妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます

兎屋亀吉

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閑話 妹ミーシャ視点

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 私の姉であるアリシアは幼い頃に事故に遭い、顔に醜い傷がある。
 顔に傷のある令嬢なんて誰も嫁に貰いたがらないから、姉の貴族の女としての価値はゼロになったに等しかった。
 現に私の父は姉をいないものとして扱った。
 姉は生まれずヨナーク伯爵家には私しか子供がいない、そういう扱いとなった。
 それなのに、姉はなぜかいつも余裕があった。
 屋敷の一室から出ることを禁じられて、服も食事も最低限のものしか与えられず、お風呂にも入れず、本当に最低の生活のはずだ。
 惨めで情けなくて死にたくなるような生活をしていたはずなのだ。
 それなのにどうしてそんなに余裕のある顔ができるというのか。
 私はそんな姉の様子にどうしようもなく腹が立った。
 姉は醜い傷があり女としては確実に私の方が上のはず。
 貴族としての教育を受けた私のほうが教養も上のはず。
 私はすべてを与えられて、姉はすべてを与えられない惨めでみっともない存在。
 そのはずなのに、情けない顔や卑屈そうな顔を一度も見せない姉に無性に腹が立った。
 そんなイライラが最高潮に達した時、父が亡くなった。
 ちょうどいい、私はそう思った。
 父は姉に甘すぎるのだ。
 あんな使い道もない醜くて不気味な女など、この屋敷に置いてやる必要はない。
 スラムで汚い野良犬相手に一生股を開いて過ごすのがお似合いだ。
 幸いなことに次の当主になるケインは私のすることに文句は言わない。
 たとえ機嫌を損ねたとしてもベッドの上でちょっと甘えればなんでも言うことを聞いてくれる都合のいい男だ。
 それにケインも姉のことは不気味に思っているので反対はしないだろう。

「お父様はそんな人に見せられないような顔のお姉さまでも何かに使えるかもとこの家に置いていたみたいですけど、私はそうは思わないわ」

「わかったわ。出ていけばいいのね。すぐに荷物を纏めます」

「その必要はありませんわ。お姉さまの荷物なんて何ひとつないでしょう?すべてはお父様が与えた物で、もとはと言えば伯爵家の財産じゃありませんか。すべて置いて行ってください。ああ、せめてもの慈悲です。今お召しになっている服だけは餞別に差し上げますわ」

 そうよ、何一つ伯爵家の役に立っていない姉に持ち出しを許せる荷物なんてないわ。
 本当は今着ているみすぼらしい服も汚い下着もすべて剥ぎ取って裸のまま外に放り出してやりたかったけれど、そんなことをすれば一時とはいえ裸の女が伯爵家の屋敷の前をうろつくことになる。
 それはさすがに風聞が悪すぎる。
 どうせそこまでしなくてもあの恰好では外の寒さには耐えられないだろうし、世間知らずの貴族の令嬢が市井で生きていくことなんてできないでしょう。
 そうなれば汚い男たち相手に股を開いて生きていくしかないわ。
 惨めな暮らしをする姉を想像するだけで胸がすっとした。
 窓から寒さに震える姉が見えて、更にすっきりとした気持ちになることができた。
 何もかもが上手くいく予感がした。






「おい、行け」

「「「はっ」」」

 ケインはなぜか汚い恰好に着替えさせた兵士に何かを命令していた。
 また余計なことをしなければいいのだけれど。

「何を命令したの?」

「ああ、あいつらの気晴らしも兼ねてあの女の始末をな」

「殺すってこと!?」

「あいつは我が伯爵家の恥だ。始末しないといけないだろ?」

 やっぱり余計なことをしていたのね。
 しばらくしたらみすぼらしく底辺を這いずり回る姉の姿を見に行く予定だったのに、計画がすべて無駄になった。
 まあいい。
 あの汚い恰好をした兵士たちに犯されてから殺されるなんて考えうる中で最低の死に方だし、それはそれでいいかもしれない。





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