬしかない状況になってきたな。
「この触手何に使えるアイテムなんだよ」
金箱から出てただ気持ち悪いだけのアイテムということも無いと思うのだが、変態的な使い方以外が思い浮かばない。
伸び縮みしてくれればロープの代わりに使えるか?
俺はそんなことを考えてなるべくヌルヌルしてなさそうな親指の部分に触れてみた。
「うわっ」
次の瞬間触手が伸びて俺の腕に絡みつく。
まるで男女が指を絡め合うように、手のひらに纏わりついてくる触手。
マジで気持ち悪いな。
「おい、待て、ちょっと、止まれ」
触手はどんどん俺の腕に絡みついていき、ついには肩のあたりまでが触手に覆われてしまう。
そこで終わりというわけではなく、触手は服の袖口から侵入して俺の身体に巻きついて行く。
ヌルっとした質感が身体中をまさぐり、背中がぞくぞくする。
怖気が走るというのはこういうことを言うんだな。
「もう無理、泣きそう……」
おっさんを泣かすとはなかなかできることではないぞ。
嘘をついた。
昨日も泣いたわ。
「痛っ、イタタタッ、ちょっ、おっさん汁出ちゃう」
触手は俺の身体から油でも搾り取るかのごとくギリギリと締め付けてくる。
頸動脈でもキメられたのか意識が朦朧としてきた。
こんな終わり方はあんまり……だろ……。
「あれ、生きてる……」
触手に絞殺される夢を見たような気がしたのだが、あれは催眠ガスか何かによって見せられた悪夢だったのだろうか。
いや、そんなわけないよな。
俺は確かに触手に絡みつかれて意識を失ったはずだ。
大量の触手に絡みつかれて留め金が弾け飛んだ装備がそれが事実だということを裏付けている。
あの触手はいったいなんだったんだ。
そう考えた瞬間、俺の右腕は触手になった。
「ほー」
いやいや、右腕が触手になるわけがない。
もう一度右腕を見ると、そこには宝箱に入っていた気持ち悪い触手がまんま右腕になっていた。
あまりのショックで意識が飛びそうになった。
「もとに戻れ」
右腕はもとの右腕に戻った。
しかし以前と違う部分が一つだけある。
手の甲に無数の線が絡みつくような意匠の刺青が入っていたのだ。
さっきは気が付かなかったが、これは確実にあの触手の影響だろう。
服を脱いで確かめるとこの刺青は全身に入っていた。
まさかと思って反対側の腕や足、背中なんかを意識して触手とつぶやく。
するとその全てから触手が生えてきた。
「そういうことか」
これがあの触手のアイテムの力なのだと今になってやっと理解できた。
身体から触手を生やすアイテムなんて聞いたことがない。
神器か、最低でもアーティファクト級のアイテムには間違いないだろう。
これを使えば、この状況をなんとかできるかもしれない。
俺は藁にも縋る想いで触手の力を検証していった。
検証の結果、触手の力は思ったよりも使えるかもしれないことがわかった。
触手は俺の身体のどこからでも生やすことができ、太さや長さは自由自在だ。
太ももくらいの極太にもできるし、小指よりも細い極細にすることもできる。
強度も麻のロープなんかよりよほど高く、細い触手ですら思いきり引っ張っても全く千切れるような様子はなかった。
それだけではなく、生やした触手からは親指に生えていたような鱗や人差し指に生えていたような爪を生やすこともできる。
気持ち悪いのであまりやりたくはないがイボを生やしてあの黄色い液体を分泌することもできた。
あれはかなり強力な溶解液なようで、鋼鉄製のナイフがシューシューと煙を噴きながら溶けたときはかなりビビった。
触手の影響なのか俺の肌は溶けないのだが、服や装備は溶けるので気を付けて使わなければならない。
そのほかにも薄ピンクの分泌液や白濁液も出せるのだが、この2つはよくわからない。
いや白い液体は出すとき妙に気持ちいいし匂いも海鮮系のアレなのでおそらくアレなのだろうが、なんのための機能なのかはちょっと考えたくもない。
なんにせよ、この触手を使えば高所を登ったり下りたりすることは可能だ。
問題は登るか下りるかだが、下りるしかないだろうな。
落ちてきた穴を登れたら一番よかったのだが、作動した落し穴がいつまでも開いているわけはない。
おそらく次に開くのは誰かが落ちてくる時だけだろう。
うっかり者の冒険者やダンジョンを舐め切った初心者などがすぐに落ちてくる可能性もあるが、何か月も誰も来ない可能性だってある。
それを待つくらいならば、触手の可能性を信じてケルベロスから逃げ切れるほうに賭けるほうがマシだ。
「よし、いっちょやったるか」
俺は肩のあたりから生やした細い触手の先の鉤爪を通路の出っ張りに引っかけ、通路から飛び降りた。
宝箱から出てきたということはなんらかのアイテムなのだろうが、どう見てもナマ物だ。
心なしかピクピクと動いているような気すらする。
触手は太い1本から5本に枝分かれしており、まるで何かの生物の腕のように見えなくもない。
指のように見える5本の触手は1本1本微妙に様子が異なっており、それがまた余計に気持ち悪かった。
1本目、親指にあたる触手は鱗のようなゴツゴツした物質に覆われていた。
2本目、人差し指にあたる触手は先っちょに尖った爪のような物が生えていた。
3本目、中指にあたる触手はヌラヌラと薄ピンクの液体で濡れていた。
4本目、薬指にあたる触手はブツブツと気色悪いイボに覆われており、時折黄色い液体が噴出していた。
5本目、小指にあたる触手はまるで男性器のような形をしており、時折先っちょから白濁した液体が噴出していた。
結論、最高に気持ちが悪い。
これ以外に何か金箱に入っていないかとナイフで触手を突いてみるが、残念ながら何も見当たらない。
本格的に死ぬしかない状況になってきたな。
「この触手何に使えるアイテムなんだよ」
金箱から出てただ気持ち悪いだけのアイテムということも無いと思うのだが、変態的な使い方以外が思い浮かばない。
伸び縮みしてくれればロープの代わりに使えるか?
俺はそんなことを考えてなるべくヌルヌルしてなさそうな親指の部分に触れてみた。
「うわっ」
次の瞬間触手が伸びて俺の腕に絡みつく。
まるで男女が指を絡め合うように、手のひらに纏わりついてくる触手。
マジで気持ち悪いな。
「おい、待て、ちょっと、止まれ」
触手はどんどん俺の腕に絡みついていき、ついには肩のあたりまでが触手に覆われてしまう。
そこで終わりというわけではなく、触手は服の袖口から侵入して俺の身体に巻きついて行く。
ヌルっとした質感が身体中をまさぐり、背中がぞくぞくする。
怖気が走るというのはこういうことを言うんだな。
「もう無理、泣きそう……」
おっさんを泣かすとはなかなかできることではないぞ。
嘘をついた。
昨日も泣いたわ。
「痛っ、イタタタッ、ちょっ、おっさん汁出ちゃう」
触手は俺の身体から油でも搾り取るかのごとくギリギリと締め付けてくる。
頸動脈でもキメられたのか意識が朦朧としてきた。
こんな終わり方はあんまり……だろ……。
「あれ、生きてる……」
触手に絞殺される夢を見たような気がしたのだが、あれは催眠ガスか何かによって見せられた悪夢だったのだろうか。
いや、そんなわけないよな。
俺は確かに触手に絡みつかれて意識を失ったはずだ。
大量の触手に絡みつかれて留め金が弾け飛んだ装備がそれが事実だということを裏付けている。
あの触手はいったいなんだったんだ。
そう考えた瞬間、俺の右腕は触手になった。
「ほー」
いやいや、右腕が触手になるわけがない。
もう一度右腕を見ると、そこには宝箱に入っていた気持ち悪い触手がまんま右腕になっていた。
あまりのショックで意識が飛びそうになった。
「もとに戻れ」
右腕はもとの右腕に戻った。
しかし以前と違う部分が一つだけある。
手の甲に無数の線が絡みつくような意匠の刺青が入っていたのだ。
さっきは気が付かなかったが、これは確実にあの触手の影響だろう。
服を脱いで確かめるとこの刺青は全身に入っていた。
まさかと思って反対側の腕や足、背中なんかを意識して触手とつぶやく。
するとその全てから触手が生えてきた。
「そういうことか」
これがあの触手のアイテムの力なのだと今になってやっと理解できた。
身体から触手を生やすアイテムなんて聞いたことがない。
神器か、最低でもアーティファクト級のアイテムには間違いないだろう。
これを使えば、この状況をなんとかできるかもしれない。
俺は藁にも縋る想いで触手の力を検証していった。
検証の結果、触手の力は思ったよりも使えるかもしれないことがわかった。
触手は俺の身体のどこからでも生やすことができ、太さや長さは自由自在だ。
太ももくらいの極太にもできるし、小指よりも細い極細にすることもできる。
強度も麻のロープなんかよりよほど高く、細い触手ですら思いきり引っ張っても全く千切れるような様子はなかった。
それだけではなく、生やした触手からは親指に生えていたような鱗や人差し指に生えていたような爪を生やすこともできる。
気持ち悪いのであまりやりたくはないがイボを生やしてあの黄色い液体を分泌することもできた。
あれはかなり強力な溶解液なようで、鋼鉄製のナイフがシューシューと煙を噴きながら溶けたときはかなりビビった。
触手の影響なのか俺の肌は溶けないのだが、服や装備は溶けるので気を付けて使わなければならない。
そのほかにも薄ピンクの分泌液や白濁液も出せるのだが、この2つはよくわからない。
いや白い液体は出すとき妙に気持ちいいし匂いも海鮮系のアレなのでおそらくアレなのだろうが、なんのための機能なのかはちょっと考えたくもない。
なんにせよ、この触手を使えば高所を登ったり下りたりすることは可能だ。
問題は登るか下りるかだが、下りるしかないだろうな。
落ちてきた穴を登れたら一番よかったのだが、作動した落し穴がいつまでも開いているわけはない。
おそらく次に開くのは誰かが落ちてくる時だけだろう。
うっかり者の冒険者やダンジョンを舐め切った初心者などがすぐに落ちてくる可能性もあるが、何か月も誰も来ない可能性だってある。
それを待つくらいならば、触手の可能性を信じてケルベロスから逃げ切れるほうに賭けるほうがマシだ。
「よし、いっちょやったるか」
俺は肩のあたりから生やした細い触手の先の鉤爪を通路の出っ張りに引っかけ、通路から飛び降りた。
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