22 / 25
22.僕と筋トレとたんぱく質と
しおりを挟む
『なんだか今日の朝餉は肉ばかりじゃの』
「筋肉を付けるには良質なたんぱく質をとらないとダメなんだって。鶏むね肉とか、牛肉の赤身とか、馬肉とか、卵とか豆とかね」
『ほーん、わらわ肉は好きじゃからいいけどの』
タマは僕の用意したたんぱく質多めの食事を人間の姿でパクパクと食べていく。
人間の姿のタマはとんでもない美女だ。
人の精神を狂わせる波動を今は放っていないので気が狂うことはないけれど、普通にしているだけでも男を狂わせそうなほどの美貌だ。
これが傾国の美女ってやつなんだね。
実際タマの記憶の中にはその美貌だけで国を傾かせてしまったということもあった。
綺麗な人っていうのもなかなか大変なんだね。
『やはり人間の食べ物は美味いのう。おかわりじゃ』
「はいはい」
タマはご飯茶碗に山盛りだったご飯をあっという間に平らげておかわりを要求する。
胃袋ブラックホールだね。
タマにとっては食べ物は必ずしも必要なものではない。
妖であるタマにとっては飲食なんて娯楽みたいなものなのだ。
そもそもの話タマの本来の姿はグリズリーよりも巨大な妖狐らしいのだ。
この程度の食べ物はいくらでも食べられるし、食べなくても生きていける。
底なしなわけだ。
人間の食べものを思う存分食べるのはずいぶんと久しぶりなそうなので家計が火の車になるまでは思う存分食べさせてあげようと思っている。
このくらい家計を圧迫する存在がいないとプチブルジョワ状態の僕は怠けて働かなくなってしまうかもしれないからね。
陰陽師だって信用が大事だよ。
やっとリピーターが増えてきた夢売り稼業を今放り出すわけにはいかない。
僕はタマのお茶碗に山のようにご飯を盛ってあげ、今日の予定を話す。
「今日は僕の友達と一緒にスポーツジムに行くからね。タマはいつものようにマフラーかキーホルダーに化けといて」
『わかったのじゃ。室内ならばキーホルダーがいいかのう』
タマはいろんなものに化けられる。
でも人間の姿はこの美女の姿以外は練習したことがないそうだ。
こんな美女と一緒に歩いていたら面倒なことになりそうなので、普段一緒に外出するときには狐皮のマフラーか狐の尻尾のようなキーホルダーに化けてもらっているのだ。
どちらも自分の身体の一部を残すだけなのでとても簡単に化けられるらしい。
『のう、主様の友達とはわらわと戦ったときに扉の外で待っていたおなごじゃろう?』
「そうだけど?」
『あのおなごのこと、好いとるのか?もう接吻はしたのかのう。それとも褥を共に……』
タマはニヤニヤと下種な笑いを浮かべながら神崎さんと僕の関係を邪推する。
こう見えても1000年以上生きたおばあちゃんだから下ネタが容赦ないんだよね。
変に狼狽えてもタマを喜ばせるだけだ。
僕はポーカーフェイスを意識して無言でご飯をかき込んだ。
「ごほっごほっ……」
盛大にむせた。
「神崎さん、早いね」
「うん、ちょっと早めにね」
神崎さんとは駅前で待ち合わせた。
僕はかなり早めに来たので集合時間まではまだ30分以上あるというのに、神崎さんはすでに待ち合わせ場所で待っていたのだった。
こういう何気ないところで童貞は勘違いをしてしまうんだよ。
僕はもう童貞じゃないから(夢の中では)勘違いをしたりはしない。
神崎さんは友達の精神疾患を快方に向かわせた僕に恩義を感じている。
だからきっと僕よりも早く着かなければならないと思い早めに来たのだろう。
それにしても、今日の神崎さんはなんだかとても可愛いな。
いつもはシックで落ち着いた感じの服を着ている神崎さんだけれど、今日は少し女の子っぽい感じのファッションだ。
清楚な感じがするグレーのフレアスカートとその下のレギンスがとても似合っている。
僕は生足よりもストッキングやレギンスを履いているほうが好きな派閥に属している。
中でも僕は肌が透けて見えるような薄手のストッキングよりも、温かそうな冬用タイツや運動用のスパッツのほうに魅力を感じるという少数派閥だ。
デニールで言えば最低でも100デニール。
贅沢を言うならば200デニールを超えていると最高だ。
神崎さんは生足をさらけ出すのがあまり好きではないようで普段から厚手のタイツを愛用している。
そういう点でも彼女は僕の好みドストライクだ。
「なんか、変かな……」
「ううん。とても、素敵だと思います」
「そっか……。えへへ」
ドキドキするような笑顔だ。
僕は間違えなかったらしい。
女性のファッションは褒め方を間違えるとその日一日口をきいてもらえないほど怒らせてしまうことがあると聞いたことがある。
