断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉

文字の大きさ
上 下
7 / 7

5.エピローグ

しおりを挟む

妻と再開してから、複写で今までの出来事や行った場所を見せたり、魔法の練習をしたり、皆でワイワイやったりで、10日ほど経ちました。

「ジョニー達は職業【冒険者】なのよね」
夕食後ののんびりくつろぎタイムに、妻が編み物をしながら話しかけて来ました。

「そうですね、他にも色々やっていますけど、一番最初に冒険者ギルドで登録したから、冒険者ですね」
「でもジョニーの場合は、冒険者と言うより【商人】だよね」
コニーが言うと、ブルースも続けます。

「色々な物を開発する【発明家】でもあるな」
「僕は【料理人】を推すよ!
父ちゃんのご飯美味しいもん!
あ、母ちゃんのご飯も美味しいよ」
シナトラがアワアワしています。
妻の料理が美味しいのは当然ですよ。

「町長でもありますしね」
珍しくアインも乗って来ます。
「要するに【何でも屋】じゃないの?」
チャックの突っ込みに、皆が大きく頷きます。

確かに、冒険者活動は殆どしていないような……。
発明と言うより、前の世界の物を再現しているだけなのですから、パクリ屋でしょう。
町長は、国王と呼ばれるよりは全然マシです。
やはりここは、何でも屋が一番しっくりきますよね。

「兼業されている方は多いですから、一番初めに登録した職業を名乗る方が殆どですよ。
冒険者として登録したけれど、事情により引退されて、ギルドカードを返却されたら、流石に名乗れませんけど」

へー、そうなのですね。
ん?それならば、
「ギルドで登録していない方…例えば農家の方や漁業の方は、どうなるのです?」
「え?農業ギルドと漁業ギルドが有るに決まってるじゃん。
ジョニー知らなかったの?」
「父ちゃん、僕でも知ってるよ」
チャックとシナトラに可哀想な子を見る目で見られてしまいました。

冒険者ギルド、商業ギルド、薬師ギルド、生産ギルドの四つだけなんじゃあ無いんですね。

「あー、四つって、提携している四つの事?
あれは協賛と言うか、お互いのメリットで手を組んでるんだよ。
農業と漁業は全国津々浦々とはいかないからね。
農業の盛んな土地、海辺の街などにしか無いから、冒険者ギルドとかとは提携していないの」
「支店数が大幅に違いますからね。
提携している四つのギルドは、殆どの町にありますから、持ちつ持たれつの関係なんですよ」
コニーの説明に、アインが捕捉してくれました。

「だからそろそろこの町にも、生産ギルドを誘致した方が良いと思いますよ」
なんとか安定生産出来そうなガラスやコルク、シルク(擬き)、ボタン(それを使用した服)などを、商標登録?特許?
とにかく登録した方が良いそうです。

「皆さん冒険者なのですか?」
「いえ、私とコニーは冒険者登録していませんので、違いますね。
私達の職業は【魔王】になります。
因みにヨルゼルや、コニーの片割れの職業は【国王】です」
魔王は種族名ではなく、職業なのですね、知りませんでした。

「白雪は流石に空欄ですね。
リリーさん、職を探しているのですか?)
アインに問われ、頷く妻。

「まだこの世界に来たばかりなのですから、のんびりしていればいいじゃ無いですか。
家の事をやってくれているのですし、こちらの世界では、私そこそこ稼ぎは有りますよ」
妻の一人や二人……いえ、一人だけですけど、養うのに全く問題有りません。

「収入だけの事じゃなくて、何か仕事をしていないと落ち着かないんですよ」
これは【日本人あるある】ですかねえ、貧乏性と言いますか、【仕事】をしていないと、何か落ち着かないと言いますか、不安になってくると言いますか。

「気持ちはわかります。
なら、何かやりたい事をゆっくり探してみますか?
それとも、得意な分野で、食堂でも開きますか?」
 
そうねぇ…と言いつつ、手元は編み物を続けています。

「お料理も良いけど、私、薬の調合をやってみたいですね」
薬の調合…確か妻の姉が薬剤師で、妻もその道に進むはずが、受験に失敗して……。

「ジョニー、そんな顔しないで。
この世界では薬草と綺麗な水と、調合のスキルが有れば、体力回復の薬が作れるのでしょう?
私にもそのスキルが有りますし」

確かに、自分で作ったことはありませんが、すり潰した薬草を綺麗な水…魔法で出した水で煮出して濾すと、ポーションが出来る事は知っています。
すり潰すコツとか、煮出しのタイミングやなんかは、調合のスキルが無いと上手くいかないそうです。
ほかの薬も、材料が有って、スキルさえ持っていれば、一通り作れるそうです。

しかも妻の調合スキルの熟練度は【中】ですから、そこそこの品質の薬が出来るはずです。

「実は昼間にね、薬師ギルドへ相談に行って、一つ作ってみたの」
と言って妻は、毛糸の入っているカゴから、陶器の小瓶を取り出し、目の前のテーブルに乗せます。 
妻に断り鑑定してみましたら、高品質のポーションでした。

「昼に出掛けていたのはギルドだったのですね。
普通に買い物へ出掛けていたと思っていました」
「隠す気は無かったのですけど…、ごめんなさい」
妻が頭を下げるので、慌ててしまいました。

「別に謝る必要はありませんよ。
やりたい事をやれば良いのですから」
魔法のあるこの世界では、やりたいと思った事は、ほぼ実現可能です。
他人に迷惑をかける事でないのなら、好きな事をすれば良いと思います。

「ええ、やりたい事を仕事にしたいと思ったの。
だから、前には出来なかった事を……人の助けになる事をしたいの」

前世では、妻は一度の受験の失敗で、全ての夢を諦めなければいけませんでした。
この世界で、その夢を叶える事が出来るのなら、やれば良いと思います。
私も全面的に協力をしましょう。

「リリーさんは、薬師になりたいの?」
「そうね、チャックくん。
私は以前薬剤師……薬の専門家になりたかったの。
でも、頭が悪かったからなれなかったのよね」
塾も通わず、家庭教師もつけて貰えず、独学で医大に一発合格なんて、結構無茶な条件を出したもんだよな、あのクソ親………思い出しムカつきはやめておきましょう。

「この世界ならその夢、叶えられるの?」
ニッコリ微笑んで頷く妻。

「母ちゃんがお薬作るなら、僕が薬草取って来てやるよ!」
「白雪もお手伝いする~」
「まあ、薬草ダンジョンもあるしな、薬師になるには都合の良い町だと思うぞ」

シナトラ達に肯定され、妻は私に視線を向けて来ます。
「作業部屋を作らなければなりませんね」
頷きながら言うと、妻は嬉しそうに微笑みした。






しおりを挟む
感想 57

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(57件)

ask
2025.02.08 ask

…ざまぁあった?

解除
越後屋みつえもん

じいさま・ばあさまが元気なのはいい作品
とは言え最後のグダグダは何たかなぁ…ಠ⁠ω⁠ಠ

解除
ひゅふぁ
2025.01.25 ひゅふぁ

面白かったです、けど結局解決したの?と思いました。
先王は処罰を約束したけれど、リリアが実際いじめられていたかどうかというところも、王子や側近の処罰も、さらっとでいいので書いていてほしかった。

おじいちゃんはきっと多分孫娘のことを本当に大切に思ってる、とは思うのだけど、孫娘をダシに戦をしょうとしているように見えるところが、面白かったです。
結果、エリカがかわいそうでした。大きくなるにつれて、「おじいちゃんすぐ戦にしようとするから」と大切なことは打ち明けられなくなりそう。

解除

あなたにおすすめの小説

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

お姉ちゃん今回も我慢してくれる?

あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」 「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」 「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」 私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。 代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。 お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。 ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい? お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。

window
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。 そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。 しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。 不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。 「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」 リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。 幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。 平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

window
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです

シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」  卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?  娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。  しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。  婚約破棄されている令嬢のお母様視点。  サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。  過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。