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121.砂男
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『これからヘリを飛ばします』
「わかったよ。準備しておく」
『よろしくお願いします』
お嬢様からヘリが揃ったとの電話があった。
そろそろ僕の役目も終わりかな。
いや、日本に帰るまでは油断しないように言ったのは僕だったな。
「グギャギャ(お電話です)」
ほらね。
お嬢様から借りていた衛星電話は2つ。
1つは僕が、もう1つはゴブ次郎に持たせていた。
僕とゴブ次郎は思念波で会話できるので電話なんて必要は無い。
もう1つの衛星電話は単純に予備だ。
1つで僕が電話しているときには、ゴブ次郎の持っている予備のほうへ電話が来るようになっている。
「もしもし?」
『ああ、クロードか?ジャーハルだ。少し厄介なことになった。手を貸してくれないか?』
「いいよ」
それだけ言って僕は電話を切る。
向こうでは何か困ったことが起こったようだ。
ジャーハルは結構焦った声だった。
急いだほうがいい。
僕はゴブ次郎に後を託し、ジャーハルの元へ向かうこととする。
ゴブ次郎たちは日本語が分かるので、筆談くらいならできる。
戦力的にゴブ次郎とゴブ之進だけでは心もとないので、ゴブリン隊を全て召喚することにしよう。
航空戦力に対抗するためにはガルーダも数羽必要かもしれない。
少し過剰戦力かな?
まあ過剰で困ることも無い。
僕は召喚したゴブリンとガルーダに軽く状況を説明し、後はゴブ次郎の指示に従うように命令する。
本当は姿を隠すことのできるゴブ次郎は連れて行きたいところだが、状況を熟知しているゴブ次郎にはここで指示を出してもらわなければならない。
ゴブ次郎の夢幻魔法なしにガルーダで空を飛んだら、ちょっと大変なことになるかもしれないけれど今はそんなことを言ってられないよね。
僕はバラライカに飛び乗ると、大空へと舞い上がった。
パパパッ、パパパッ、と散発的に銃弾が飛んでくる。
ガルーダに乗ってジャーハルのところに向かったら、案の定攻撃された。
僕は衛星電話でジャーハルに電話をかける。
『クロードか。ちょっと今立て込んでる。後でかけ直……』
「ちょっと攻撃するのやめてくれる?大きな鳥は僕のペットだから」
『は!?ちょっ、ちょっと待てっ、撃ち方やめろ!!味方だ!あの鳥は味方!!』
飛んでくる銃弾が止む。
別に当たったわけじゃないけど、鬱陶しいからね。
これで落ち着いて着陸できる。
僕はヘリポートっぽいところに着陸するようにバラライカにお願いする。
バラライカはゆっくりと高度を落とし、静かに着陸した。
魔法による飛行はヘリのようにうるさくなくていいね。
姿が優雅だし。
僕はバラライカから飛び降りた。
「クロード!びっくりしたぞ!すごいな、この鳥!」
「結構可愛いでしょ」
「か、可愛い、のかな……。まあそう見えなくも無い」
バラライカには適当に寛いでいるように言い、ジャーハルの背中について基地の中に入る。
軍隊の基地っていうのは結構設備が充実しているな。
トイレに温水洗浄便座付いてるかな。
司令室と書かれた部屋に入る。
「君がクロード君だね。私はこの基地を任せられているウィルソン・モーゼス。私たちに君の力を貸して欲しい」
その部屋に居たのは口ひげがダンディな中年の軍人。
基地の責任者って言っていたな。
まあとても偉い人っていうことだろう。
「僕はジャーハルの友達です。ジャーハルに力を貸します。軍の利益とジャーハルの利益が相反したときはジャーハルの利益のために働きますよ?」
「ああ、それで十分だ。頼むよ。では中尉、説明を」
「はっ」
中尉と呼ばれたのはジャーハルだ。
中尉がどのくらいの階級なのか分からないけれど、やっぱりそこそこのポジションなことは確かなはず。
お給料とか結構もらってるんだろうな?
