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143.演習開始
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「え~、であるからして、もし危なくなっても、先生たちが助けに入るので安心してください。でも、先生たちは危なくならないと手を貸さないので、くれぐれも頼ることの無いように。では安全第一で探索を開始してください」
グルグル眼鏡の先生の号令に従って、生徒たちが我先にと森に向かっていく。
絶対安全第一とか聞いてないよね。
僕とマヤは焦らずゆっくりと森に入っていく。
焦らなくても森には僕の放ったゴブリン達が暗躍している。
ゴブ次郎に任せておけばいい感じに接待演習してくれるさ。
最初は小動物あたりがいいかな。
僕はどこかに潜んでいるであろうゴブ次郎に向けて手信号で合図を送る。
すると僕たちから10メートルほど離れた茂みがガサガサと音を立てる。
「マヤ、あそこ何か動いた気がするよ」
「うん、慎重に近づこう」
マヤは懐のホルスターから短杖を取り出して構える。
マヤは魔法があまり得意ではないみたいだから、ナイフとかのほうがいいような気がするけどね。
まあ最初は小動物のオーダーだから、きっと問題無いはず。
「キュイキュイッ!!」
茂みから出てきたのはバチバチと帯電するイタチのような魔物。
小動物とは言ったけどさ。
あれはどう考えてもこんな森の浅い場所で出てくるような魔物じゃない。
魔法を使う魔物なんて向こうの世界では絶対Bランクよりも上の魔物だ。
僕はどこかに居るはずのゴブ次郎に身振り手振りでこれじゃないアピールをする。
「グギャグギャグギャギャ?(あれじゃなかったですか?)」
ゴブ次郎の声がしたのは背中からだった。
いつからそこにいたというのか。
「ヒソヒソ(あれじゃないよ。もっとあるでしょ。なんか兎に角が生えただけみたいな奴が)」
「グギャ(了解)」
ゴブ次郎は常人には見えないようなスピードであの雷獣みたいな魔物を攫って去っていった。
「あれ?どこかに行っちゃった。残念だなぁ。あの魔物を倒せたらきっとA判定だったのに」
「そうだね。でも素早そうな魔物だったから、マヤのほうが負けちゃってた可能性もあるよ。あの魔物は魔法が使えるみたいだったし」
「そうなんだ。じゃあ逃げてくれて運がよかったかもしれない」
言葉とは裏腹に、やはり少し残念そうにするマヤ。
僕はそんなマヤを喜ばせようとゴブ次郎にまたも手信号を送る。
今度こそ小動物が来るはずだ。
ガサガサと茂みを揺らして出てきたのは、角の生えた兎だ。
でも、でかいな。
その兎の魔物は見えている鼻先から前足の付け根のあたりまでですでに1メートルを越えているように見える。
全長を想像するならば、軽く5メートルは超えているだろう。
僕は全身を使って全力でこれじゃないという意思をゴブ次郎に伝える。
しかしゴブ次郎もさすがにあれは抱えて下がることはできなかったみたいで、兎の魔物を指差して手をクロスさせて返品不能であることを伝えてくる。
しょうがないなあ。
「マヤ、下がって。大きな兎の魔物だ」
「うん。わかった」
マヤは素直に僕の後ろに隠れる。
あれは僕が倒そう。
使い魔の力も魔法使いの力のうちであるってピカール先生も言っていたから、僕が倒しても問題ないだろう。
演習にはならないかもしれないけどね。
バキバキと立ち木を爪で粉砕しながら出てきた巨大な兎は、思ったとおりヒグマ顔負けの大きさだ。
もはやでかい兎というより耳の長い熊と言ったほうがしっくりくる魔物だ。
その額からは湾曲した2本の角が生えている。
