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142.校外演習
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さて、学園生活が始まった。
まあ僕が授業を受けるわけじゃないから別にいつもと変わらないけどね。
破壊された教室に、ペカーリ先生の声が虚しく響く。
なんかこの世界の魔法は小難しい話が多いな。
ペカーリ先生の話は最初から今まで全く理解できないので、僕はスマホを取り出してダウンロードしておいたWEB小説を読む。
最近は、現実世界にダンジョンができてしまう話が僕のお気に入りだ。
赤羽にダンジョンなんて楽しそう。
やがて授業が終わり、生徒たちが教室から出ていく。
なんでこんな壊れた教室で授業してるんだろうね。
他に教室が開いてなかったのかも。
「クロード、お昼ご飯行こうよ」
「うん」
スマホをしまって僕もマヤと一緒に教室を出る。
ここのお昼ご飯はそこそこ美味しい。
全員集まったところで神だか精霊だかに祈りを捧げてから食べるという少し堅苦しいスタイルでなければ最高なのにな。
食堂に向かうと、すでに多くの生徒たちが席に就いて談笑している。
席順は寮の部屋割りと同じように大体家柄や成績順になっている。
しかし僕とマヤだけは特別だ。
学園長も僕とマヤに媚びるなら目立たない特別席とかで静かに食べさせてほしいのに、空気の読めないおじいさん学園長はなぜか僕たちの席を成績優秀者や家柄の良い生徒たちが座るあたりに設置した。
これで君たちも彼らの仲間入りさ、とでも思っているのだろうか。
僕はどのみち全員知らない人だからファミレスにでも入った気分で気楽にご飯を楽しめるけれど、マヤはかなり気まずそうにしている。
せっかく美味しいお昼ご飯なのに、少し気の毒だな。
「それではみなさん、祈りを捧げましょう」
食堂を仕切るのは若いころはさぞ美人だったのだろうと感じるお婆さん。
真っ白で綺麗な髪を後ろで一つに纏めたキリリとしたお婆さんだ。
みんなお婆さんの声に従って祈りの言葉を復唱する。
僕もなんとなく祈っている感じの表情で手を組んで目を瞑った。
「では、今日の糧に感謝していただきましょう」
祈りが終わればみんな年齢相応の騒がしさでご飯を食べ始める。
全員17歳以下の少年少女が集まって、静かな食事というのはなかなか難しいよね。
喧騒に包まれると余計にファミレスな気がしてくる。
ドリンクバーは無いけどね。
今日のメニューである煮込み料理を一口。
おお、肉が柔らかい。
ワインの風味とハーブの香りが鼻に抜ける。
美味しいな。
煮込み料理の汁をパンにつけて一口。
やっぱこれでしょ。
硬いパンは汁につけて柔らかくして食べないと。
「クロード、パンはちぎって食べないと」
「ふーん、そうなんだ」
なんかそういうマナーがあるんだね。
サンドイッチとかはどうやって食べるのかな。
あれはがぶっと食べるから美味しいのに。
「これだから平民の使い魔は困る。まったく、同じ空間で食事をされると不快な気分になるな」
嫌味を言ってきたのはマル……マールフェイトだ。
マールフェイトは公爵だかなんだかの三男で、はす向かいの席なんだ。
魔法も得意みたいで、成績も良いので当然近くの席にはなるよね。
ツルッパゲも学園長も何を考えているのか。
マールフェイトに謝る機会を与えてやってくれとか言われたから、これがその機会というやつなのかもしれないけれどどう考えても謝られてない。
聖剣は返せって言ってくるし、鬱陶しい男だ。
もう聖剣は僕のなのに。
「マールフェイト君。あなたは平民か貴族かでしか人間を区別できないの?彼は確かにこの国の貴族ではないけれど、それは他国の王族や貴族であっても同じでしょ。あなたはもし自国の貴族じゃないからといって居丈高に接した人が他国の王族だったらどうするつもりなの?」
「そ、それは……」
正論でマールフェイトを論破したのは、食堂を仕切っているお婆さんだ。
彼女がどのような立場の人なのか僕は知らないけれど、どうやら学園の生徒は誰でも頭が上がらない人物であるらしい。
マールフェイトを言い負かしたお婆さんは、僕の方に向かってウィンクした。
お茶目なお婆さんだな。
あと10歳若かったら惚れてしまっていたかもしれない。
あまり童貞を舐めないで欲しいものだ。
僕はお婆さんに軽く会釈してご飯に集中した。
「え~、であるからして、来週は魔の森での演習に向けて、え~、準備は今からしておくようにお願いします」
そう言ってグルグル眼鏡の先生は教室から出ていった。
どうやら使い魔と連携しての索敵や戦闘を学ぶための課外授業のようだ。
1年生は毎年この時期に必ず行うイベントらしい。
準備と言っていたけれど、どんなものが必要なんだろう。
野営のための準備くらいでいいのかな。
それとも何か、戦闘に必要なものとかあるのかな。
「うーん、結界の魔道具とか高いからなあ」
「結界?そんな魔道具があるの?」
「野営には必需品だよ。あれが無いと夜眠ることができないから」
そうかな。
ボッチでもない限りは、仲間同士で交代で見張りをしながら眠ればいいんじゃないかな。
まあマヤはボッチだけど。
ゴブリンに見張りを頼めば問題ないけどね。
ボッチは悪いことじゃないよ。
「そんなこともできるんだ。クロードはすごいね!」
うーん、僕がいなかったらマヤはどんな演習を迎えていたんだろうか。
いや僕がいなかったらマヤは男だったし聖剣召喚スキルを持っていたはずなのか。
男のマヤはなんか嫌だな。
クラスメイトたちを異世界に連れて行ったことは反省しているけど、後悔はないよ。
まあ僕が授業を受けるわけじゃないから別にいつもと変わらないけどね。
破壊された教室に、ペカーリ先生の声が虚しく響く。
なんかこの世界の魔法は小難しい話が多いな。
ペカーリ先生の話は最初から今まで全く理解できないので、僕はスマホを取り出してダウンロードしておいたWEB小説を読む。
最近は、現実世界にダンジョンができてしまう話が僕のお気に入りだ。
赤羽にダンジョンなんて楽しそう。
やがて授業が終わり、生徒たちが教室から出ていく。
なんでこんな壊れた教室で授業してるんだろうね。
他に教室が開いてなかったのかも。
「クロード、お昼ご飯行こうよ」
「うん」
スマホをしまって僕もマヤと一緒に教室を出る。
ここのお昼ご飯はそこそこ美味しい。
全員集まったところで神だか精霊だかに祈りを捧げてから食べるという少し堅苦しいスタイルでなければ最高なのにな。
食堂に向かうと、すでに多くの生徒たちが席に就いて談笑している。
席順は寮の部屋割りと同じように大体家柄や成績順になっている。
しかし僕とマヤだけは特別だ。
学園長も僕とマヤに媚びるなら目立たない特別席とかで静かに食べさせてほしいのに、空気の読めないおじいさん学園長はなぜか僕たちの席を成績優秀者や家柄の良い生徒たちが座るあたりに設置した。
これで君たちも彼らの仲間入りさ、とでも思っているのだろうか。
僕はどのみち全員知らない人だからファミレスにでも入った気分で気楽にご飯を楽しめるけれど、マヤはかなり気まずそうにしている。
せっかく美味しいお昼ご飯なのに、少し気の毒だな。
「それではみなさん、祈りを捧げましょう」
食堂を仕切るのは若いころはさぞ美人だったのだろうと感じるお婆さん。
真っ白で綺麗な髪を後ろで一つに纏めたキリリとしたお婆さんだ。
みんなお婆さんの声に従って祈りの言葉を復唱する。
僕もなんとなく祈っている感じの表情で手を組んで目を瞑った。
「では、今日の糧に感謝していただきましょう」
祈りが終わればみんな年齢相応の騒がしさでご飯を食べ始める。
全員17歳以下の少年少女が集まって、静かな食事というのはなかなか難しいよね。
喧騒に包まれると余計にファミレスな気がしてくる。
ドリンクバーは無いけどね。
今日のメニューである煮込み料理を一口。
おお、肉が柔らかい。
ワインの風味とハーブの香りが鼻に抜ける。
美味しいな。
煮込み料理の汁をパンにつけて一口。
やっぱこれでしょ。
硬いパンは汁につけて柔らかくして食べないと。
「クロード、パンはちぎって食べないと」
「ふーん、そうなんだ」
なんかそういうマナーがあるんだね。
サンドイッチとかはどうやって食べるのかな。
あれはがぶっと食べるから美味しいのに。
「これだから平民の使い魔は困る。まったく、同じ空間で食事をされると不快な気分になるな」
嫌味を言ってきたのはマル……マールフェイトだ。
マールフェイトは公爵だかなんだかの三男で、はす向かいの席なんだ。
魔法も得意みたいで、成績も良いので当然近くの席にはなるよね。
ツルッパゲも学園長も何を考えているのか。
マールフェイトに謝る機会を与えてやってくれとか言われたから、これがその機会というやつなのかもしれないけれどどう考えても謝られてない。
聖剣は返せって言ってくるし、鬱陶しい男だ。
もう聖剣は僕のなのに。
「マールフェイト君。あなたは平民か貴族かでしか人間を区別できないの?彼は確かにこの国の貴族ではないけれど、それは他国の王族や貴族であっても同じでしょ。あなたはもし自国の貴族じゃないからといって居丈高に接した人が他国の王族だったらどうするつもりなの?」
「そ、それは……」
正論でマールフェイトを論破したのは、食堂を仕切っているお婆さんだ。
彼女がどのような立場の人なのか僕は知らないけれど、どうやら学園の生徒は誰でも頭が上がらない人物であるらしい。
マールフェイトを言い負かしたお婆さんは、僕の方に向かってウィンクした。
お茶目なお婆さんだな。
あと10歳若かったら惚れてしまっていたかもしれない。
あまり童貞を舐めないで欲しいものだ。
僕はお婆さんに軽く会釈してご飯に集中した。
「え~、であるからして、来週は魔の森での演習に向けて、え~、準備は今からしておくようにお願いします」
そう言ってグルグル眼鏡の先生は教室から出ていった。
どうやら使い魔と連携しての索敵や戦闘を学ぶための課外授業のようだ。
1年生は毎年この時期に必ず行うイベントらしい。
準備と言っていたけれど、どんなものが必要なんだろう。
野営のための準備くらいでいいのかな。
それとも何か、戦闘に必要なものとかあるのかな。
「うーん、結界の魔道具とか高いからなあ」
「結界?そんな魔道具があるの?」
「野営には必需品だよ。あれが無いと夜眠ることができないから」
そうかな。
ボッチでもない限りは、仲間同士で交代で見張りをしながら眠ればいいんじゃないかな。
まあマヤはボッチだけど。
ゴブリンに見張りを頼めば問題ないけどね。
ボッチは悪いことじゃないよ。
「そんなこともできるんだ。クロードはすごいね!」
うーん、僕がいなかったらマヤはどんな演習を迎えていたんだろうか。
いや僕がいなかったらマヤは男だったし聖剣召喚スキルを持っていたはずなのか。
男のマヤはなんか嫌だな。
クラスメイトたちを異世界に連れて行ったことは反省しているけど、後悔はないよ。
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