まあ僕も今回の報酬はとてもいいものだったから、羨ましくなんてないんだけどね。
まだ成功報酬も貰える約束になっているしね。
「A国とうちは同盟国だったんだが、A国軍の幹部が欲をかいてパイプラインの利権を独り占めしようとしたのが今回のことの始まりだ。欲は欲を呼び、もはやA国は火のついた欲望の渦だ。うちにも同盟国だからと手を貸せと言って来る連中が後を立たない。だが、そんな蛮族共の欲望渦巻く戦場になんか巻き込まれたくないというのが、我が国上層部の考えだ。我々は完全にこの国から手を引く」
「でも撤退がうまくいっていない?」
「そうだ。敵には厄介な能力者がいる。敵と言っても数日前までは同盟国だった国だ。そいつの力はよく知っている」
「どんな力なの」
「そいつの力は2つ。風を操る力と、砂を操る力だ。どちらも単純だが、合わされば厄介極まりない。それに力の強さも尋常ではない。能力には強さに個人差があるのをしっているか?」
スキルレベルのことだろうか。
こちらではスキルレベルのことがあまり知られていないのかな。
鑑定を持った人もたぶんいるとは思うんだけど、古代語が読めないと全く意味の分からない文字が頭に浮かび上がる能力にしかならないからね。
「奴の風を操る力は俺の土を操る力や火を操る力の比ではないほど強い」
「なるほどね」
「何度も撤退しようとしたが、砂嵐を起こされて前後不覚に陥った。奴を単独撃破しようともしてみたが、犠牲が増えるだけの結果になった」
「それで僕に頼みたいのは?」
「その男を捕らえて欲しい。できれば生きたまま。A国にとってもその男は重要な存在だ。捕らえてもらえれば最高だ。だが無理なら殺してくれるだけでもいい」
「わかった。報酬は?」
「ドルがいいか?それとも円がいいか?」
「円で」
「ならば20億円出そう」
「了解」
臨時収入で拓君にお土産でも買って帰ろう。
「わかったよ。準備しておく」
『よろしくお願いします』
お嬢様からヘリが揃ったとの電話があった。
そろそろ僕の役目も終わりかな。
いや、日本に帰るまでは油断しないように言ったのは僕だったな。
「グギャギャ(お電話です)」
ほらね。
お嬢様から借りていた衛星電話は2つ。
1つは僕が、もう1つはゴブ次郎に持たせていた。
僕とゴブ次郎は思念波で会話できるので電話なんて必要は無い。
もう1つの衛星電話は単純に予備だ。
1つで僕が電話しているときには、ゴブ次郎の持っている予備のほうへ電話が来るようになっている。
「もしもし?」
『ああ、クロードか?ジャーハルだ。少し厄介なことになった。手を貸してくれないか?』
「いいよ」
それだけ言って僕は電話を切る。
向こうでは何か困ったことが起こったようだ。
ジャーハルは結構焦った声だった。
急いだほうがいい。
僕はゴブ次郎に後を託し、ジャーハルの元へ向かうこととする。
ゴブ次郎たちは日本語が分かるので、筆談くらいならできる。
戦力的にゴブ次郎とゴブ之進だけでは心もとないので、ゴブリン隊を全て召喚することにしよう。
航空戦力に対抗するためにはガルーダも数羽必要かもしれない。
少し過剰戦力かな?