どうやら僕のぎこちない褒め方は神崎さんの逆鱗には触れなかったようだ。
「じゃあいこっか」
「うん」
僕たちは連れ立って駅前のスポーツジムに向かう。
神崎さんの知り合いがインストラクターを勤めているらしく、今日はマンツーマンで指導が受けられるそうだ。
神崎さんも筋トレの先輩としてアドバイスをくれるらしい。
筋トレはたぶん辛いだろうけど、隣で神崎さんが励ましてくれるなら頑張れる気がするよ。
「筋肉を付けるには良質なたんぱく質をとらないとダメなんだって。鶏むね肉とか、牛肉の赤身とか、馬肉とか、卵とか豆とかね」
『ほーん、わらわ肉は好きじゃからいいけどの』
タマは僕の用意したたんぱく質多めの食事を人間の姿でパクパクと食べていく。
人間の姿のタマはとんでもない美女だ。
人の精神を狂わせる波動を今は放っていないので気が狂うことはないけれど、普通にしているだけでも男を狂わせそうなほどの美貌だ。
これが傾国の美女ってやつなんだね。
実際タマの記憶の中にはその美貌だけで国を傾かせてしまったということもあった。
綺麗な人っていうのもなかなか大変なんだね。
『やはり人間の食べ物は美味いのう。おかわりじゃ』
「はいはい」
タマはご飯茶碗に山盛りだったご飯をあっという間に平らげておかわりを要求する。
胃袋ブラックホールだね。
タマにとっては食べ物は必ずしも必要なものではない。
妖であるタマにとっては飲食なんて娯楽みたいなものなのだ。
そもそもの話タマの本来の姿はグリズリーよりも巨大な妖狐らしいのだ。
この程度の食べ物はいくらでも食べられるし、食べなくても生きていける。
底なしなわけだ。
人間の食べものを思う存分食べるのはずいぶんと久しぶりなそうなので家計が火の車になるまでは思う存分食べさせてあげようと思っている。
このくらい家計を圧迫する存在がいないとプチブルジョワ状態の僕は怠けて働かなくなってしまうかもしれないからね。
陰陽師だって信用が大事だよ。
やっとリピーターが増えてきた夢売り稼業を今放り出すわけにはいかない。
僕はタマのお茶碗に山のようにご飯を盛ってあげ、今日の予定を話す。
「今日は僕の友達と一緒にスポーツジムに行くからね。タマはいつものようにマフラーかキーホルダーに化けといて」
『わかったのじゃ。室内ならばキーホルダーがいいかのう』
タマはいろんなものに化けられる。
でも人間の姿はこの美女の姿以外は練習したことがないそうだ。
こんな美女と一緒に歩いていたら面倒なことになりそうなので、普段一緒に外出するときには狐皮のマフラーか狐の尻尾のようなキーホルダーに化けてもらっているのだ。
どちらも自分の身体の一部を残すだけなのでとても簡単に化けられるらしい。
『のう、主様の友達とはわらわと戦ったときに扉の外で待っていたおなごじゃろう?』
「そうだけど?」
『あのおなごのこと、好いとるのか?もう接吻はしたのかのう。それとも褥を共に……』
タマはニヤニヤと下種な笑いを浮かべながら神崎さんと僕の関係を邪推する。
こう見えても1000年以上生きたおばあちゃんだから下ネタが容赦ないんだよね。
変に狼狽えてもタマを喜ばせるだけだ。
僕はポーカーフェイスを意識して無言でご飯をかき込んだ。
「ごほっごほっ……」
盛大にむせた。
「神崎さん、早いね」
「うん、ちょっと早めにね」
神崎さんとは駅前で待ち合わせた。
僕はかなり早めに来たので集合時間まではまだ30分以上あるというのに、神崎さんはすでに待ち合わせ場所で待っていたのだった。
こういう何気ないところで童貞は勘違いをしてしまうんだよ。
僕はもう童貞じゃないから(夢の中では)勘違いをしたりはしない。
神崎さんは友達の精神疾患を快方に向かわせた僕に恩義を感じている。
だからきっと僕よりも早く着かなければならないと思い早めに来たのだろう。
それにしても、今日の神崎さんはなんだかとても可愛いな。
いつもはシックで落ち着いた感じの服を着ている神崎さんだけれど、今日は少し女の子っぽい感じのファッションだ。
清楚な感じがするグレーのフレアスカートとその下のレギンスがとても似合っている。
僕は生足よりもストッキングやレギンスを履いているほうが好きな派閥に属している。
中でも僕は肌が透けて見えるような薄手のストッキングよりも、温かそうな冬用タイツや運動用のスパッツのほうに魅力を感じるという少数派閥だ。
デニールで言えば最低でも100デニール。
贅沢を言うならば200デニールを超えていると最高だ。
神崎さんは生足をさらけ出すのがあまり好きではないようで普段から厚手のタイツを愛用している。
そういう点でも彼女は僕の好みドストライクだ。
「なんか、変かな……」
「ううん。とても、素敵だと思います」
「そっか……。えへへ」
ドキドキするような笑顔だ。
僕は間違えなかったらしい。
女性のファッションは褒め方を間違えるとその日一日口をきいてもらえないほど怒らせてしまうことがあると聞いたことがある。
どうやら僕のぎこちない褒め方は神崎さんの逆鱗には触れなかったようだ。
「じゃあいこっか」
「うん」
僕たちは連れ立って駅前のスポーツジムに向かう。
神崎さんの知り合いがインストラクターを勤めているらしく、今日はマンツーマンで指導が受けられるそうだ。
神崎さんも筋トレの先輩としてアドバイスをくれるらしい。
筋トレはたぶん辛いだろうけど、隣で神崎さんが励ましてくれるなら頑張れる気がするよ。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏公務の神様事件簿 ─神様のバディはじめました─
只深
ファンタジー
20xx年、日本は謎の天変地異に悩まされていた。
相次ぐ河川の氾濫、季節を無視した気温の変化、突然大地が隆起し、建物は倒壊。
全ての基礎が壊れ、人々の生活は自給自足の時代──まるで、時代が巻き戻ってしまったかのような貧困生活を余儀なくされていた。
クビにならないと言われていた公務員をクビになり、謎の力に目覚めた主人公はある日突然神様に出会う。
「そなたといたら、何か面白いことがあるのか?」
自分への問いかけと思わず適当に答えたが、それよって依代に選ばれ、見たことも聞いたこともない陰陽師…現代の陰陽寮、秘匿された存在の【裏公務員】として仕事をする事になった。
「恋してちゅーすると言ったのは嘘か」
「勘弁してくれ」
そんな二人のバディが織りなす和風ファンタジー、陰陽師の世直し事件簿が始まる。
優しさと悲しさと、切なさと暖かさ…そして心の中に大切な何かが生まれる物語。
※BLに見える表現がありますがBLではありません。
※現在一話から改稿中。毎日近況ノートにご報告しておりますので是非また一話からご覧ください♪
晴明さんちの不憫な大家
烏丸紫明@『晴明さんちの不憫な大家』発売
キャラ文芸
最愛の祖父を亡くした、主人公――吉祥(きちじょう)真備(まきび)。
天蓋孤独の身となってしまった彼は『一坪の土地』という奇妙な遺産を託される。
祖父の真意を知るため、『一坪の土地』がある岡山県へと足を運んだ彼を待っていた『モノ』とは。
神さま・あやかしたちと、不憫な青年が織りなす、心温まるあやかし譚――。
八奈結び商店街を歩いてみれば
世津路 章
キャラ文芸
こんな商店街に、帰りたい――
平成ノスタルジー風味な、なにわ人情コメディ長編!
=========
大阪のどっかにある《八奈結び商店街》。
両親のいない兄妹、繁雄・和希はしょっちゅうケンカ。
二人と似た境遇の千十世・美也の兄妹と、幼なじみでしょっちゅうコケるなずな。
5人の少年少女を軸に織りなされる、騒々しくもあたたかく、時々切ない日常の物語。
貸本屋七本三八の譚めぐり
茶柱まちこ
キャラ文芸
【書籍化しました】
【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞受賞】
舞台は東端の大国・大陽本帝国(おおひのもとていこく)。
産業、医療、文化の発展により『本』の進化が叫ばれ、『術本』が急激に発展していく一方で、
人の想い、思想、経験、空想を核とした『譚本』は人々の手から離れつつあった、激動の大昌時代。
『譚本』専門の貸本屋・七本屋を営む、無類の本好き店主・七本三八(ななもとみや)が、本に見いられた人々の『譚』を読み解いていく、幻想ミステリー。
あやかし蔵の管理人
朝比奈 和
キャラ文芸
主人公、小日向 蒼真(こひなた そうま)は高校1年生になったばかり。
親が突然海外に転勤になった関係で、祖母の知り合いの家に居候することになった。
居候相手は有名な小説家で、土地持ちの結月 清人(ゆづき きよと)さん。
人見知りな俺が、普通に会話できるほど優しそうな人だ。
ただ、この居候先の結月邸には、あやかしの世界とつながっている蔵があって―――。
蔵の扉から出入りするあやかしたちとの、ほのぼのしつつちょっと変わった日常のお話。
2018年 8月。あやかし蔵の管理人 書籍発売しました!
※登場妖怪は伝承にアレンジを加えてありますので、ご了承ください。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる