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10.魔法使いにはまだ早い
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「ほ、本当にさっきの子より可愛い女子高生と1万円で本番できるんだな!?」
「ええ、夢の中ではなんでも思うがままです。僕を信じて欲望をさらけ出してください」
「でも夢が自由に操れるなんて信じられないな」
「まあまあ、料金は後払いで構いませんのでとりあえず試してみてくださいよ」
「薬とかだったら絶対飲まないからな!?」
「何も問題ありません。あなたはただリラックスしていれば楽園はそこにあります」
「それでは3、2、1で夢の中に飛びますよ。3、2、1!」
よし、眠ったな。
あとはおっさんを夢の中で酒池肉林させれば1万円もらえる。
ボロい商売だ。
ただ相手の欲望を実現すると言った手前、どうしてもおっさんの思ったとおりの夢を見せなくてはいけない。
それにはおっさんの汚い欲望を覗き、それを夢の中に具現化させておっさんが堪能する様を眺めていなくてはならない。
苦痛だ。
1万円はこの苦痛への迷惑料ということで貰えばいいな。
おっと、おっさんの欲望は留まるところを知らないな。
女だらけの水泳大会(スクール水着)をしだしたぞ。
今度僕もやろう。
夢を操作するといっても僕が知りえないことは実現できないからな。
おっさんの欲望を知ることは僕の世界を広げることにも繋がっていたか。
深いな、仕事ってやつは。
おっさんの業もまた、深い。
どんだけ女子高生好きなんだよ。
これ、いつ終わるのかな。
「いやぁ、よかったよ!!こんなに素晴らしい夢は今まで見たことがない。ありがとう。またよろしく!!」
おっさんはそう言って僕に1万円を握らせ、帰っていった。
あのおっさん、4時間も楽しみやがった。
うちには240分コースなんてないんだよ!
今日からうちは90分コースオンリーだ。
あれから毎日欠かさず晴明様式霊力強化トレーニング(マラソン)を続けているから霊力にはまだ余裕があるけれど、気力が大分持っていかれた。
もう時刻は深夜2時すぎ。
草木も眠る丑三つ時だよ。
眠い。
早く帰って眠りたい。
おっさんから1万円を受け取った僕のふところは暖かい。
コンビニで明日の朝ごはんでも買って帰ろうかな。
「きゃっ、痛いっ。離してっ」
聞き覚えのある声に思わず足を止める。
それは忘れようもない神崎さんの声だ。
「離してくださいっ、警察呼びますよ」
「まあまあ、ちょっと休憩していくだけだって。ね?俺もう酔いが回って歩けないんだ。絶対指一本触れないから。約束する」
ああ、絶対嘘のやつですね。
神崎さんの手を掴んで土下座せんばかりの拝み倒しで押し切ろうとしているのは、見るからにヤリチンそうな爽やか系イケメンだ。
飲み会か何かの帰りかな?
僕は誘われたことないけどね。
しかしやはりイケメンも一皮剥けば同じ男だな。
このままでは神崎さんの貞操が危ないかもしれない。
なにせ倒れている僕を家まで運んで、看病までしてくれた神崎さんだ。
拝み倒されれば断りきれない可能性もある。
そうなればヤリチンに失敗は無い。
神崎さんを、助けたい。
僕はおっさんから受け取った1万円を握り締める。
「か、神崎さん。ど、どうかした?」
僕は勇気を振り絞って声をかけた。
「あぁ?なんだてめぇ」
「ひぇっ」
イケメンはみんな性格良いなんて嘘なんだ。
餌を取られそうになった野生動物ばりにキレてるじゃないか。
な、なにか片手で印を結べる術。
僕は咄嗟に精神を沈静化させる術を発動させる。
「あ、あれ?なにキレてんだ俺。ごめんね神崎さん、俺眠いから帰るわ。その子に送っていってもらってよ」
「え?あ、はい……。お疲れ様です」
「ああ、お疲れ~」
発情して本能を剥きだしにしたイケメンはただのイケメンに戻り、去っていった。
僕の勝ちだ。
いやすべてにおいて負けているんだけどね。
「なんだったんだろ……。そういえば橘君はなんでこんな時間に?」
「いや、ちょっと用事があってね」
「そうだよね。私も飲み会の帰りだもん。お酒は飲んでないけどね」
ははは、僕は飲み会じゃないけどね。
誘われる気もしないし。
そもそも誘われるような知人がいない。
泣いてない。
「送っていくよ」
「ありがとう」
神崎さんの家は僕が今住んでいるおじちゃんの家からそれほど離れていない。
走るルートが重なるくらいだから当然だけど。
神崎さんも僕の家を知っているから断りはしない。
同じ方向なのにここで分かれて別々に帰るのも変だし。
「さっきの先輩、なんだったんだろうね。飲み会の帰りに送っていくって言われて、その途中でホテルに誘われて、すっごくしつこかったのに。橘君が来た途端に人が変わったようにあっさり帰っちゃった」
「そ、そうだよね。変だねぇ。あはは……」
「橘君ってさ、魔法使いなの?」
「えぇ!?」
こ、このまま30歳になったらそうなっちゃうかもしれません。
でもまだ僕は魔法使いじゃないし、なる気もない。
「僕は魔法使いにはならないよ」
「そうなんだ。頑張ってね……」
「ん?うん。まあ頑張るよ」
楽しい時間はすぐに終わり、神崎さんの家についてしまった。
「じゃあね、橘君。助けてくれてありがとう」
「ん?うん。じゃあね」
なんか変だったな神崎さん。
何が変なのかは分からないけど。
まあいいや。