まあ過剰で困ることも無い。
僕は召喚したゴブリンとガルーダに軽く状況を説明し、後はゴブ次郎の指示に従うように命令する。
本当は姿を隠すことのできるゴブ次郎は連れて行きたいところだが、状況を熟知しているゴブ次郎にはここで指示を出してもらわなければならない。
ゴブ次郎の夢幻魔法なしにガルーダで空を飛んだら、ちょっと大変なことになるかもしれないけれど今はそんなことを言ってられないよね。
僕はバラライカに飛び乗ると、大空へと舞い上がった。
パパパッ、パパパッ、と散発的に銃弾が飛んでくる。
ガルーダに乗ってジャーハルのところに向かったら、案の定攻撃された。
僕は衛星電話でジャーハルに電話をかける。
『クロードか。ちょっと今立て込んでる。後でかけ直……』
「ちょっと攻撃するのやめてくれる?大きな鳥は僕のペットだから」
『は!?ちょっ、ちょっと待てっ、撃ち方やめろ!!味方だ!あの鳥は味方!!』
飛んでくる銃弾が止む。
別に当たったわけじゃないけど、鬱陶しいからね。
これで落ち着いて着陸できる。
僕はヘリポートっぽいところに着陸するようにバラライカにお願いする。
バラライカはゆっくりと高度を落とし、静かに着陸した。
魔法による飛行はヘリのようにうるさくなくていいね。
姿が優雅だし。
僕はバラライカから飛び降りた。
「クロード!びっくりしたぞ!すごいな、この鳥!」
「結構可愛いでしょ」
「か、可愛い、のかな……。まあそう見えなくも無い」
バラライカには適当に寛いでいるように言い、ジャーハルの背中について基地の中に入る。
軍隊の基地っていうのは結構設備が充実しているな。
トイレに温水洗浄便座付いてるかな。
司令室と書かれた部屋に入る。
「君がクロード君だね。私はこの基地を任せられているウィルソン・モーゼス。私たちに君の力を貸して欲しい」
その部屋に居たのは口ひげがダンディな中年の軍人。
基地の責任者って言っていたな。
まあとても偉い人っていうことだろう。
「僕はジャーハルの友達です。ジャーハルに力を貸します。軍の利益とジャーハルの利益が相反したときはジャーハルの利益のために働きますよ?」
「ああ、それで十分だ。頼むよ。では中尉、説明を」
「はっ」
中尉と呼ばれたのはジャーハルだ。
中尉がどのくらいの階級なのか分からないけれど、やっぱりそこそこのポジションなことは確かなはず。
お給料とか結構もらってるんだろうな?
まあ僕も今回の報酬はとてもいいものだったから、羨ましくなんてないんだけどね。
まだ成功報酬も貰える約束になっているしね。
「A国とうちは同盟国だったんだが、A国軍の幹部が欲をかいてパイプラインの利権を独り占めしようとしたのが今回のことの始まりだ。欲は欲を呼び、もはやA国は火のついた欲望の渦だ。うちにも同盟国だからと手を貸せと言って来る連中が後を立たない。だが、そんな蛮族共の欲望渦巻く戦場になんか巻き込まれたくないというのが、我が国上層部の考えだ。我々は完全にこの国から手を引く」
「でも撤退がうまくいっていない?」
「そうだ。敵には厄介な能力者がいる。敵と言っても数日前までは同盟国だった国だ。そいつの力はよく知っている」
「どんな力なの」
「そいつの力は2つ。風を操る力と、砂を操る力だ。どちらも単純だが、合わされば厄介極まりない。それに力の強さも尋常ではない。能力には強さに個人差があるのをしっているか?」
スキルレベルのことだろうか。
こちらではスキルレベルのことがあまり知られていないのかな。
鑑定を持った人もたぶんいるとは思うんだけど、古代語が読めないと全く意味の分からない文字が頭に浮かび上がる能力にしかならないからね。
「奴の風を操る力は俺の土を操る力や火を操る力の比ではないほど強い」
「なるほどね」
「何度も撤退しようとしたが、砂嵐を起こされて前後不覚に陥った。奴を単独撃破しようともしてみたが、犠牲が増えるだけの結果になった」
「それで僕に頼みたいのは?」
「その男を捕らえて欲しい。できれば生きたまま。A国にとってもその男は重要な存在だ。捕らえてもらえれば最高だ。だが無理なら殺してくれるだけでもいい」
「わかった。報酬は?」
「ドルがいいか?それとも円がいいか?」
「円で」
「ならば20億円出そう」
「了解」
臨時収入で拓君にお土産でも買って帰ろう。
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