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63.動画投稿
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森の中を1匹のオークが歩いている。
「ブヒブヒ♪(フンフン♪)」
何かいいことでもあったのか、ご機嫌な様子だ。
オークが歩くたびに、地面の枯葉がかさかさと音を立てる。
かさかさ、かさかさ、ピーン。
何かワイヤーのようなものが切れる音。
次の瞬間オークは空中に吊り上げられていた。
「ブヒヒィィ!(なんじゃこりゃあ!)」
「グギャグギャグギャ(油断大敵でござるよ)」
どこからともなく現れた黒衣のゴブリン。
「ブヒブヒブヒィ!(なんだお前は!!)」
「グギャギャグギャグギャ。グギャギャギャググギャギャ、グギャギャギャアギャ!(ふふふよくぞ聞いてくれた。拙者こそがゴブリン御庭番衆頭目、ゴブ次郎だ!)」
「ブヒブヒブヒ!(なんだって!?)」
「グギャギャギャグギャアギャ!(我が秘儀を受けてみよ!)」
「ブヒブヒブヒィ!(やめろぉ、こんな罠にかけて動けなくしてから必殺技なんて卑怯だと思わないのか!)」
「グギャギャギ!グギャギャギギグギャギャ、グギャギャ(うるさい!勝てばいいんだよ、勝てば)」
醜いオークの断末魔の声が、暗い森の中に響き渡った。
オークはこの後美味しく頂きました。
「アニキ、やばいっすねこの動画。超意味わかんねえのに再生数200万超えてますよ」
「意味わかんねえとか言うな。これでも一生懸命考えてディレクションしたんだ。あとアニキはやめろ」
「いやでもアニキ、マジうはうはっすね。単純計算で1再生0.1円と考えても20万っすよ。1個動画投稿しただけでっす」
「うーん。僕の計算ではもっといくと思ったんだけどな。やっぱ脚本かな」
僕は異世界で撮った動画を動画サイトにアップして継続的な収入を得ようと画策しているのだけれど、どうにも再生数が振るわない。
投稿から1週間で200万再生というのはなかなかのヒット動画だとは思うのだけれど、僕の予想ではもう少し再生数は多いはずだったんだ。
なにせ異世界の動画だ。
物珍しさでは他の動画を圧倒しているだろう。
ゴブリンにオークまで出演させているんだ、もう少し伸びてもおかしくはないんだけどな。
さすがに本物だと思って見る人はあまりいないかもしれないけれど、よく出来たCGとしての評価とかはあってもいいはずだ。
最近は作り物のほうが精巧で迫力があるから本物が霞んでしまっているのだろうか。
うーん。
僕は動画投稿のハウトゥ本をもう一度読み直してみる。
僕の投稿している異世界ゴブリン動画はセオリーから少しどころか大幅に外れている動画だ。
あまり使えるテクニックは無いな。
ん?英語字幕か。
これならできるかもしれない。
「拓君、君英語はできるかね?」
「英語っすか?アポーとか、アイハブアペンとか?」
「うん、君に聞いた僕が馬鹿だった」
ダメだな、英語の字幕を付けられる人材が居ない。
あまりこのちゃんねるの動画製作に外部の人間を入れたくないんだけどな。
しょうがない、僕が覚えるしかないか。
僕は本屋に向かい、英語の勉強方の本と中学英語のテキストを買った。
動画製作というのも、楽な商売ではないな。
帰り道、僕は吸い込まれるようにコンビニに立ち寄る。
買い食いが癖になってしまってなかなか辞められない。
僕は肉まんを買い、店の前で食べる。
あつあつの肉まんが冷えた身体を芯から暖めてくれる。
季節は冬。
あちらの世界ではまだ夏の終わりくらいだから、気温差があって身体がしんどい。
「あいたたたっ」
どこからかおばあさんの声がして、僕はそちらに目をやる。
向かいの店のおばあさんが店の前で重い荷物を運んでいた。
腰が痛いのか、しきりに腰を伸ばして休憩をしている。
あれではいつまで経っても荷物を運ぶことはできないだろう。
情けは人のためならず、だ。
いいことしてればいつかいいことが返ってくるかもしれない。
僕はおばあさんの荷物を持ってあげることにした。
「ありがとうね。これ、お饅頭。こんなものしかないけど食べていって」
「いただきます」
情けはすぐに返ってきた。
おばあさんはお饅頭だけではなく、お茶まで出してくれた。
熱いお茶が冷えた身体に染みる。
さっき肉まんを食べたばかりだけど、甘いものは別腹。
僕はお饅頭を頬張る。
甘いこしあんが緑茶と良く合う。
「お顔が少し日本人ばなれしてらっしゃるけれど、外国の方かしら。親切にしてくれてありがとうね」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」
うん、いいことをすると気持ちがいい。
おばあさんのお店は骨董品屋さんのようで、古い家具や小物などが所狭しと並んでいる。
僕はその中にキラリと光るものを見つけ、なんだろうかと見てみる。
そこにあるものを見て、僕はびっくりした。
それは、スキルオーブだった。
「お、おばあさん。これ、どこで?」
「え?それ?ああ、それね。それは主人が昔どこかから貰ってきたものなの。鑑定書のようなものが付いているから宝石だと思うんだけどね。鑑定書の文字も読めないし、どこの文字なのか調べてもらうにもお金がかかるでしょ?だからそのままお店においてあったんだけど、不思議と売れなくてね。綺麗な宝石なんだけど……」
確かに、スキルオーブは一見綺麗な宝石に見えるけど。
それは中にスキルの力が封じ込められているからこその輝きだ。
それにしても、鑑定証まで付いたスキルオーブがこちらの世界にあるなんて。
この店のご主人というのは、転移者なのかな。
それとも転移者から譲り受けた?
わからない。
それにしても。
スキル名:【翻訳】
詳細:エクストラスキル。未知の言語を既知の言語に翻訳することができる。
なんともタイムリーなスキルだ。
「ブヒブヒ♪(フンフン♪)」
何かいいことでもあったのか、ご機嫌な様子だ。
オークが歩くたびに、地面の枯葉がかさかさと音を立てる。
かさかさ、かさかさ、ピーン。
何かワイヤーのようなものが切れる音。
次の瞬間オークは空中に吊り上げられていた。
「ブヒヒィィ!(なんじゃこりゃあ!)」
「グギャグギャグギャ(油断大敵でござるよ)」
どこからともなく現れた黒衣のゴブリン。
「ブヒブヒブヒィ!(なんだお前は!!)」
「グギャギャグギャグギャ。グギャギャギャググギャギャ、グギャギャギャアギャ!(ふふふよくぞ聞いてくれた。拙者こそがゴブリン御庭番衆頭目、ゴブ次郎だ!)」
「ブヒブヒブヒ!(なんだって!?)」
「グギャギャギャグギャアギャ!(我が秘儀を受けてみよ!)」
「ブヒブヒブヒィ!(やめろぉ、こんな罠にかけて動けなくしてから必殺技なんて卑怯だと思わないのか!)」
「グギャギャギ!グギャギャギギグギャギャ、グギャギャ(うるさい!勝てばいいんだよ、勝てば)」
醜いオークの断末魔の声が、暗い森の中に響き渡った。
オークはこの後美味しく頂きました。
「アニキ、やばいっすねこの動画。超意味わかんねえのに再生数200万超えてますよ」
「意味わかんねえとか言うな。これでも一生懸命考えてディレクションしたんだ。あとアニキはやめろ」
「いやでもアニキ、マジうはうはっすね。単純計算で1再生0.1円と考えても20万っすよ。1個動画投稿しただけでっす」
「うーん。僕の計算ではもっといくと思ったんだけどな。やっぱ脚本かな」
僕は異世界で撮った動画を動画サイトにアップして継続的な収入を得ようと画策しているのだけれど、どうにも再生数が振るわない。
投稿から1週間で200万再生というのはなかなかのヒット動画だとは思うのだけれど、僕の予想ではもう少し再生数は多いはずだったんだ。
