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57.僕in東京
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眼下に見えるのは高層ビルが立ち並ぶ修学旅行で見たままの東京の街。
シロに憑依したときから思っていたけど、なんてとこに住んでるんだ。
転落防止用の柵すら無い完全に業者の人しか入らないような屋上の屋上に僕は立っていた。
あまりの高さに足がすくむ。
これどうやって下りるんだ。
四角い金属の無骨な出入り口は内側から固く施錠されているようで押しても引いてもびくともしない。
これではビルの中に入れない。
たとえ入れたとしても不審者として警察に突き出されたら終わりだ。
僕は日本どころかどこの国のパスポートも持っていない不法滞在者なのだから。
どこの国から来た、と聞かれてもなんとも答えることはできない。
どこぞのスパイ映画のようにワイヤーアクションで下りなきゃならないのだろうか。
毛魔法で同じようなことはできるかもしれないけれど、こんな高さから下りるなんて正気の沙汰じゃない。
送還場所を間違えたかもしれないな。
あらかじめ行きたい場所の近くにシロを待機させておくべきだった。
しょうがない、今日はスキルの確認だけして帰ろう。
僕は回転から順番にスキルのチェックをしていく。
持っていた独楽に回転スキルを発動。
高速で回りだす独楽。
回転はマルだな。
次は凝縮。
大気中から液体窒素を作り出す。
ビチャリと煙立つ液体が屋上の床面に落ちる。
これもマル。
僕はそんな感じでどんどんチェックしていった。
不安だった召喚スキルもちゃんと発動した。
詠唱スキルはやっぱり日本語だと効果が高まるみたいだ。
生活魔法の着火の炎があちらの言葉で詠唱したときには青い炎だったのに対して、日本語で詠唱したらさらに高温の紫色の炎になった。
スキルと日本は何か関係があるのだろうか。
英語はあまり分からないけれど今度調べて英語でも詠唱してみようかな。
日本というよりもこちらの世界とスキルが関係している可能性もあるからね。
僕はスキルのチェックを済ませてあちらの世界へと帰還する。
帰還はゴブリンを召喚して、送還で帰る。
さっき猫召喚でクロを召喚しようと思ったら違う猫が召喚されたんだよね。
世界を超えてクロを召喚するよりも、こちらの世界に居る適当な猫を召喚したほうが効率がいいと判断されたようだ。
それに比べてゴブリンはあちらの世界にしか居ないからちゃんとあちらの世界から召喚されるみたいだ。
持っててよかったゴブリン召喚。
スキル屋店主には感謝だ。
危うく帰れなくなるところだったよ。
僕はゴブ次郎を召喚した。
「グギャギャ……」
「そうだね。こちらの世界は空気が良くないね」
ゴブ次郎はこちらの世界の空気の匂いがあまり好きじゃないみたいだ。
僕もあまり好きじゃないかな。
今度はシロに少し遠出してもらってもう少し田舎に行こうかな。
僕はゴブ次郎と一緒にあちらの世界に戻った。
一瞬のブラックアウトの後に、見慣れた奴隷牢の風景が目に飛び込んでくる。
「おかえり……」
「ただいま」
何気ない一言だけれど、今はそれが嬉しい。
惜しむらくはおかえりって言ったのがリリー姉さんじゃなくて会長だということだ。
リリー姉さんは何故か得意げな顔でうんうんと頷いている。
良く帰った、みたいな感じなのかな。
男らしすぎるよ。
ミゲル君はあわあわしている。
君には癒されるよ。
僕は壁際に座り、異世界の話をする。
とても高い建物がたくさんあったこと、下りられなかったこと、あちらの世界でもスキルが使えたこと。
僕は異世界転生者だということを話す気はないのできっと僕も異世界に驚いているとみんなは思っているだろう。
それでいい。
今度異世界に行ったときは何かお土産を買ってくると言って僕の話は終わりだ。
お土産、買えるかな。
何か買うためには、あちらのお金を手に入れる必要がある。
そのためのアイデアが僕には思いつかなかった。
自販機の下あさるとかかな。
それとも普通に金貨を換金するとか?
