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10.エルフの露店商
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「無視してんじゃないわよ!」
プンスカ怒りながら僕の腕を引っぱって自分の露店に連れて行こうとする女性。
僕はその女性のあまりの美しさに目を奪われてされるがままだ。
キラキラと光る白に近い銀髪に、緑の瞳、そして尖った耳。
エルフだ。
一部の薄い本ではエロフとも呼ばれている種族。
その一番の特徴は尖った長耳とその容姿の美しさにある。
男も女もとにかくイケメン美女ばかりなのだ。
先天的に魔法スキルを宿しやすく、エルフに生まれただけで勝ち組といえるだろう。
そんなエルフが僕に何の用だろうか。
凡百でモブ顔、人衆に埋もれるのが得意な僕を隣に並べて自分の美しさを際立てようという魂胆なら別の人にしてほしい。
というかなんでエルフがこんなところで露店商なんてやっているのだろうか。
エルフはその美しさと先天的な魔法スキルの発現率の高さから、古来より人間に狩られて奴隷にされまくってきた。
だからエルフ達は基本的に人間が嫌いだし、あまり人里には姿を現さない。
弓が得意だし、魔法スキルを持っていればかなり強いので冒険者をやっているエルフの人はたまにいるみたいだけれど、このエルフの女性のように人間の街で露店商をやっているなんてかなりのレアケースだ。
「まったく、人間達はエルフだからってすぐ差別するんだから!」
エルフの女性はよっぽど誰かに鬱憤をぶつけたかったのか、僕を露店まで連れて行くと椅子に座らせ愚痴をこぼし始めた。
エルフの女性、シルキーさんはエルフの中でも変わり者らしい。
閉鎖的で変化の少ないエルフの里が退屈でしょうがなかったシルキーさんは、里を出て人の街に行くことを決意。
色々な街に行って物を仕入れたり売ったりする行商人という仕事が楽しそうだったのでやってみることに。
しかしどこの街に行ってもエルフだということで差別されて仕入れができなかったりいい場所に露店が出せなかったりするそうだ。
この街は割とエルフ差別が少ないけれど、やっぱり露店の場所はいいところがもらえずこんな路地裏で店を出しているらしい。
「へー……」
「ちょっと、ちゃんと聞いてた!?私は差別されているのよ!!」
そんなこと言われても僕にどうしろっていうんだ。
「何か買ってよ。ね?お願い」
いきなり猫なで声になった。
うーん、苦手なタイプの女性だ。
顔は見とれちゃうくらい綺麗だけど。
とりあえず商品だけでも見せてもらおう。
何か欲しいものがあるかもしれないし。
僕はシルキーさんの商品に目を向ける。
全体的に雑貨が多いかな。
変な形の鍋とか、変な匂いのする香水とか。
仕入れのセンスがないな。
さっきの仕入れを断られるとかいう話はきっと話半分に聞いておいたほうがいいから、たぶんシルキーさんのセンスがないんだよな。
「ね?物はいいものばかりなのよ。場所さえよければ私の商品だって即完売なんだから」
これは絶望的ですね。
不良在庫を掴まされているという自覚がない。
ろくな商品はないけれど、それでも全てが全てローセンスな商品ばかりではないだろうと僕は目を皿のようにして掘り出し物を探す。
うん?これはスキルオーブ?
「スキルオーブもあるんですね」
「ええ、私が厳選した掘り出し物ばかりよ。すべてエクストラスキルよ」
あまり期待はしないでおこうか。
ちなみにエクストラスキルとはスキルレベルが存在しないスキルのことだ。
魔眼や召喚術などの特殊なスキルが多い。
迷宮の宝箱から出る確率が低く、レアリティが高いものが多い。
ただし、強力なスキルばかりではないことを僕はよく知っている。
こう見えても僕は魔眼持ちだからね。
ああ、シルキーさんはちゃんと女性ですね。
ホントこのスキル、役に立ったところが見てみたい。
諦めてスキルオーブを見ていこうか。
スキル名:【異世界召喚(スプーン)】
詳細:エクストラスキル。異世界のスプーンを召喚できる。
スキル名:【魔眼(あくび)】
詳細:エクストラスキル。この魔眼で見られたものはあくびが出る。
スキル名:【植物鑑定(産地)】
詳細:植物を見るとどこで育ったものなのか浮かび上がる。浮かび上がる言語は古代語。
スキル名:【異世界召喚(鳩)】
詳細:エクストラスキル。異世界の鳩を召喚できる。
スキル名:【チャージ(魔法)】
詳細:エクストラスキル。魔法を一種類だけチャージすることができる。
スキル名:【?????10倍】
詳細:エクストラスキル。詳細不明。
意外にも気になるスキルが多いな。
まず気になるのが異世界召喚のスキル。
召喚できるものがスプーンと鳩か。
普通のスプーンと鳩だったらゴミスキルなんだけど、異世界だからな。
異世界から召喚する過程で、チートなスプーンや鳩になる可能性もある。
待てよ、詳細情報があるということは商業ギルド本部には過去にこのスキルを持っていた人のデータがあるということだ。
「シルキーさん。この異世界召喚ってさ……」