なにせ異世界の動画だ。
物珍しさでは他の動画を圧倒しているだろう。
ゴブリンにオークまで出演させているんだ、もう少し伸びてもおかしくはないんだけどな。
さすがに本物だと思って見る人はあまりいないかもしれないけれど、よく出来たCGとしての評価とかはあってもいいはずだ。
最近は作り物のほうが精巧で迫力があるから本物が霞んでしまっているのだろうか。
うーん。
僕は動画投稿のハウトゥ本をもう一度読み直してみる。
僕の投稿している異世界ゴブリン動画はセオリーから少しどころか大幅に外れている動画だ。
あまり使えるテクニックは無いな。
ん?英語字幕か。
これならできるかもしれない。
「拓君、君英語はできるかね?」
「英語っすか?アポーとか、アイハブアペンとか?」
「うん、君に聞いた僕が馬鹿だった」
ダメだな、英語の字幕を付けられる人材が居ない。
あまりこのちゃんねるの動画製作に外部の人間を入れたくないんだけどな。
しょうがない、僕が覚えるしかないか。
僕は本屋に向かい、英語の勉強方の本と中学英語のテキストを買った。
動画製作というのも、楽な商売ではないな。
帰り道、僕は吸い込まれるようにコンビニに立ち寄る。
買い食いが癖になってしまってなかなか辞められない。
僕は肉まんを買い、店の前で食べる。
あつあつの肉まんが冷えた身体を芯から暖めてくれる。
季節は冬。
あちらの世界ではまだ夏の終わりくらいだから、気温差があって身体がしんどい。
「あいたたたっ」
どこからかおばあさんの声がして、僕はそちらに目をやる。
向かいの店のおばあさんが店の前で重い荷物を運んでいた。
腰が痛いのか、しきりに腰を伸ばして休憩をしている。
あれではいつまで経っても荷物を運ぶことはできないだろう。
情けは人のためならず、だ。
いいことしてればいつかいいことが返ってくるかもしれない。
僕はおばあさんの荷物を持ってあげることにした。
「ありがとうね。これ、お饅頭。こんなものしかないけど食べていって」
「いただきます」
情けはすぐに返ってきた。
おばあさんはお饅頭だけではなく、お茶まで出してくれた。
熱いお茶が冷えた身体に染みる。
さっき肉まんを食べたばかりだけど、甘いものは別腹。
僕はお饅頭を頬張る。
甘いこしあんが緑茶と良く合う。
「お顔が少し日本人ばなれしてらっしゃるけれど、外国の方かしら。親切にしてくれてありがとうね」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」
うん、いいことをすると気持ちがいい。
おばあさんのお店は骨董品屋さんのようで、古い家具や小物などが所狭しと並んでいる。
僕はその中にキラリと光るものを見つけ、なんだろうかと見てみる。
そこにあるものを見て、僕はびっくりした。
それは、スキルオーブだった。
「お、おばあさん。これ、どこで?」
「え?それ?ああ、それね。それは主人が昔どこかから貰ってきたものなの。鑑定書のようなものが付いているから宝石だと思うんだけどね。鑑定書の文字も読めないし、どこの文字なのか調べてもらうにもお金がかかるでしょ?だからそのままお店においてあったんだけど、不思議と売れなくてね。綺麗な宝石なんだけど……」
確かに、スキルオーブは一見綺麗な宝石に見えるけど。
それは中にスキルの力が封じ込められているからこその輝きだ。
それにしても、鑑定証まで付いたスキルオーブがこちらの世界にあるなんて。
この店のご主人というのは、転移者なのかな。
それとも転移者から譲り受けた?
わからない。
それにしても。
スキル名:【翻訳】
詳細:エクストラスキル。未知の言語を既知の言語に翻訳することができる。
なんともタイムリーなスキルだ。
応援ありがとうございます!
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