31 / 50
31.宝箱の中身
しおりを挟む
ダンジョンの中でモンスターを倒した場合、速やかに素材や装備の剥ぎ取りを行わなければならない。
なぜならダンジョンの中に放置された物は1時間ほどでダンジョンに取り込まれてしまうからだ。
全員で協力して大量のゴブリンから魔石を取り出した。
金属製の装備品も持って帰れば多少のお金にはなるのだけれど、僕たちは金銭を目的としてダンジョンに潜っているわけではない。
面倒なので装備品は剥ぎ取らず、そのままダンジョンに吸収させた。
こうしたモンスターが使っていた装備もダンジョンの宝箱の中身になるのかもしれない。
全員が集めたゴブリンの魔石を水の魔道具で洗い、数を数えると全部で322個あった。
ずいぶんとたくさん倒したものだ。
一人当たり46匹くらいか。
いや、僕は1匹たりとも自力で倒してはいないのでもう少したくさんかもしれない。
それほど苦戦していた印象はないけれど、みんな疲れた顔をしている。
これだけのモンスターを倒せば精霊力上げという目的は果たしているし、今日はもう宝箱を開けたら帰ることにしよう。
「宝箱を開けようか。宝箱にも罠があったりすることもあるんだよね?」
「ああ。だから迂闊に開けないほうがいいぜ。今罠を調べる」
ザックスは宝箱に近づき、念入りに罠を調べた。
大きな宝箱だから大きな物が出てくるとは限らないようだけれど、やはり期待はしてしまう。
いったい何が入っているのだろうか。
「罠はないみたいだ。開けるぜ」
「頼むよ」
宝箱には鍵などもかかっていないようで、ザックスが蓋を持ち上げると簡単に開いた。
中にはぎっしりと木屑のようなものが詰まっており、その中に銀貨や色々なアイテムが埋もれていた。
「なにこれ」
「ちっ、生臭クズだ。付いてねえな。たまに宝箱の中が木屑で覆われていることがあるんだよ。そんでこの木屑は海の魚みてえな生臭い匂いがしやがる。他のアイテムにもその匂いが移って布製品なんかが臭くなっちまうことがあるんだよ」
「へぇ、そんなハズレみたいなものもあるんだ」
なんの嫌がらせだろうか。
それにしても生臭い木屑っていったい……。
うん、それ僕の知っているものかもしれない。
僕は大きな宝箱いっぱいに詰まっているカンナクズのような薄い木屑を少し掬い、匂いを嗅いでみる。
魚の旨味が凝縮されたような芳醇な香りがした。
生臭いというよりも魚臭い。
これは、どこからどう見ても鰹節だ。
僕は鰹節をひとつまみ口に入れる。
「坊ちゃん!なにしてんだよ!!ガキじゃねえんだからなんでもかんでも口に入れて……」
「おいしい」
「は?」
「だから、美味しいって」
全員僕の頭がとうとう狂ってしまったという顔をしている。
そんな可哀そうな人を見るような目で見られる筋合いはない。
僕は狂ってなどいない。
鰹節は日本が誇る旨味の最先端食材だ。
鰹と微生物が生み出す奇跡だ。
土佐藩が徳川家康にだって胸を張って献上した素晴らしい土佐の名産だ。
まあでも、何の説明もなかったら確かにただの魚臭いおが屑にしか見えないだろう。
僕はこれが僕の世界の食材であることを説明する。
奴隷たちは僕が異世界からの転生者であることやアイテムコピーのスキルのことを知っている。
裏切りようがない奴隷だからこその信頼関係というやつだ。
「なるほどな。まさか生臭クズが坊ちゃんの世界の食い物だったとはな。全部回収するか?」
「そうだね。手を洗ってからできるだけ清潔な入れ物に入れてくれる?箱に直接触れていた部分とか他のアイテムに触れていた部分とかは回収しなくてもいいよ」
衛生的に問題がありそうだからね。
ダンジョン側もなんで箱に直接入れるのか。
何か清潔な入れ物に入れてくれればいいのに。
この宝箱に中身を詰めている人ももしかしたら鰹節が食べ物だって知らないんじゃないかな。
緩衝材代わりに詰められても困るよ。
要望書を出したい。
どこに出したらいいのかわからないけど。
ダンジョンを作っている人が僕たちの活動を見てくれていたらいいのだけど。
「お、こいつは……」
鰹節を布袋に詰めていたザックスが何かに気付いて手を止める。
何かいいアイテムでも入っていたのだろうか。
僕はザックスの手元を覗き込む。
ザックスは何か黒いアイテムを手に持っていた。
よく見るとそれは銃だった。
アメリカの警察官とかが装備しているようなゴツい拳銃だ。