「そうよ!異世界から物や生き物を召喚できるスキルなんて超レアなんだから!!」
いや、そうじゃなくて。
「普通のスプーンと鳩?」
「そうよ!」
ゴミスキル決定だな。
過去にこのスキルを持っていた人がチートに気付いていない可能性もあるけど。
そんなこと言い出したらどれもこれもだ。
次に気になるのはこの【チャージ(魔法)】かな。
魔法を一種類チャージできる。
その情報じゃよくわからないけど、RPGとかにはこの手のスキルがあることも多かったから僕にはなんとなく分かる。
これはたぶん魔法の威力を高めるスキルなんじゃないかな。
だとしたら、切り札に乏しい僕の切り札になるかもしれない。
「このスキルオーブって1個いくらなの?」
「銀貨10枚よ!」
うん、無理だ。
「今回は縁がなかったということで……」
「待って!待ってよ!!銀貨3枚!3枚でいいわ!!いえ、もう銀貨1枚でいいので恵んでくださいおねがいします……」
ふーん、銀貨1枚か。
安いな。
今使えるお金は……緊急時のためのお金が銀貨3枚。
銀貨3枚くらい今の僕なら2日で稼げる額だし、使ってもいいかな。
この最後の【?????10倍】っていうのも気になるし。
「シルキーさん。このスキルって……」
「ああ、それね。それは以前持っていた人が1人だけしか記録されていない珍しいスキルよ。でもスキルの効果は不明なの。10倍ってところだけは読めるけれどその他は未知の単語で読めない。何が10倍になるのか分からないのよ。少なくとも力が10倍になるとかそういうスキルではないわ。買ってくれるの?ね?珍しいスキル……」
なるほど。
これはチートの匂いがしないでもない。
10倍と聞いて僕が思い浮かべたのは成長系チートの代名詞ともいえるあれだ。
でもこの世界には経験値もレベルもない。
ということは……。
「このスキルとこのスキル、あとこの湾曲しすぎて使い辛そうなナイフも買うよ」
「ありがとうございますありがとうございます。あんたが神よ!!」
大げさだなぁ。
僕はチートの匂いがするスキル2つと変なナイフを買って変なエルフの露店を後にした。
プンスカ怒りながら僕の腕を引っぱって自分の露店に連れて行こうとする女性。
僕はその女性のあまりの美しさに目を奪われてされるがままだ。
キラキラと光る白に近い銀髪に、緑の瞳、そして尖った耳。
エルフだ。
一部の薄い本ではエロフとも呼ばれている種族。
その一番の特徴は尖った長耳とその容姿の美しさにある。
男も女もとにかくイケメン美女ばかりなのだ。
先天的に魔法スキルを宿しやすく、エルフに生まれただけで勝ち組といえるだろう。
そんなエルフが僕に何の用だろうか。
凡百でモブ顔、人衆に埋もれるのが得意な僕を隣に並べて自分の美しさを際立てようという魂胆なら別の人にしてほしい。
というかなんでエルフがこんなところで露店商なんてやっているのだろうか。
エルフはその美しさと先天的な魔法スキルの発現率の高さから、古来より人間に狩られて奴隷にされまくってきた。
だからエルフ達は基本的に人間が嫌いだし、あまり人里には姿を現さない。
弓が得意だし、魔法スキルを持っていればかなり強いので冒険者をやっているエルフの人はたまにいるみたいだけれど、このエルフの女性のように人間の街で露店商をやっているなんてかなりのレアケースだ。
「まったく、人間達はエルフだからってすぐ差別するんだから!」
エルフの女性はよっぽど誰かに鬱憤をぶつけたかったのか、僕を露店まで連れて行くと椅子に座らせ愚痴をこぼし始めた。
エルフの女性、シルキーさんはエルフの中でも変わり者らしい。
閉鎖的で変化の少ないエルフの里が退屈でしょうがなかったシルキーさんは、里を出て人の街に行くことを決意。
色々な街に行って物を仕入れたり売ったりする行商人という仕事が楽しそうだったのでやってみることに。
しかしどこの街に行ってもエルフだということで差別されて仕入れができなかったりいい場所に露店が出せなかったりするそうだ。
この街は割とエルフ差別が少ないけれど、やっぱり露店の場所はいいところがもらえずこんな路地裏で店を出しているらしい。
「へー……」
「ちょっと、ちゃんと聞いてた!?私は差別されているのよ!!」
そんなこと言われても僕にどうしろっていうんだ。
「何か買ってよ。ね?お願い」
いきなり猫なで声になった。
うーん、苦手なタイプの女性だ。
顔は見とれちゃうくらい綺麗だけど。
とりあえず商品だけでも見せてもらおう。
何か欲しいものがあるかもしれないし。
僕はシルキーさんの商品に目を向ける。
全体的に雑貨が多いかな。
変な形の鍋とか、変な匂いのする香水とか。
仕入れのセンスがないな。
さっきの仕入れを断られるとかいう話はきっと話半分に聞いておいたほうがいいから、たぶんシルキーさんのセンスがないんだよな。
「ね?物はいいものばかりなのよ。場所さえよければ私の商品だって即完売なんだから」
これは絶望的ですね。
不良在庫を掴まされているという自覚がない。
ろくな商品はないけれど、それでも全てが全てローセンスな商品ばかりではないだろうと僕は目を皿のようにして掘り出し物を探す。
うん?これはスキルオーブ?
「スキルオーブもあるんですね」
「ええ、私が厳選した掘り出し物ばかりよ。すべてエクストラスキルよ」
あまり期待はしないでおこうか。
ちなみにエクストラスキルとはスキルレベルが存在しないスキルのことだ。
魔眼や召喚術などの特殊なスキルが多い。
迷宮の宝箱から出る確率が低く、レアリティが高いものが多い。
ただし、強力なスキルばかりではないことを僕はよく知っている。
こう見えても僕は魔眼持ちだからね。
ああ、シルキーさんはちゃんと女性ですね。
ホントこのスキル、役に立ったところが見てみたい。
諦めてスキルオーブを見ていこうか。
スキル名:【異世界召喚(スプーン)】
詳細:エクストラスキル。異世界のスプーンを召喚できる。
スキル名:【魔眼(あくび)】
詳細:エクストラスキル。この魔眼で見られたものはあくびが出る。
スキル名:【植物鑑定(産地)】
詳細:植物を見るとどこで育ったものなのか浮かび上がる。浮かび上がる言語は古代語。
スキル名:【異世界召喚(鳩)】
詳細:エクストラスキル。異世界の鳩を召喚できる。
スキル名:【チャージ(魔法)】
詳細:エクストラスキル。魔法を一種類だけチャージすることができる。
スキル名:【?????10倍】
詳細:エクストラスキル。詳細不明。
意外にも気になるスキルが多いな。
まず気になるのが異世界召喚のスキル。
召喚できるものがスプーンと鳩か。
普通のスプーンと鳩だったらゴミスキルなんだけど、異世界だからな。
異世界から召喚する過程で、チートなスプーンや鳩になる可能性もある。
待てよ、詳細情報があるということは商業ギルド本部には過去にこのスキルを持っていた人のデータがあるということだ。
「シルキーさん。この異世界召喚ってさ……」
「そうよ!異世界から物や生き物を召喚できるスキルなんて超レアなんだから!!」
いや、そうじゃなくて。
「普通のスプーンと鳩?」
「そうよ!」
ゴミスキル決定だな。
過去にこのスキルを持っていた人がチートに気付いていない可能性もあるけど。
そんなこと言い出したらどれもこれもだ。
次に気になるのはこの【チャージ(魔法)】かな。
魔法を一種類チャージできる。
その情報じゃよくわからないけど、RPGとかにはこの手のスキルがあることも多かったから僕にはなんとなく分かる。
これはたぶん魔法の威力を高めるスキルなんじゃないかな。
だとしたら、切り札に乏しい僕の切り札になるかもしれない。
「このスキルオーブって1個いくらなの?」
「銀貨10枚よ!」
うん、無理だ。
「今回は縁がなかったということで……」
「待って!待ってよ!!銀貨3枚!3枚でいいわ!!いえ、もう銀貨1枚でいいので恵んでくださいおねがいします……」
ふーん、銀貨1枚か。
安いな。
今使えるお金は……緊急時のためのお金が銀貨3枚。
銀貨3枚くらい今の僕なら2日で稼げる額だし、使ってもいいかな。
この最後の【?????10倍】っていうのも気になるし。
「シルキーさん。このスキルって……」
「ああ、それね。それは以前持っていた人が1人だけしか記録されていない珍しいスキルよ。でもスキルの効果は不明なの。10倍ってところだけは読めるけれどその他は未知の単語で読めない。何が10倍になるのか分からないのよ。少なくとも力が10倍になるとかそういうスキルではないわ。買ってくれるの?ね?珍しいスキル……」
なるほど。
これはチートの匂いがしないでもない。
10倍と聞いて僕が思い浮かべたのは成長系チートの代名詞ともいえるあれだ。
でもこの世界には経験値もレベルもない。
ということは……。
「このスキルとこのスキル、あとこの湾曲しすぎて使い辛そうなナイフも買うよ」
「ありがとうございますありがとうございます。あんたが神よ!!」
大げさだなぁ。
僕はチートの匂いがするスキル2つと変なナイフを買って変なエルフの露店を後にした。
応援ありがとうございます!
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