確かに角のある兎だけど、僕の注文とはちょっと違うな。
「グルルッ」
低い威嚇の声を上げた兎は、その巨体を持ち上げて直立した。
「その巨体で立つとか反則でしょ」
直立した兎は反則級にでかかった。
2階建ての家くらいの大きさはあるだろう。
「ク、クロード、大丈夫なの?」
「大丈夫。ドラゴンよりはたぶん弱いと思うから」
とりあえず、鑑定かな。
固有名:なし
種族:ホッパーラビット
スキル:【身体強化lv65】【脚力超強化lv72】【ネイルブレードlv56】【エアホッパーlv66】
前に別の魔物を鑑定したときもそうだったんだけど、どうやらこの世界のスキルというのは上限レベルが10ではないようなんだ。
だから一概にどちらが強いとか弱いとかは正確には分からないんだけど、大体あちらの世界の1レベルがこちらの世界の10レベルくらいと考えていい。
まあそう考えると、この兎は大体向こうの世界でオーク(変異種)とかそのへんの魔物と同じくらいの強さということになる。
Bランク冒険者くらいの強さがあれば倒せそうだけど、とても魔法学園に入学したばかりの生徒に仕留められる魔物ではない。
「グルルァァッ」
兎が脚を軽く曲げ、溜めを作る。
スキルのとおりなら、たぶん飛んでくるな。
予想通り兎は目にも留まらぬスピードで飛んできた。
まあ物理スキルしか持ってない兎は僕にとって美味しい獲物でしかない。
兎は反転魔法の壁に激突して色々と圧し折れて絶命した。
「すごい……。クロードは強いね」
「まあそれほどでもあるかな」
あまり強さを褒められたことがないから、少し嬉しい。
しかし僕は結構長く冒険者をしていたにも拘わらず、解体が苦手なんだよね。
この交通事故に遭ったみたいな兎の魔物をどうしようか。
「私、解体は得意だから任せてよ」
僕が困っていたらマヤが名乗り出てくれた。
彼女の実家は貧乏貴族だ。
そんな彼女がなぜ解体が得意なのかを想像すると、涙が出そうになるのでやめておこう。
いっぱい食べて大きくなりな。
色々とね。
グルグル眼鏡の先生の号令に従って、生徒たちが我先にと森に向かっていく。
絶対安全第一とか聞いてないよね。
僕とマヤは焦らずゆっくりと森に入っていく。
焦らなくても森には僕の放ったゴブリン達が暗躍している。
ゴブ次郎に任せておけばいい感じに接待演習してくれるさ。
最初は小動物あたりがいいかな。
僕はどこかに潜んでいるであろうゴブ次郎に向けて手信号で合図を送る。
すると僕たちから10メートルほど離れた茂みがガサガサと音を立てる。
「マヤ、あそこ何か動いた気がするよ」
「うん、慎重に近づこう」
マヤは懐のホルスターから短杖を取り出して構える。
マヤは魔法があまり得意ではないみたいだから、ナイフとかのほうがいいような気がするけどね。
まあ最初は小動物のオーダーだから、きっと問題無いはず。
「キュイキュイッ!!」
茂みから出てきたのはバチバチと帯電するイタチのような魔物。
小動物とは言ったけどさ。
あれはどう考えてもこんな森の浅い場所で出てくるような魔物じゃない。
魔法を使う魔物なんて向こうの世界では絶対Bランクよりも上の魔物だ。
僕はどこかに居るはずのゴブ次郎に身振り手振りでこれじゃないアピールをする。
「グギャグギャグギャギャ?(あれじゃなかったですか?)」
ゴブ次郎の声がしたのは背中からだった。
いつからそこにいたというのか。
「ヒソヒソ(あれじゃないよ。もっとあるでしょ。なんか兎に角が生えただけみたいな奴が)」
「グギャ(了解)」
ゴブ次郎は常人には見えないようなスピードであの雷獣みたいな魔物を攫って去っていった。
「あれ?どこかに行っちゃった。残念だなぁ。あの魔物を倒せたらきっとA判定だったのに」
「そうだね。でも素早そうな魔物だったから、マヤのほうが負けちゃってた可能性もあるよ。あの魔物は魔法が使えるみたいだったし」
「そうなんだ。じゃあ逃げてくれて運がよかったかもしれない」
言葉とは裏腹に、やはり少し残念そうにするマヤ。
僕はそんなマヤを喜ばせようとゴブ次郎にまたも手信号を送る。
今度こそ小動物が来るはずだ。
ガサガサと茂みを揺らして出てきたのは、角の生えた兎だ。
でも、でかいな。
その兎の魔物は見えている鼻先から前足の付け根のあたりまでですでに1メートルを越えているように見える。
全長を想像するならば、軽く5メートルは超えているだろう。
僕は全身を使って全力でこれじゃないという意思をゴブ次郎に伝える。
しかしゴブ次郎もさすがにあれは抱えて下がることはできなかったみたいで、兎の魔物を指差して手をクロスさせて返品不能であることを伝えてくる。
しょうがないなあ。
「マヤ、下がって。大きな兎の魔物だ」
「うん。わかった」
マヤは素直に僕の後ろに隠れる。
あれは僕が倒そう。
使い魔の力も魔法使いの力のうちであるってピカール先生も言っていたから、僕が倒しても問題ないだろう。
演習にはならないかもしれないけどね。
バキバキと立ち木を爪で粉砕しながら出てきた巨大な兎は、思ったとおりヒグマ顔負けの大きさだ。
もはやでかい兎というより耳の長い熊と言ったほうがしっくりくる魔物だ。
その額からは湾曲した2本の角が生えている。
確かに角のある兎だけど、僕の注文とはちょっと違うな。
「グルルッ」
低い威嚇の声を上げた兎は、その巨体を持ち上げて直立した。
「その巨体で立つとか反則でしょ」
直立した兎は反則級にでかかった。
2階建ての家くらいの大きさはあるだろう。
「ク、クロード、大丈夫なの?」
「大丈夫。ドラゴンよりはたぶん弱いと思うから」
とりあえず、鑑定かな。
固有名:なし
種族:ホッパーラビット
スキル:【身体強化lv65】【脚力超強化lv72】【ネイルブレードlv56】【エアホッパーlv66】
前に別の魔物を鑑定したときもそうだったんだけど、どうやらこの世界のスキルというのは上限レベルが10ではないようなんだ。
だから一概にどちらが強いとか弱いとかは正確には分からないんだけど、大体あちらの世界の1レベルがこちらの世界の10レベルくらいと考えていい。
まあそう考えると、この兎は大体向こうの世界でオーク(変異種)とかそのへんの魔物と同じくらいの強さということになる。
Bランク冒険者くらいの強さがあれば倒せそうだけど、とても魔法学園に入学したばかりの生徒に仕留められる魔物ではない。
「グルルァァッ」
兎が脚を軽く曲げ、溜めを作る。
スキルのとおりなら、たぶん飛んでくるな。
予想通り兎は目にも留まらぬスピードで飛んできた。
まあ物理スキルしか持ってない兎は僕にとって美味しい獲物でしかない。
兎は反転魔法の壁に激突して色々と圧し折れて絶命した。
「すごい……。クロードは強いね」
「まあそれほどでもあるかな」
あまり強さを褒められたことがないから、少し嬉しい。
しかし僕は結構長く冒険者をしていたにも拘わらず、解体が苦手なんだよね。
この交通事故に遭ったみたいな兎の魔物をどうしようか。
「私、解体は得意だから任せてよ」
僕が困っていたらマヤが名乗り出てくれた。
彼女の実家は貧乏貴族だ。
そんな彼女がなぜ解体が得意なのかを想像すると、涙が出そうになるのでやめておこう。
いっぱい食べて大きくなりな。
色々とね。
応援ありがとうございます!
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