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22.籠城
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「籠城するならば、やはり学生食堂ですね。侵入経路が限られていますし、なにより水や食料があります」
「お前は戦国時代にかぶれすぎなんだよ。何日も籠城するわけじゃあるまいし、水や食料まではそこまで必要ないだろ」
だが、エルザの言う通り地形的には学食が籠城戦に適しているか。
水や食料はそこまで必要ないが、あればあったで生徒たちの緊張を少しは解すことができるだろう。
今の状況で一番困るのはやぶれかぶれになって勝手な行動をとられることだ。
個人的には勝手な行動をとったやつは勝手に死んでくれても構わないと思うが、社会通念的には助ける力があるなら助けなければならない。
そうなれば非力な俺はエルザに頼らざるを得ないだろう。
必然的に、エルザの超常的な力を晒すことになる。
エルザならば洗脳なり記憶操作なりで後でなんとでもなるだろうが手間が増えることに変わりはない。
生徒のメンタルをコントロールすることで後の手間を減らせるのならばやったほうがいい。
「よし、この教室から学食までのブロックを制圧する。エルザ、頼む」
「かしこまりました」
「あ、あの、制圧するってどういう……」
俺とエルザが今後の計画を話し合っていると、クラスメイトのモブAが話しかけてきた。
初めてクラスメイトに話しかけられたな。
だが今はそれどころではない。
このごたごたが終わった後でぜひもう一度話しかけて欲しい。
「中村、頼む」
「わかった。みんな、四宮はこれから学食までのブロックに存在する教室を制圧しながら学食へ向かい、そこに陣を構えてテロリストから籠城するつもりみたいだ。大人しく指示に従ってほしい」
俺とエルザの話を横で聞いていた中村は、これから俺たちがとる行動を理解していた。
説明もわかりやすい。
なにより声がでかい。
こいつは案外上に立つ素質のある人間なのかもしれない。
部活のキャプテンタイプだものな。
廊下に出たエルザは隣の教室に素早く入り込むと数秒でテロリスト共を血祭にあげ、生徒たちを解放した。
学食までのブロックに存在する教室はあと4つ。
この作戦は時間との勝負だ。
俺がテロリスト共だったらまず生徒や教員、テナントで働いている職員たちをすべて一か所に集めるだろう。
そうしなければ自分たちも分散してしまうからな。
120人も人員がいても分散していればエルザがやったように各個撃破されてしまう可能性が出てきてしまう。
銃を持った人間を6人倒すというのは非常に難しいが、絶対にできないというわけではないからな。
だが120人となると運や奇策でどうにかなる人数ではない。
自分たちの人員を分散しないためにも、テロリストたちは必ず集結しようとする。
だからこそ、奴らが分散している今がチャンスなのだ。
奴らが生徒たちを連れて教室から出てくるまでのわずかな時間が。
エルザは各個撃破でテロリスト共を倒していき、ついには最後の教室にたどり着く。
そこは雪村がいるクラスだ。
すでにエルザは教室に踊り込み、テロリスト共と交戦を開始している。
俺は奴らがエルザに注意を向けている間に教室内に入り込み、雪村を探した。
雪村は背が低いにもかかわらず、一番後ろの席に座っていた。
しかし前の人の背中で黒板が見えないなどということはなさそうだ。
なぜなら雪村の座っている席だけ、一段高くなっているのだから。
殿様かよ。
俺だったらあんな席で授業を受けるのは御免だ。
雪村は教室に入ってきたエルザを見て少しほっとした顔を浮かべていた。
先日の誘拐事件でのエルザの引き起こす超常現象を見ていた雪村は、彼女がテロリストなんかに相手にできる存在ではないことを知っている。
なにせ魔界におわすという3柱の魔王を2柱召喚しても勝てるかどうかは五分以下なのだ。
テロリストなんぞが何兆人集まったところでエルザにその力が及ぶことはありえない。
俺は若干弛緩する雪村へと近づいていった。
「おい、雪村」
「あ、要君。これってやっぱりあの書類がらみのテロなのかな……」
「今はそれはちょっと置いておけ。それよりもあまり時間がない。生徒たちに命令して学食に向かわせてくれ。お前の命令ならみんな聞くだろ」
「え、わ、わかった!」
雪村はなにやら突如として使命感に燃えだした。
君のやる気スイッチがどこにあるのかわからない。
「みんな、早く学食へ!!」
「雪村君が言うなら間違いないわ!」
「雪村君の言うとおりにしよう!!」
「雪村君の言うとおりにしない意味がない!!」
これは一種の宗教だな。
皆雪村の言うことを疑うことなく一糸乱れぬ動きで学食へと逃げ込んでいく。
食堂内はすでにエルザが制圧済みだ。
厨房で働いていたおばちゃんたちも全員無事だった。
小腹が減れば軽食くらいは作ってくれることだろう。
「よし、学級委員はクラスが全員そろっているか確認だ!力に自信がある奴らはバリケードを作るのを手伝ってくれ!」
中村がなかなかに的確な指示を出していく。
あいつはなかなかいい人材かもな。
