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1.オヤジ狩り
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スキルというものが神の慈悲なのだとすれば、俺に与えられたこれを神自身はどう思っているのだろうか。
【肉棒術】というベッドの上でしか活躍することのないスキルを神自身が選んで俺に与えたとしたなら、神はどんな表情をして俺にこのスキルを与えたというのか。
絶対爆笑してるだろ。
今のこいつらみたいに。
「なあなあアールさんに聞いたんだけどさ、おっさんのスキルって肉棒術っていうんだって?どうやって使うのか見せてくれよ」
「ぎゃははっ、マジ恥ずかしいスキルだな」
「そんなスキル持ってたらさぞ繁華街でモテるんでしょうねっ」
「おっさん童貞らしいぜ?金無くて女も抱けねえんだってよ」
「あははっ、ダセェ」
「なあおっさん、いいだろ見せてくれよ。そのズボン脱いでさ」
「いいね、脱げよ」
「脱ーげ、ぬーげっ」
「「「ぬーげっ、ぬーげっ」」」
冒険者という職業柄、こういうことは日常茶飯事だ。
自分の力だけが頼りの武辺者が集う冒険者ギルドはチンピラの集まる場末の酒場となんら変わらない。
野生の獣の集まりのほうがまだお行儀がいいかもしれない。
この弱肉強食の世界で舐められることは搾取されることを意味している。
だから冒険者は舐められたらいけないのだ。
俺は強い口調で若い冒険者たちに言い放つ。
「断る」
「はぁ?マジしらけるんだけど。さっさと脱げよ。それで許してやるからさ」
「おっさんが何空気悪くしてんだよ。謝れよカス」
これ以上話の通じないゴブリン共に構っている時間はない。
俺は若い冒険者たちを無視して受付に向かおうとする。
しかしはいそうですかと納まるような獣共ではなかったようだ。
若い冒険者たちは一斉に立ち上がり、俺を取り囲む。
「おいおっさん、ちょっと調子に乗ってるみたいだな」
「教育が必要だぜ。面貸しな」
やはりこうなるか。
仕方ないな、冒険者は弱肉強食。
強い物が弱い物に食われるのは自然の摂理だ。
俺も大人げないことはしたくはないが、こいつらが分からずやなのが悪い。
「げはっ、くそあいつら無茶苦茶しやがって……」
幸いにもパンツの中に隠していた金貨には気が付かなかったようだが、それ以外の金目の物は全部持って行きやがった。
何が冒険者は弱肉強食だから仕方ないだよ。
暴力を振るって他人から奪うなんてただの獣じゃねえかよ。
やばい、なんか泣けてきた。
40にもなって若い奴らに寄って集って袋叩きにされて身ぐるみ剥がされて、そうまでされるようなことを俺は何かしただろうか。
「冒険者なんてやっぱクソだな」
だがこんな職業しかなれなかったんだから仕方がない。
そして今更冒険者をやめたところで何か他の職業に就けるわけでもない。
ただのごく潰しになって野垂れ死ぬだけだ。
野垂れ死ぬか這いつくばって生きるかの選択でしかない。
いつからこんなことになったんだろうな。
12歳までは良かった気がする。
成人の儀でどんなスキルを授かるのか想像して、毎日が夢と希望に満ち溢れていた。
やはり人生が狂い始めたのはスキルが【肉棒術】だった頃からだろうな。
始めは肉棒って意味も分からなかった。
だが大人は誰も答えてくれなかった。
そりゃそうだ、肉棒ってのはチ〇コのことなんだからな。
剣術や槍術、格闘術なんかの武術スキルの一種だと思っていた俺は絶望した。
なんだよそのスキルは、なんで俺だけそんなかっこ悪いスキルなんだと。
だがまあ、スキルが自分の思い描いたものと違うなんてことはよくあることだ。
スキルの力なんて借りなくたって成功している人はたくさんいる。
だから俺はめげずに冒険者として上を目指した。
まだまだ今後の人生に希望ってやつを持っていたような気がする。
思えばもうそのあたりで人生を間違えていた気がする。
俺に戦いの才能なんて無かったんだ。
そもそも戦闘系のスキルを授からなかった時点で冒険者として成功することはほぼ無い。
一握りの成功者を見て自分にも可能性があるなんて思っていた時点で、自分というものが見えていない大馬鹿野郎だった。
俺にとって最良の選択は、肉棒術というスキルを授かった時点でそれを生かす仕事を探すことだった。
男娼でもいい、金持ちマダムの情夫でもいい、若い頃ならば何かできたはずなのだ。
だがもう、こんなおっさんになってはどうしようもない。
いつか身体を壊して野垂れ死ぬまで地べたを這いずって生きていくしかないのだ。
翌日、ギルドに預けていた古い装備を身に付けダンジョンに潜る。
いくら金を稼いでもどうせまた若い連中に身ぐるみ剥がされるだろうが、稼がなければそのまま死ぬ。
どうせなら死ぬまであがいて死にたいよな。
俺はいつものように宝箱の出現しそうな場所を周回して小銭を稼いでいく。
ダンジョンは誰が作ったか知らねえが、危険な場所にある宝箱ほど価値のある物が入っていることが多い。
だから冒険者はコツコツと金を貯めて装備を整え、万全の準備をしてより危険の多い場所へと宝箱を探しに行くのだ。
しかし今の俺はそのコツコツ整えた装備を丸っと剥ぎ取られた状態だ。
この状態ではそれほど危険な場所へ行くことはできないだろう。
防具がワンランク下の素材で出来ていることはまだなんとかなりそうなんだが、魔鋼製の手斧を奪われたのが大きい。
あれは俺の主武器だ。
俺の故郷では戦士は左手に手斧を、右手に獣の牙のように湾曲したナイフを持って戦う。
俺も小さい頃からそのスタイルで鍛えてきた。
右手に持ったナイフは魔物の急所を切り裂き、ハラワタを引きずり出すのに適した形をしており、戦闘にも獲物の解体にも使えるうえに投擲もしやすい便利な物だ。
しかし硬い装甲や丈夫な毛皮を持つ魔物には攻撃力が足りないこともあるため、左手に持った一撃必殺の手斧を使う。
その手斧が奪われた俺に、硬い魔物は狩れない。
せいぜい3階層までといったところか。
そのへんでは宝箱から大した物は出ないが、食い扶持くらいは稼げるだろう。
いつもは手斧を持つ左手にもナイフを持ち、俺はダンジョンに潜っていった。
【肉棒術】というベッドの上でしか活躍することのないスキルを神自身が選んで俺に与えたとしたなら、神はどんな表情をして俺にこのスキルを与えたというのか。
絶対爆笑してるだろ。
今のこいつらみたいに。
「なあなあアールさんに聞いたんだけどさ、おっさんのスキルって肉棒術っていうんだって?どうやって使うのか見せてくれよ」
「ぎゃははっ、マジ恥ずかしいスキルだな」
「そんなスキル持ってたらさぞ繁華街でモテるんでしょうねっ」
「おっさん童貞らしいぜ?金無くて女も抱けねえんだってよ」
「あははっ、ダセェ」
「なあおっさん、いいだろ見せてくれよ。そのズボン脱いでさ」
「いいね、脱げよ」
「脱ーげ、ぬーげっ」
「「「ぬーげっ、ぬーげっ」」」
冒険者という職業柄、こういうことは日常茶飯事だ。
自分の力だけが頼りの武辺者が集う冒険者ギルドはチンピラの集まる場末の酒場となんら変わらない。
野生の獣の集まりのほうがまだお行儀がいいかもしれない。
この弱肉強食の世界で舐められることは搾取されることを意味している。
だから冒険者は舐められたらいけないのだ。
俺は強い口調で若い冒険者たちに言い放つ。
「断る」
「はぁ?マジしらけるんだけど。さっさと脱げよ。それで許してやるからさ」
「おっさんが何空気悪くしてんだよ。謝れよカス」
これ以上話の通じないゴブリン共に構っている時間はない。
俺は若い冒険者たちを無視して受付に向かおうとする。
しかしはいそうですかと納まるような獣共ではなかったようだ。
若い冒険者たちは一斉に立ち上がり、俺を取り囲む。
「おいおっさん、ちょっと調子に乗ってるみたいだな」
「教育が必要だぜ。面貸しな」
やはりこうなるか。
仕方ないな、冒険者は弱肉強食。
強い物が弱い物に食われるのは自然の摂理だ。
俺も大人げないことはしたくはないが、こいつらが分からずやなのが悪い。
