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135.神様

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「目覚めよ……」

「うーん……いやだ……」

「目覚めよ」

「うるさいなぁ……」

「目覚めぬか馬鹿者がぁ!!」

 僕は飛び起きた。
 そこは昨日眠ったはずの真田家のベッドではなかった。
 天井も床も壁も、すべてが真っ白で距離感の掴みにくい空間だ。
 12畳くらいの広さな気もするし、体育館よりも広いような気もする。
 そして僕の胸倉を掴んでぐらぐらと揺する妙齢の美女。
 その肉体は豊満で、バンッ、キュッ、バンッッといったグラビアモデルのようなワガママボディだ。
 肉感的なボディを古代ローマ人が着ていたようなカーテンを巻きつけたみたいなやつで覆っている。
 片乳零れ落ちそうだけど、何か不思議な力が働いているのか僕の目からはその全容がギリギリ見えないようになっている。
 残念だ。

「おい馬鹿者、起きたか?起きたら起きたで私の乳ばかり見おって」

「ごめんなさい。乳が目の前にあったから」

「そんなことはどうでもいい!!」

 どうでもいいってことは見てもいいってことだよね。
 じゃあ遠慮なく。

「お主このまま絞め殺すぞ」

「すみません。ところでお姉さんは誰ですか?」

「私のことも忘れておるのか。私は神だ。お主をあちらの世界に転生させてやった存在だ」

「ええ!?」

「お主が異世界に転生したいと土下座して頼むのでしょうがなく転生させてやったのだろうが!」

 マジか。
 僕そんなことを頼んでいたのか。
 ありがとう僕、君のおかげで転生してチート無双できたよ。

「感謝するなら私にしろ!!」

「あ、そうですね。ありがたやありがたや」

 僕は神様のおっぱいに祈りを捧げる。

「どこに祈っとる。まったく、向こうの世界にも私の神像がいくらでもあっただろうが。もっと早く祈らんか」

「すみません。僕神様の記憶が無いです」

「まあそんなことだろうと思っとった。前に転生させた奴もそうじゃったからな」

「前?」

「勇者クニヒコとか呼ばれておった奴のことじゃ」

 おお、勇者クニヒコ。
 そうか、勇者クニヒコは転生者だったのか。
 転移かと思ったけどね。

「あやつも一度は死んで転生したのじゃ。お主と違って青年の身体からだがな」

「へー。そんなことできたんだ」

「今はそんなことどうでもいいのだ!!お主大変なことをしでかしてくれたな」

「大変なこと?」

 何かしたかな。
 神様に怒られるようなこと。
 心当たりが無いわけではないけど。

「30人もの人間に世界を超えさせるなど、前代未聞じゃぞ!!」

「あ、それですか」

「お主のせいで世界は大変なことになっておる」

「なんでですか?」

「馬鹿か!異世界から人間を転移させて何も起こらんと思ったのか?」

 まあ確かに何か起こるかもしれないとは思った。
 でもできるってことは問題ないってことかと。

「あの世界に発生した魔王はお主が消滅させたみたいじゃがな、それ以外にも別の世界に魔王が発生したり勇者の性別が女になったり、勇者に渡るはずだったスキルが別の奴に渡ってしまったり大変なことがたくさん起きておる!!」

「はぁ……」

 それは大変だ。
 なんか魔王を僕が消滅させたとか気になることもあったけれど、とりあえず黙っておいたほうがよさそうだ。
 頑張ってくださいと心の中で応援しておく。

「こんなにめちゃくちゃになったのは久しぶりじゃ!」

「前にもあったんですか?」

「前は勇者がやらかしてな。あの馬鹿も大概じゃった。絶対に子孫は残すなと言明して異世界に送り出したのに、あの馬鹿は94人も子供を作りおって。女好きにも程があるぞ!!」

「はぁ、それは大変ですね」

 子育てが。
 羨ましいな。
 94人子供がいるって、いったい何人の人と結婚していたんだ。
 1人や2人じゃ絶対無理だぞ。

「はぁ、もう疲れたわ」

「お疲れ様です」

「お主のせいじゃがな」

「すみません。それで、なんで僕はここに呼ばれたんですか?」

「お主に罰を与えるためじゃ」

「罰?」

 痛いのは嫌だな。
 寒いのも嫌だ。
 暑いのも嫌だし。

「まあそう怯える事は無い。ただお主にやってもらいたいことがあるだけじゃ」

「はい……」

「お主には、お主のせいで性別が女になってスキルを持って生まれることができなんだ勇者を助けに行ってもらいたい」

「はぁ……」

 勇者の仲間にでもなって魔王と戦って来いってことかな。
 魔王の強さにもよるけどな。

「安心せい。魔王は氷竜王くらいの強さじゃ。ただの自然発生魔王じゃからな」

「でもその勇者のいる世界って別の世界なんですよね。スキルは使えるんですか?」

「それも問題ない。お主の魂はどこの世界にも適応できるようになっておる。向こうの世界に着けばスキルは自動的に向こうのものに置き換えられるだろう。使役魔法で従えた者はお主と魂が繋がっておるのでそやつらも問題あるまい」

 それなら安心かな。
 なにせ氷竜王くらいの強さのやつを倒すのに氷竜王の力も借りることができるのだから。
 それに女勇者ってなんか響きがエロいし。

「いいか、勇者にこのスキルオーブを届けよ。そして勇者と共に魔王を討伐する。それだけの簡単な仕事じゃ。くれぐれも余計なことをするでないぞ。フリではないぞ。いいか、絶対だぞ」

「わかってます」

「心配じゃ。待て、スキルオーブはやっぱり手で持っていくな。落としたら最悪だからな。ブラックキューブの中に入れていけ。いや、やはりそれも待て。お主ブラックキューブの中にクソみたいなスキルオーブをジャラジャラ入れておるな。間違えるといかん。アイテムボックスのスキルオーブをくれてやる。これに入れていけ」

 心配性だな。
 僕はスキルオーブを間違えたり落としたりしないのに。
 でもアイテムボックスのスキルをもらえるのは嬉しい。
 
「いいか、絶対余計なことはするなよ。絶対だぞ!?」

「わかってます」

 余計なことなんてしないって。
 僕は余計なことなんてしたことないんだ。


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