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89.ワイバーン襲来
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あたり一面血の海が広がっている。
ある盗賊は指先や足先から少しずつ肉を削がれ痛みにのたうちながら死に、またある盗賊は生きたまま内臓を引きずり出されて絶命した。
さっきまで絶望に打ちひしがれ、生きる希望の持てなかった女達は圧倒的な恐怖に身体の内に眠る生存本能が目覚め泣き叫ぶ。
そして僕たち3人は部屋の隅で胃の中身をぶちまける作業にいそしんでいた。
「「「オロロロロロゥェッ……」」」
もはやこれはこの世の地獄だ。
人間の中身ってこんな感じなんだ。
ウェップ……もう胃の中空っぽだよ。
僕はコップに凝縮スキルで水を注ぎ、口をゆすぐ。
他2名にも同様に水を渡した。
とりあえず女の子たちは服も着てないから何か着るものを出そう。
僕はブラックキューブの中から衣服の入った石箱を取り出し、中を漁る。
冬用の外套なら何着か持っているのでそれを出し、女の子たちに羽織らせていく。
恐慌状態だった女の子たちだったけれど、なんとか落ち着いてきたみたいだ。
リリー姉さんと目が合うとビクッとなっているけれど。
恐怖を感じるっていうのは死にたくないっていうことだ。
生きたいという前向きな気持ちとはまた少し違うかもしれないけれど、死にたくないっていうのも僕は立派な生きる意味だと思う。
少しでも生きる意志が湧いてきたのなら、結果オーライということにしてくれないか。
こうして僕たちの盗賊退治は、一応の成功を見せたのだった。
僕たちも一応幹部を一人ずつ殺しました。
思い出すと未だにゲロっちゃうけどね。
これで僕たちも無事にCランク冒険者と呼ばれる存在になったわけだ。
めでたしめでたし。
唐突に、平和な街であった伯爵領の領都にけたたましい警鐘の音が響き渡る。
西の空から飛来するのは20は超えようかという数の飛竜。
「敵襲!!敵襲!!」
僕は右手に屋台の串焼きを持ったままの状態でしばらく固まってしまう。
竜だって。
敵はワイバーンという種類の低位ドラゴン。
低位とはいえ竜種は竜種。
その強さはランクでいえばA。
ワイバーン1匹に対してAランクの冒険者4人パーティでやっと討伐できるというレベル。
それが20匹も群れて飛んできたら小さな町ならあっという間に蹂躙されてしまうだろう。
ここは名高き伯爵様の領都だから大丈夫だとは思うんだけどね。
この伯爵領は他国との国境に接する領だ。
つまり伯爵様はあちらの世界の貴族でいうところの、辺境伯みたいな地位であるといえる。
それゆえに伯爵でありながら、ワンランク上の武力と権力を持つことが許されているんだ。
だからこの街にも衛兵の他に騎士団というものがいて、普段は偉ぶっているのが仕事みたいな人たちだけどさすがにこの事態では出てきてくれると思うんだけどな。
衛兵は城壁の門を素早く閉め、市民を避難誘導しはじめる。
きっと冒険者ギルドでも臨時の依頼が出ていると思うんだけど、ちょっとそれを受けてから防衛に参加するのは時間がもったいない。
僕はそのまま城壁に上った。
階段は衛兵でごった返しているので反転魔法の足場を階段にした。
これは僕専用なんで並んでもだめです。
僕は城壁の上からワイバーンを睥睨する。
視力強化がいい仕事をしてくれてその姿を鮮明に見ることができた。
1対の翼手と太い足、爬虫類のような顔。
かっこいいドラゴンだったら使役してもいいかと思ったけれど、なんかブサイクな竜だな。
スキルはどうなのかと、僕は鑑定を発動する。
固有名:なし
種族:ワイバーン
スキル:【怪力lv5】【飛行lv6】【毒針lv6】【爪硬化lv5】【火炎ブレスlv5】
20匹とも持っているスキルは同じで、スキルレベルも大差ない。
やはり厄介なのは毒針だろうか。
尻尾にヒレみたいなギザギザの針がたくさん付いているので、あれでノコギリみたいにゴリゴリして毒を流し込むのだろう。
尻尾での攻撃はかすっただけでもアウトだろう。
あとは火炎ブレス。
高空からの火炎放射なんて卑怯だよね。
あくまでも一般論では厄介な魔物なのだろうけど、ちょっと僕のペットにはいらないかな。
空を飛べる子はガルーダがいるし、毒とか卑怯なのは優秀な忍がいる。
僕の方針は決まった。
ワイバーンはすべて討伐で。
僕はワイバーンが吐き出した火炎ブレスをすべて反転魔法で跳ね返した。
「「「グルァァァァァァッ」」」
彼らは自分で火炎ブレスを吐くくせに火炎耐性を持っていない。
どこかのシーサーペントとは大違いだ。
僕が跳ね返した火炎ブレスはワイバーンを焼いた。
直撃した数匹が地に落ちる。
後何匹いるんだろう。
数えてみたら16匹。
下に落ちているのが5匹だから全部で21匹の群れか。
なんで突然この街を襲ってきたんだろうな。
僕のようなものがいくら考えたところで分かることでもないか。
そういうのはお偉い様に任せておこう。
そのために普段偉ぶってるんだしね。
僕は騎士団が出てくるまで残りのワイバーンの対処をしておこう。
全部僕が倒してもいいのだけれど、たぶん騎士団の人たちにも面子というものがあるからね。
もったいぶって出てきたら全部終わっちゃってました、だとプライドを傷つけられたと怒る人もいるだろう。
めんどくさいけれど、そういうことにも配慮しなければ人の世ではやっていけないからね。
僕は空気の読める男だよ。
しょうこりもなく飛んでくる火炎ブレスを僕は半分だけ跳ね返した。
全て跳ね返してしまうとワイバーンが全部勝手に自滅しちゃうからね。
早く騎士団来てくれないかな。
はぁ、空気の読める男は辛いわぁ。
ある盗賊は指先や足先から少しずつ肉を削がれ痛みにのたうちながら死に、またある盗賊は生きたまま内臓を引きずり出されて絶命した。
さっきまで絶望に打ちひしがれ、生きる希望の持てなかった女達は圧倒的な恐怖に身体の内に眠る生存本能が目覚め泣き叫ぶ。
そして僕たち3人は部屋の隅で胃の中身をぶちまける作業にいそしんでいた。
「「「オロロロロロゥェッ……」」」
もはやこれはこの世の地獄だ。
人間の中身ってこんな感じなんだ。
ウェップ……もう胃の中空っぽだよ。
僕はコップに凝縮スキルで水を注ぎ、口をゆすぐ。
他2名にも同様に水を渡した。
とりあえず女の子たちは服も着てないから何か着るものを出そう。
僕はブラックキューブの中から衣服の入った石箱を取り出し、中を漁る。
冬用の外套なら何着か持っているのでそれを出し、女の子たちに羽織らせていく。
恐慌状態だった女の子たちだったけれど、なんとか落ち着いてきたみたいだ。
リリー姉さんと目が合うとビクッとなっているけれど。
恐怖を感じるっていうのは死にたくないっていうことだ。
生きたいという前向きな気持ちとはまた少し違うかもしれないけれど、死にたくないっていうのも僕は立派な生きる意味だと思う。
少しでも生きる意志が湧いてきたのなら、結果オーライということにしてくれないか。
こうして僕たちの盗賊退治は、一応の成功を見せたのだった。
僕たちも一応幹部を一人ずつ殺しました。
思い出すと未だにゲロっちゃうけどね。
これで僕たちも無事にCランク冒険者と呼ばれる存在になったわけだ。
めでたしめでたし。
唐突に、平和な街であった伯爵領の領都にけたたましい警鐘の音が響き渡る。
西の空から飛来するのは20は超えようかという数の飛竜。
「敵襲!!敵襲!!」
僕は右手に屋台の串焼きを持ったままの状態でしばらく固まってしまう。
竜だって。
敵はワイバーンという種類の低位ドラゴン。
低位とはいえ竜種は竜種。
その強さはランクでいえばA。
ワイバーン1匹に対してAランクの冒険者4人パーティでやっと討伐できるというレベル。
それが20匹も群れて飛んできたら小さな町ならあっという間に蹂躙されてしまうだろう。
ここは名高き伯爵様の領都だから大丈夫だとは思うんだけどね。
この伯爵領は他国との国境に接する領だ。
つまり伯爵様はあちらの世界の貴族でいうところの、辺境伯みたいな地位であるといえる。
それゆえに伯爵でありながら、ワンランク上の武力と権力を持つことが許されているんだ。
だからこの街にも衛兵の他に騎士団というものがいて、普段は偉ぶっているのが仕事みたいな人たちだけどさすがにこの事態では出てきてくれると思うんだけどな。
衛兵は城壁の門を素早く閉め、市民を避難誘導しはじめる。
きっと冒険者ギルドでも臨時の依頼が出ていると思うんだけど、ちょっとそれを受けてから防衛に参加するのは時間がもったいない。
僕はそのまま城壁に上った。
階段は衛兵でごった返しているので反転魔法の足場を階段にした。
これは僕専用なんで並んでもだめです。
僕は城壁の上からワイバーンを睥睨する。
視力強化がいい仕事をしてくれてその姿を鮮明に見ることができた。
1対の翼手と太い足、爬虫類のような顔。
かっこいいドラゴンだったら使役してもいいかと思ったけれど、なんかブサイクな竜だな。
スキルはどうなのかと、僕は鑑定を発動する。
固有名:なし
種族:ワイバーン
スキル:【怪力lv5】【飛行lv6】【毒針lv6】【爪硬化lv5】【火炎ブレスlv5】
20匹とも持っているスキルは同じで、スキルレベルも大差ない。
やはり厄介なのは毒針だろうか。
尻尾にヒレみたいなギザギザの針がたくさん付いているので、あれでノコギリみたいにゴリゴリして毒を流し込むのだろう。
尻尾での攻撃はかすっただけでもアウトだろう。
あとは火炎ブレス。
高空からの火炎放射なんて卑怯だよね。
あくまでも一般論では厄介な魔物なのだろうけど、ちょっと僕のペットにはいらないかな。
空を飛べる子はガルーダがいるし、毒とか卑怯なのは優秀な忍がいる。
僕の方針は決まった。
ワイバーンはすべて討伐で。
僕はワイバーンが吐き出した火炎ブレスをすべて反転魔法で跳ね返した。
「「「グルァァァァァァッ」」」
彼らは自分で火炎ブレスを吐くくせに火炎耐性を持っていない。
どこかのシーサーペントとは大違いだ。
僕が跳ね返した火炎ブレスはワイバーンを焼いた。
直撃した数匹が地に落ちる。
後何匹いるんだろう。
数えてみたら16匹。
下に落ちているのが5匹だから全部で21匹の群れか。
なんで突然この街を襲ってきたんだろうな。
僕のようなものがいくら考えたところで分かることでもないか。
そういうのはお偉い様に任せておこう。
そのために普段偉ぶってるんだしね。
僕は騎士団が出てくるまで残りのワイバーンの対処をしておこう。
全部僕が倒してもいいのだけれど、たぶん騎士団の人たちにも面子というものがあるからね。
もったいぶって出てきたら全部終わっちゃってました、だとプライドを傷つけられたと怒る人もいるだろう。
めんどくさいけれど、そういうことにも配慮しなければ人の世ではやっていけないからね。
僕は空気の読める男だよ。
しょうこりもなく飛んでくる火炎ブレスを僕は半分だけ跳ね返した。
全て跳ね返してしまうとワイバーンが全部勝手に自滅しちゃうからね。
早く騎士団来てくれないかな。
はぁ、空気の読める男は辛いわぁ。
応援ありがとうございます!
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