「げはっ、くそあいつら無茶苦茶しやがって……」
幸いにもパンツの中に隠していた金貨には気が付かなかったようだが、それ以外の金目の物は全部持って行きやがった。
何が冒険者は弱肉強食だから仕方ないだよ。
暴力を振るって他人から奪うなんてただの獣じゃねえかよ。
やばい、なんか泣けてきた。
40にもなって若い奴らに寄って集って袋叩きにされて身ぐるみ剥がされて、そうまでされるようなことを俺は何かしただろうか。
「冒険者なんてやっぱクソだな」
だがこんな職業しかなれなかったんだから仕方がない。
そして今更冒険者をやめたところで何か他の職業に就けるわけでもない。
ただのごく潰しになって野垂れ死ぬだけだ。
野垂れ死ぬか這いつくばって生きるかの選択でしかない。
いつからこんなことになったんだろうな。
12歳までは良かった気がする。
成人の儀でどんなスキルを授かるのか想像して、毎日が夢と希望に満ち溢れていた。
やはり人生が狂い始めたのはスキルが【肉棒術】だった頃からだろうな。
始めは肉棒って意味も分からなかった。
だが大人は誰も答えてくれなかった。
そりゃそうだ、肉棒ってのはチ〇コのことなんだからな。
剣術や槍術、格闘術なんかの武術スキルの一種だと思っていた俺は絶望した。
なんだよそのスキルは、なんで俺だけそんなかっこ悪いスキルなんだと。
だがまあ、スキルが自分の思い描いたものと違うなんてことはよくあることだ。
スキルの力なんて借りなくたって成功している人はたくさんいる。
だから俺はめげずに冒険者として上を目指した。
まだまだ今後の人生に希望ってやつを持っていたような気がする。
思えばもうそのあたりで人生を間違えていた気がする。
俺に戦いの才能なんて無かったんだ。
そもそも戦闘系のスキルを授からなかった時点で冒険者として成功することはほぼ無い。
一握りの成功者を見て自分にも可能性があるなんて思っていた時点で、自分というものが見えていない大馬鹿野郎だった。
俺にとって最良の選択は、肉棒術というスキルを授かった時点でそれを生かす仕事を探すことだった。
男娼でもいい、金持ちマダムの情夫でもいい、若い頃ならば何かできたはずなのだ。
だがもう、こんなおっさんになってはどうしようもない。
いつか身体を壊して野垂れ死ぬまで地べたを這いずって生きていくしかないのだ。
翌日、ギルドに預けていた古い装備を身に付けダンジョンに潜る。
いくら金を稼いでもどうせまた若い連中に身ぐるみ剥がされるだろうが、稼がなければそのまま死ぬ。
どうせなら死ぬまであがいて死にたいよな。
俺はいつものように宝箱の出現しそうな場所を周回して小銭を稼いでいく。
ダンジョンは誰が作ったか知らねえが、危険な場所にある宝箱ほど価値のある物が入っていることが多い。
だから冒険者はコツコツと金を貯めて装備を整え、万全の準備をしてより危険の多い場所へと宝箱を探しに行くのだ。
しかし今の俺はそのコツコツ整えた装備を丸っと剥ぎ取られた状態だ。
この状態ではそれほど危険な場所へ行くことはできないだろう。
防具がワンランク下の素材で出来ていることはまだなんとかなりそうなんだが、魔鋼製の手斧を奪われたのが大きい。
あれは俺の主武器だ。
俺の故郷では戦士は左手に手斧を、右手に獣の牙のように湾曲したナイフを持って戦う。
俺も小さい頃からそのスタイルで鍛えてきた。
右手に持ったナイフは魔物の急所を切り裂き、ハラワタを引きずり出すのに適した形をしており、戦闘にも獲物の解体にも使えるうえに投擲もしやすい便利な物だ。
しかし硬い装甲や丈夫な毛皮を持つ魔物には攻撃力が足りないこともあるため、左手に持った一撃必殺の手斧を使う。
その手斧が奪われた俺に、硬い魔物は狩れない。
せいぜい3階層までといったところか。
そのへんでは宝箱から大した物は出ないが、食い扶持くらいは稼げるだろう。
いつもは手斧を持つ左手にもナイフを持ち、俺はダンジョンに潜っていった。
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