なんでダンジョンから鰹節とか拳銃とかが出てくるんだろう。
「やっぱりついてるのかもな。こいつは銃だ」
「え、知ってるの?」
「ああ。ダンジョンからごく稀に出る強力な武器だ。ただ何回か撃つと使えなくなるみたいだけどな」
なんだか断片的な情報だ。
ザックスの話ではダンジョンで出るマジックアイテムのような扱いになっているようだ。
銃という武器がこの世界にも根付いているわけではないということかな。
まあ銃が武器屋で普通に売られていたら僕がわざわざ近接武器なんかを腰にぶら下げるはめにはなっていないか。
「銃を武器として製造している国というのはないの?」
「ないな。銃ってのは分解してみると魔力を使わない純粋な武器だってことが分かるらしいんだが、構造が複雑すぎて模造することに成功したって話は聞いたことがねえ。特にこいつの中に込める弾丸ってやつがどうなってんのかわからんらしいぜ」
なるほど、確かに銃の構造は難しいよね。
弾を打ち出すための装置は頑張れば作れるかもしれない。
なにせ撃鉄で雷管を叩けばいいんだから簡単だ。
でもその雷管や弾薬を作るのが難しい。
黒色火薬なら単純だから何が含まれているのかある程度予想ができたかもしれないけれど、最近の無煙火薬っていうのは結構難しい科学薬品でできていると聞いたことがある。
魔法世界で魔力を使わずに同じようなものを作ることはできないだろう。
そもそも作る意味もない。
弾丸なんか飛ばさなくても魔法を飛ばせばいいのだから。
精霊力を上げて物理で殴ってもいい。
この世界には銃は少し非効率的な武器だ。
弾も限られているようだし、主に護身用の切り札なのだろう。
しかし、使えないわけではない。
僕のスキルを使えば弾も無限だ。
これはとてもいいものを手に入れたかもしれない。
さっそく明日からコピーしまくろう。
なぜならダンジョンの中に放置された物は1時間ほどでダンジョンに取り込まれてしまうからだ。
全員で協力して大量のゴブリンから魔石を取り出した。
金属製の装備品も持って帰れば多少のお金にはなるのだけれど、僕たちは金銭を目的としてダンジョンに潜っているわけではない。
面倒なので装備品は剥ぎ取らず、そのままダンジョンに吸収させた。
こうしたモンスターが使っていた装備もダンジョンの宝箱の中身になるのかもしれない。
全員が集めたゴブリンの魔石を水の魔道具で洗い、数を数えると全部で322個あった。
ずいぶんとたくさん倒したものだ。
一人当たり46匹くらいか。
いや、僕は1匹たりとも自力で倒してはいないのでもう少したくさんかもしれない。
それほど苦戦していた印象はないけれど、みんな疲れた顔をしている。
これだけのモンスターを倒せば精霊力上げという目的は果たしているし、今日はもう宝箱を開けたら帰ることにしよう。
「宝箱を開けようか。宝箱にも罠があったりすることもあるんだよね?」
「ああ。だから迂闊に開けないほうがいいぜ。今罠を調べる」
ザックスは宝箱に近づき、念入りに罠を調べた。
大きな宝箱だから大きな物が出てくるとは限らないようだけれど、やはり期待はしてしまう。
いったい何が入っているのだろうか。
「罠はないみたいだ。開けるぜ」
「頼むよ」
宝箱には鍵などもかかっていないようで、ザックスが蓋を持ち上げると簡単に開いた。
中にはぎっしりと木屑のようなものが詰まっており、その中に銀貨や色々なアイテムが埋もれていた。
「なにこれ」
「ちっ、生臭クズだ。付いてねえな。たまに宝箱の中が木屑で覆われていることがあるんだよ。そんでこの木屑は海の魚みてえな生臭い匂いがしやがる。他のアイテムにもその匂いが移って布製品なんかが臭くなっちまうことがあるんだよ」
「へぇ、そんなハズレみたいなものもあるんだ」
なんの嫌がらせだろうか。
それにしても生臭い木屑っていったい……。
うん、それ僕の知っているものかもしれない。
僕は大きな宝箱いっぱいに詰まっているカンナクズのような薄い木屑を少し掬い、匂いを嗅いでみる。
魚の旨味が凝縮されたような芳醇な香りがした。
生臭いというよりも魚臭い。
これは、どこからどう見ても鰹節だ。
僕は鰹節をひとつまみ口に入れる。
「坊ちゃん!なにしてんだよ!!ガキじゃねえんだからなんでもかんでも口に入れて……」
「おいしい」
「は?」
「だから、美味しいって」