でも身分証が無いと貴金属とかは換金できないと聞いたことがある。
何か良い方法は無いものか。
次の日。
今日は僕も仕事は休みだ。
すでに坑道内の大まかな危険チェックは終わったので、あとは管理官待ちだという。
奴隷も職員も今のままの数では前と同じような規模の採掘はできないしね。
きっと大規模な人員の補充があるだろう。
それにも時間がかかりそうなのであと2、3日は休みがありそうで嬉しい。
今日は朝から異世界に行く。
前回の反省を踏まえて、事前に送還場所を選定しておかなければなるまい。
僕はシロに憑依して東京の街を飛び回る。
うーん、やっぱり東京の街はどこに行っても人ばかりだ。
人に見られない場所が見当たらない。
僕はやむなく少し田舎に移動する。
東京といっても23区を離れればそこまで都会じゃない。
少し距離を飛ぶので、途中何度も休憩をはさみながら飛行する。
日本の空は異世界と違って鳥が飛ぶような高さでも障害物があったり、さらに高度を上げても飛行機やヘリコプターにぶつかる危険性はあるしで少し緊張感がある。
鳥もなかなか大変だ。
異世界には飛行する巨大生物がいるのであちらもあちらで大変なんだけどね。
僕はそんなことを考えつつも、良い感じの地形を見つけて降り立った。
森の中に電波塔が建っている場所なのだけれど、開けているし草も刈られている。
街まで1キロくらいだし、人目もない。
ここがいいだろう。
もうシロにはここを拠点してもらいたいくらいだけど、都会で残飯を主食としているシティ派のシロにいきなり山で餌を取って暮らせというのも酷かもしれない。
僕はいつものように召喚と送還を駆使してこちらの世界に降り立つ。
自然豊かで、なかなか空気が綺麗なところだ。
東京っていってもこんなところもあるんだな。
僕は街の方向に向かって歩き出した。
シロに憑依したときから思っていたけど、なんてとこに住んでるんだ。
転落防止用の柵すら無い完全に業者の人しか入らないような屋上の屋上に僕は立っていた。
あまりの高さに足がすくむ。
これどうやって下りるんだ。
四角い金属の無骨な出入り口は内側から固く施錠されているようで押しても引いてもびくともしない。
これではビルの中に入れない。
たとえ入れたとしても不審者として警察に突き出されたら終わりだ。
僕は日本どころかどこの国のパスポートも持っていない不法滞在者なのだから。
どこの国から来た、と聞かれてもなんとも答えることはできない。
どこぞのスパイ映画のようにワイヤーアクションで下りなきゃならないのだろうか。
毛魔法で同じようなことはできるかもしれないけれど、こんな高さから下りるなんて正気の沙汰じゃない。
送還場所を間違えたかもしれないな。
あらかじめ行きたい場所の近くにシロを待機させておくべきだった。
しょうがない、今日はスキルの確認だけして帰ろう。
僕は回転から順番にスキルのチェックをしていく。
持っていた独楽に回転スキルを発動。
高速で回りだす独楽。
回転はマルだな。
次は凝縮。
大気中から液体窒素を作り出す。
ビチャリと煙立つ液体が屋上の床面に落ちる。
これもマル。
僕はそんな感じでどんどんチェックしていった。
不安だった召喚スキルもちゃんと発動した。
詠唱スキルはやっぱり日本語だと効果が高まるみたいだ。
生活魔法の着火の炎があちらの言葉で詠唱したときには青い炎だったのに対して、日本語で詠唱したらさらに高温の紫色の炎になった。
スキルと日本は何か関係があるのだろうか。
英語はあまり分からないけれど今度調べて英語でも詠唱してみようかな。
日本というよりもこちらの世界とスキルが関係している可能性もあるからね。
僕はスキルのチェックを済ませてあちらの世界へと帰還する。
帰還はゴブリンを召喚して、送還で帰る。
さっき猫召喚でクロを召喚しようと思ったら違う猫が召喚されたんだよね。
世界を超えてクロを召喚するよりも、こちらの世界に居る適当な猫を召喚したほうが効率がいいと判断されたようだ。
それに比べてゴブリンはあちらの世界にしか居ないからちゃんとあちらの世界から召喚されるみたいだ。
持っててよかったゴブリン召喚。
スキル屋店主には感謝だ。
危うく帰れなくなるところだったよ。
僕はゴブ次郎を召喚した。
「グギャギャ……」
「そうだね。こちらの世界は空気が良くないね」
ゴブ次郎はこちらの世界の空気の匂いがあまり好きじゃないみたいだ。
僕もあまり好きじゃないかな。
今度はシロに少し遠出してもらってもう少し田舎に行こうかな。
僕はゴブ次郎と一緒にあちらの世界に戻った。
一瞬のブラックアウトの後に、見慣れた奴隷牢の風景が目に飛び込んでくる。
「おかえり……」
「ただいま」
何気ない一言だけれど、今はそれが嬉しい。
惜しむらくはおかえりって言ったのがリリー姉さんじゃなくて会長だということだ。
リリー姉さんは何故か得意げな顔でうんうんと頷いている。
良く帰った、みたいな感じなのかな。
男らしすぎるよ。
ミゲル君はあわあわしている。
君には癒されるよ。
僕は壁際に座り、異世界の話をする。
とても高い建物がたくさんあったこと、下りられなかったこと、あちらの世界でもスキルが使えたこと。
僕は異世界転生者だということを話す気はないのできっと僕も異世界に驚いているとみんなは思っているだろう。
それでいい。
今度異世界に行ったときは何かお土産を買ってくると言って僕の話は終わりだ。
お土産、買えるかな。
何か買うためには、あちらのお金を手に入れる必要がある。
そのためのアイデアが僕には思いつかなかった。
自販機の下あさるとかかな。
それとも普通に金貨を換金するとか?
でも身分証が無いと貴金属とかは換金できないと聞いたことがある。
何か良い方法は無いものか。
次の日。
今日は僕も仕事は休みだ。
すでに坑道内の大まかな危険チェックは終わったので、あとは管理官待ちだという。
奴隷も職員も今のままの数では前と同じような規模の採掘はできないしね。
きっと大規模な人員の補充があるだろう。
それにも時間がかかりそうなのであと2、3日は休みがありそうで嬉しい。
今日は朝から異世界に行く。
前回の反省を踏まえて、事前に送還場所を選定しておかなければなるまい。
僕はシロに憑依して東京の街を飛び回る。
うーん、やっぱり東京の街はどこに行っても人ばかりだ。
人に見られない場所が見当たらない。
僕はやむなく少し田舎に移動する。
東京といっても23区を離れればそこまで都会じゃない。
少し距離を飛ぶので、途中何度も休憩をはさみながら飛行する。
日本の空は異世界と違って鳥が飛ぶような高さでも障害物があったり、さらに高度を上げても飛行機やヘリコプターにぶつかる危険性はあるしで少し緊張感がある。
鳥もなかなか大変だ。
異世界には飛行する巨大生物がいるのであちらもあちらで大変なんだけどね。
僕はそんなことを考えつつも、良い感じの地形を見つけて降り立った。
森の中に電波塔が建っている場所なのだけれど、開けているし草も刈られている。
街まで1キロくらいだし、人目もない。
ここがいいだろう。
もうシロにはここを拠点してもらいたいくらいだけど、都会で残飯を主食としているシティ派のシロにいきなり山で餌を取って暮らせというのも酷かもしれない。
僕はいつものように召喚と送還を駆使してこちらの世界に降り立つ。
自然豊かで、なかなか空気が綺麗なところだ。
東京っていってもこんなところもあるんだな。
僕は街の方向に向かって歩き出した。
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