大企業に入社して成り上がりたくてこの学園に入学したらしいが、あいつなら案外いいところまでいくかもな。
島〇作ばりに出世していく予感がする。
「お前は戦国時代にかぶれすぎなんだよ。何日も籠城するわけじゃあるまいし、水や食料まではそこまで必要ないだろ」
だが、エルザの言う通り地形的には学食が籠城戦に適しているか。
水や食料はそこまで必要ないが、あればあったで生徒たちの緊張を少しは解すことができるだろう。
今の状況で一番困るのはやぶれかぶれになって勝手な行動をとられることだ。
個人的には勝手な行動をとったやつは勝手に死んでくれても構わないと思うが、社会通念的には助ける力があるなら助けなければならない。
そうなれば非力な俺はエルザに頼らざるを得ないだろう。
必然的に、エルザの超常的な力を晒すことになる。
エルザならば洗脳なり記憶操作なりで後でなんとでもなるだろうが手間が増えることに変わりはない。
生徒のメンタルをコントロールすることで後の手間を減らせるのならばやったほうがいい。
「よし、この教室から学食までのブロックを制圧する。エルザ、頼む」
「かしこまりました」
「あ、あの、制圧するってどういう……」
俺とエルザが今後の計画を話し合っていると、クラスメイトのモブAが話しかけてきた。
初めてクラスメイトに話しかけられたな。
だが今はそれどころではない。
このごたごたが終わった後でぜひもう一度話しかけて欲しい。
「中村、頼む」
「わかった。みんな、四宮はこれから学食までのブロックに存在する教室を制圧しながら学食へ向かい、そこに陣を構えてテロリストから籠城するつもりみたいだ。大人しく指示に従ってほしい」
俺とエルザの話を横で聞いていた中村は、これから俺たちがとる行動を理解していた。
説明もわかりやすい。
なにより声がでかい。
こいつは案外上に立つ素質のある人間なのかもしれない。
部活のキャプテンタイプだものな。
廊下に出たエルザは隣の教室に素早く入り込むと数秒でテロリスト共を血祭にあげ、生徒たちを解放した。
学食までのブロックに存在する教室はあと4つ。
この作戦は時間との勝負だ。
俺がテロリスト共だったらまず生徒や教員、テナントで働いている職員たちをすべて一か所に集めるだろう。
そうしなければ自分たちも分散してしまうからな。
120人も人員がいても分散していればエルザがやったように各個撃破されてしまう可能性が出てきてしまう。
銃を持った人間を6人倒すというのは非常に難しいが、絶対にできないというわけではないからな。
だが120人となると運や奇策でどうにかなる人数ではない。
自分たちの人員を分散しないためにも、テロリストたちは必ず集結しようとする。
だからこそ、奴らが分散している今がチャンスなのだ。
奴らが生徒たちを連れて教室から出てくるまでのわずかな時間が。
エルザは各個撃破でテロリスト共を倒していき、ついには最後の教室にたどり着く。
そこは雪村がいるクラスだ。
すでにエルザは教室に踊り込み、テロリスト共と交戦を開始している。
俺は奴らがエルザに注意を向けている間に教室内に入り込み、雪村を探した。
雪村は背が低いにもかかわらず、一番後ろの席に座っていた。
しかし前の人の背中で黒板が見えないなどということはなさそうだ。
なぜなら雪村の座っている席だけ、一段高くなっているのだから。
殿様かよ。
俺だったらあんな席で授業を受けるのは御免だ。
雪村は教室に入ってきたエルザを見て少しほっとした顔を浮かべていた。
先日の誘拐事件でのエルザの引き起こす超常現象を見ていた雪村は、彼女がテロリストなんかに相手にできる存在ではないことを知っている。
なにせ魔界におわすという3柱の魔王を2柱召喚しても勝てるかどうかは五分以下なのだ。
テロリストなんぞが何兆人集まったところでエルザにその力が及ぶことはありえない。
俺は若干弛緩する雪村へと近づいていった。
「おい、雪村」
「あ、要君。これってやっぱりあの書類がらみのテロなのかな……」
「今はそれはちょっと置いておけ。それよりもあまり時間がない。生徒たちに命令して学食に向かわせてくれ。お前の命令ならみんな聞くだろ」
「え、わ、わかった!」
雪村はなにやら突如として使命感に燃えだした。
君のやる気スイッチがどこにあるのかわからない。
「みんな、早く学食へ!!」
「雪村君が言うなら間違いないわ!」
「雪村君の言うとおりにしよう!!」
「雪村君の言うとおりにしない意味がない!!」
これは一種の宗教だな。
皆雪村の言うことを疑うことなく一糸乱れぬ動きで学食へと逃げ込んでいく。
食堂内はすでにエルザが制圧済みだ。
厨房で働いていたおばちゃんたちも全員無事だった。
小腹が減れば軽食くらいは作ってくれることだろう。
「よし、学級委員はクラスが全員そろっているか確認だ!力に自信がある奴らはバリケードを作るのを手伝ってくれ!」
中村がなかなかに的確な指示を出していく。
あいつはなかなかいい人材かもな。
大企業に入社して成り上がりたくてこの学園に入学したらしいが、あいつなら案外いいところまでいくかもな。
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