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46.エナジードレイン

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「グ、グギャ……」

 髪でぐるぐる巻きにされたゴブリンが苦しそうに呻き声をあげる。
 すまんなゴブリン。
 だけどな、生き物っていうのは他の生き物を殺さないと生きていけないんだ。
 僕はお前に恨むなと言う資格は無いけれど、やっぱり出来ることなら恨まないで欲しいな。
 僕はゴブリンの首にそっと触れ、エナジードレインを発動する。
 エナジードレインは吸われていることに気付かないくらいゆっくりと生命力を吸い取るスキルだけれど、僕の場合は【スキル効果10倍】の効果によってその10倍のスピードで生命力を吸うことができる。
 1分ほど吸い続けただけで、ゴブリンは眠るように息を引き取った。
 僕はブラックキューブスキルの空いている黒箱にゴブリンの遺体を収納し、左腕を確認してみる。
 腫れが引き、完全に骨が繋がっているようだ。
 ぐっと力を入れても、振り回しても全く痛まない。
 これはすごい効力だ。
 しかし腕の骨折を治すためにゴブリン1匹分の生命力を使っているというのはいささか燃費が悪いのではないだろうか。
 実際にはどの段階で腕が治っていたのか分からないからゴブリン1匹丸まる吸い殺すことはなかったのかもしれない。
 余った生命力はどうなるのだろうか。
 身体の中にリザーブしておけるならいいのだけれど、アニメや小説の中では肉体の再生が暴走して死んだキャラクターが多数存在しているので安心できない。
 回復しかできないキャラクターの攻撃手段として、回復を通り越して細胞が死滅するみたいのも多いからね。
 僕としては生命力はいっぱいあったらあっただけ良いと思っているんだけど、検証は慎重に行ったほうがいいかもしれない。

「お、おい、もういいか?」

 会長が手持ち無沙汰みたいだから検証は後回しだな。
 僕は会長とミゲル君の影から出てもう済んだことを伝える。

「え?これ治ったのか?回復系のスキルか?」

「うん、そう」

「すごいだな。回復系のスキルまで持ってるだなんて。オラなんて身体強化だけしか持ってないのに」

「ミゲル君町に行ったことある?スキルってお金出せば買えるんだよ?」

「え!?知らなかっただ!!」

 ミゲル君が盗賊になったのは、世間を知らなすぎたということもあるようだな。
 しかし犯した罪は罪として罰を受けなくてはいけない。
 僕らが出ることになったときに、反省しているようだったら一緒に出れるようになんとか頑張ってみようかな。
 幸いにもスタークに取られたのは身につけていた金貨だけで、ブラックキューブの中にはオーク狩りで貯めこんだ金貨が500枚くらい入っている。
 僕が自由になれたら買い取ってあげてもいいし、もし僕がリリー姉さんに買われる立場だったとしたら姉さんにお金を渡して一緒に買い取ってもらえるように頼もう。
 さて、そろそろ姉さんたちの戦いの決着がつくかな。
 お腹が減ったのでそろそろ終わりにしてほしいというのが本音だ。
 ミゲル君に肩車してもらって姉さんのほうを覗き見ると、今ちょうど最後の一人を床に沈めたところだった。
 これで立っているのはリリー姉さん一人だけ。
 完全にこの牢の支配者が決まった瞬間だ。

「あーお腹空いた……」

 僕もだ。
 そこにちょうどよく到着する夕飯。
 
「おーい飯だぞ!!」

 そう言って牢番が配っていったご飯は、懐かしの黒パンと塩スープだった。
 嬉しすぎて涙が出るね。
 やっぱりあの時味覚操作スキルを手に入れておくんだった。





 さて、翌日である。
 さすがの姉さんでも夜まで警戒しながら寝ることはできないってことで、僕ら特別奴隷にミゲル君を加えた4人チームは協力して警戒しながら纏まって寝た。
 纏まって寝るっていうことは当然リリー姉さんも近くで寝てるというわけで、意識しちゃって全然眠れなかったよ。
 いくら幼女の見た目をしているとはいっても19歳だよ。
 年上だよ。
 合法ロリだよ。
 眠れない夜だった。
 どうにも僕は年上というフレーズに弱いらしい。
 リリー姉さんは確かに見た目幼女だけど、中身は普通に大人だし、エロいしでなんとなく意識してしまうんだよね。
 昨日はありったけの勇気を振り絞って好みのタイプを聞いてみたのだけれど、あんたは微妙にタイプじゃないって言われてしまった。
 ショックが大きい。
 ドワーフの女性はミゲル君のようなゴリマッチョのパワーファイターが一般的に好みらしいんだけれど、姉さんはそこから少し外れて剣の技量で勝負するようなテクニカルなタイプが好みらしい。
 僕はゴリマッチョでもないし、テクニカルもない。
 だから僕はあまりタイプではないんだけれど、毛魔法で犯罪奴隷たちをなぎ払ったときは少しだけゾクゾクしたとも言っていた。
 これってワンチャンあるんだろうか。
 わからん。
 その後おふざけ半分にあの毛魔法でガチガチに縛られてヤられたとか口走っていたから冗談なのか本気なのか全く分からない。
 下ネタはコミュニケーション検定上級者の使うテクニックであるからして、僕のような10級でうろついている人間はその返し方すら分からない。
 うーん、英語の教科書のマイクも下ネタに対する返答までは教えてくれていないからな。
 そんなこんなで悶々としたまま夜が明けてしまったというわけだ。
 今日も朝から猫に憑依して坑道に入らなくてはならないというのに。
 
「ニャー……」

 かわいいかわいい。
 本当に、お前と会長だけが僕の癒しだよ。
 僕は猫の顎をワサワサした。
 ゴロゴロ。
 うん、可愛い。


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