この時間に寝たんじゃたぶん神崎さんは早朝ランニングには来ないだろうな。
明日は僕もランニングはサボろう。
「ええ、夢の中ではなんでも思うがままです。僕を信じて欲望をさらけ出してください」
「でも夢が自由に操れるなんて信じられないな」
「まあまあ、料金は後払いで構いませんのでとりあえず試してみてくださいよ」
「薬とかだったら絶対飲まないからな!?」
「何も問題ありません。あなたはただリラックスしていれば楽園はそこにあります」
「それでは3、2、1で夢の中に飛びますよ。3、2、1!」
よし、眠ったな。
あとはおっさんを夢の中で酒池肉林させれば1万円もらえる。
ボロい商売だ。
ただ相手の欲望を実現すると言った手前、どうしてもおっさんの思ったとおりの夢を見せなくてはいけない。
それにはおっさんの汚い欲望を覗き、それを夢の中に具現化させておっさんが堪能する様を眺めていなくてはならない。
苦痛だ。
1万円はこの苦痛への迷惑料ということで貰えばいいな。
おっと、おっさんの欲望は留まるところを知らないな。
女だらけの水泳大会(スクール水着)をしだしたぞ。
今度僕もやろう。
夢を操作するといっても僕が知りえないことは実現できないからな。
おっさんの欲望を知ることは僕の世界を広げることにも繋がっていたか。
深いな、仕事ってやつは。
おっさんの業もまた、深い。
どんだけ女子高生好きなんだよ。
これ、いつ終わるのかな。
「いやぁ、よかったよ!!こんなに素晴らしい夢は今まで見たことがない。ありがとう。またよろしく!!」
おっさんはそう言って僕に1万円を握らせ、帰っていった。
あのおっさん、4時間も楽しみやがった。
うちには240分コースなんてないんだよ!
今日からうちは90分コースオンリーだ。
あれから毎日欠かさず晴明様式霊力強化トレーニング(マラソン)を続けているから霊力にはまだ余裕があるけれど、気力が大分持っていかれた。
もう時刻は深夜2時すぎ。
草木も眠る丑三つ時だよ。
眠い。
早く帰って眠りたい。
おっさんから1万円を受け取った僕のふところは暖かい。
コンビニで明日の朝ごはんでも買って帰ろうかな。
「きゃっ、痛いっ。離してっ」
聞き覚えのある声に思わず足を止める。
それは忘れようもない神崎さんの声だ。
「離してくださいっ、警察呼びますよ」
「まあまあ、ちょっと休憩していくだけだって。ね?俺もう酔いが回って歩けないんだ。絶対指一本触れないから。約束する」
ああ、絶対嘘のやつですね。
神崎さんの手を掴んで土下座せんばかりの拝み倒しで押し切ろうとしているのは、見るからにヤリチンそうな爽やか系イケメンだ。
飲み会か何かの帰りかな?
僕は誘われたことないけどね。
しかしやはりイケメンも一皮剥けば同じ男だな。
このままでは神崎さんの貞操が危ないかもしれない。
なにせ倒れている僕を家まで運んで、看病までしてくれた神崎さんだ。
拝み倒されれば断りきれない可能性もある。
そうなればヤリチンに失敗は無い。
神崎さんを、助けたい。
僕はおっさんから受け取った1万円を握り締める。
「か、神崎さん。ど、どうかした?」
僕は勇気を振り絞って声をかけた。
「あぁ?なんだてめぇ」
「ひぇっ」
イケメンはみんな性格良いなんて嘘なんだ。
餌を取られそうになった野生動物ばりにキレてるじゃないか。
な、なにか片手で印を結べる術。
僕は咄嗟に精神を沈静化させる術を発動させる。
「あ、あれ?なにキレてんだ俺。ごめんね神崎さん、俺眠いから帰るわ。その子に送っていってもらってよ」
「え?あ、はい……。お疲れ様です」
「ああ、お疲れ~」
発情して本能を剥きだしにしたイケメンはただのイケメンに戻り、去っていった。
僕の勝ちだ。
いやすべてにおいて負けているんだけどね。
「なんだったんだろ……。そういえば橘君はなんでこんな時間に?」
「いや、ちょっと用事があってね」
「そうだよね。私も飲み会の帰りだもん。お酒は飲んでないけどね」
ははは、僕は飲み会じゃないけどね。
誘われる気もしないし。
そもそも誘われるような知人がいない。
泣いてない。
「送っていくよ」
「ありがとう」
神崎さんの家は僕が今住んでいるおじちゃんの家からそれほど離れていない。
走るルートが重なるくらいだから当然だけど。
神崎さんも僕の家を知っているから断りはしない。
同じ方向なのにここで分かれて別々に帰るのも変だし。
「さっきの先輩、なんだったんだろうね。飲み会の帰りに送っていくって言われて、その途中でホテルに誘われて、すっごくしつこかったのに。橘君が来た途端に人が変わったようにあっさり帰っちゃった」
「そ、そうだよね。変だねぇ。あはは……」
「橘君ってさ、魔法使いなの?」
「えぇ!?」
こ、このまま30歳になったらそうなっちゃうかもしれません。
でもまだ僕は魔法使いじゃないし、なる気もない。
「僕は魔法使いにはならないよ」
「そうなんだ。頑張ってね……」
「ん?うん。まあ頑張るよ」
楽しい時間はすぐに終わり、神崎さんの家についてしまった。
「じゃあね、橘君。助けてくれてありがとう」
「ん?うん。じゃあね」
なんか変だったな神崎さん。
何が変なのかは分からないけど。
まあいいや。
この時間に寝たんじゃたぶん神崎さんは早朝ランニングには来ないだろうな。
明日は僕もランニングはサボろう。
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