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大魔導師と皇帝

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 大魔導師と皇帝は親友同士だった。
 今まで親友のよしみで大魔導師は皇帝に力を貸したりもしていたが、大魔導師は皇帝に仕える気はなかった。
 皇帝もそれでいいと思っていた。
 今までだって大魔導師は皇帝に十分力を貸してくれていた。
 それだけでもありがたい。
 そんな皇帝もすでに70過ぎ。
 最近ではあまりベッドから起き上がれないほどに老衰していた。
 皇帝はいつまでも老けない大魔導師にお前が羨ましいと零しながらも、自分の死を受け入れていた。
 そんな折、自分の子供たちが帝位継承権を奪い合い、血みどろの権力闘争を引き起こしているという話を大魔導師から聞いた皇帝。
 あと少し、自分が死ぬまで待ってくれればいいのにと思う皇帝。
 皇帝には心残りができてしまっていた。
 それというのも、皇帝は一番末の孫である第四皇女のことを大変可愛がっていた。
 今年8歳になったばかりの可愛い孫娘が、今の状況では命すらも危ないというではないか。
 それもこれも亡き妻に生き写しの第四皇女を自分が可愛がりすぎてしまったせいだ。
 皇位継承順位が低い第四皇女は本来なら権力闘争など無関係の立場だ。
 しかし、皇帝が可愛がって連れ歩いていた第四皇女、現皇帝派の面々には少々顔が利く。
 それを利用されて、皇位継承レースに強制参加させられているそうなのだ。
 こんな状況でおちおち死んでいられるかという気持ちになる皇帝。
 なんとか自分の命を延ばす方法はないかと大魔導師にたずねる。
 それは今まで老いない大魔導師に皇帝がたずねてみたかったことだが、それをしてしまうと今までの親友同士の関係が壊れてしまうかもしれないと思い、皇帝が聞けなかったことだった。
 大魔導師はそんな方法はたくさんあると軽い口調で言った。
 皇帝は、驚いてしまった。
 そんなにあっさりとたくさん方法があるとなど答えるのは予想もしていなかった。
 皇帝は、では自分の命をあと少しだけ延ばしてはくれないかと大魔導師に頼んだ。
 大魔導師は、なぜか困ったような、なにか悩んでいるかのような表情をする。
 皇帝はなぜ大魔導師がこんな顔をするのか分からなかった。
 なにか重大な代償でも必要になるのだろうか。
 大魔導師はおずおずと口を開く。
 延命の手段を、自分に選ばせてもらえないかと。
 皇帝はさらに困惑する。
 なぜそんなことを聞くのか?
 最初から大魔導師に頼まねば自分の命はあとわずかであろう。
 なにか問題のある手段を選ぼうというのか。
 大魔導師は言う。
 その方法を選べば、皇帝は今とは似ても似つかぬ姿に変貌してしまう。  
 だが、その方法であれば皇帝の命はあと少しと言わず100年200年と延ばすことができる。
 その方法を皇帝が選んでくれるのであれば私は生涯あなたに仕える覚悟がある。
 皇帝は驚いた。
 今まで何度帝国の重要ポストを用意しても頑として首を縦に振らなかった男が、自分から臣下になると言っているのだ。
 こんなに嬉しいことはない。
 この男にかかれば、帝国に降りかかるいかなる国難でさえも退けて見せるだろう。
 そんな男が、臣下になる覚悟を持って自分に頼みごとをしているのだ。
 たとえこの身が醜い化け物に成り下がろうとも、この男が自分に仕えてくれることに比べれば些細なことだ。
 皇帝は喜んで男にすべてをゆだねた。
 そして……


 目が覚めたら皇帝は幼女になっていた。

「おはようございます陛下」

 床に膝を着き、臣下の礼をとる大魔導師。
 今まで大魔導師がなぜ皇帝の臣下になるのを断っていたのか。
 それは大魔導師が幼女至上主義だったからである。
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