全員僕の頭がとうとう狂ってしまったという顔をしている。
そんな可哀そうな人を見るような目で見られる筋合いはない。
僕は狂ってなどいない。
鰹節は日本が誇る旨味の最先端食材だ。
鰹と微生物が生み出す奇跡だ。
土佐藩が徳川家康にだって胸を張って献上した素晴らしい土佐の名産だ。
まあでも、何の説明もなかったら確かにただの魚臭いおが屑にしか見えないだろう。
僕はこれが僕の世界の食材であることを説明する。
奴隷たちは僕が異世界からの転生者であることやアイテムコピーのスキルのことを知っている。
裏切りようがない奴隷だからこその信頼関係というやつだ。
「なるほどな。まさか生臭クズが坊ちゃんの世界の食い物だったとはな。全部回収するか?」
「そうだね。手を洗ってからできるだけ清潔な入れ物に入れてくれる?箱に直接触れていた部分とか他のアイテムに触れていた部分とかは回収しなくてもいいよ」
衛生的に問題がありそうだからね。
ダンジョン側もなんで箱に直接入れるのか。
何か清潔な入れ物に入れてくれればいいのに。
この宝箱に中身を詰めている人ももしかしたら鰹節が食べ物だって知らないんじゃないかな。
緩衝材代わりに詰められても困るよ。
要望書を出したい。
どこに出したらいいのかわからないけど。
ダンジョンを作っている人が僕たちの活動を見てくれていたらいいのだけど。
「お、こいつは……」
鰹節を布袋に詰めていたザックスが何かに気付いて手を止める。
何かいいアイテムでも入っていたのだろうか。
僕はザックスの手元を覗き込む。
ザックスは何か黒いアイテムを手に持っていた。
よく見るとそれは銃だった。
アメリカの警察官とかが装備しているようなゴツい拳銃だ。
なんでダンジョンから鰹節とか拳銃とかが出てくるんだろう。
「やっぱりついてるのかもな。こいつは銃だ」
「え、知ってるの?」
「ああ。ダンジョンからごく稀に出る強力な武器だ。ただ何回か撃つと使えなくなるみたいだけどな」
なんだか断片的な情報だ。
ザックスの話ではダンジョンで出るマジックアイテムのような扱いになっているようだ。
銃という武器がこの世界にも根付いているわけではないということかな。
まあ銃が武器屋で普通に売られていたら僕がわざわざ近接武器なんかを腰にぶら下げるはめにはなっていないか。
「銃を武器として製造している国というのはないの?」
「ないな。銃ってのは分解してみると魔力を使わない純粋な武器だってことが分かるらしいんだが、構造が複雑すぎて模造することに成功したって話は聞いたことがねえ。特にこいつの中に込める弾丸ってやつがどうなってんのかわからんらしいぜ」
なるほど、確かに銃の構造は難しいよね。
弾を打ち出すための装置は頑張れば作れるかもしれない。
なにせ撃鉄で雷管を叩けばいいんだから簡単だ。
でもその雷管や弾薬を作るのが難しい。
黒色火薬なら単純だから何が含まれているのかある程度予想ができたかもしれないけれど、最近の無煙火薬っていうのは結構難しい科学薬品でできていると聞いたことがある。
魔法世界で魔力を使わずに同じようなものを作ることはできないだろう。
そもそも作る意味もない。
弾丸なんか飛ばさなくても魔法を飛ばせばいいのだから。
精霊力を上げて物理で殴ってもいい。
この世界には銃は少し非効率的な武器だ。
弾も限られているようだし、主に護身用の切り札なのだろう。
しかし、使えないわけではない。
僕のスキルを使えば弾も無限だ。
これはとてもいいものを手に入れたかもしれない。
さっそく明日からコピーしまくろう。
1
お気に入りに追加
3,144
あなたにおすすめの小説
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
孤児だけどガチャのおかげでなんとか生きてます
兎屋亀吉
ファンタジー
ガチャという聞いたことのないスキルが発現したせいで、孤児院の出資者である商人に売られてしまうことになったアリア。だが、移送中の事故によって橋の上から谷底へと転落してしまう。アリアは谷底の川に流されて生死の境を彷徨う中で、21世紀の日本に生きた前世の記憶を得る。ガチャって、あのガチャだよね。※この作品はカクヨムにも掲載しています。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる