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チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない
4.アイテムの検証と走馬灯
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先ほどガチャから出てきたアイテムの中から、この状況をなんとかできるものがないか一つ一つ検証していく。
収納の指輪はまあいいだろう。
物を収納することのできる指輪だ。
指にはめなくても使える。
どのくらいの物が入るのかは分からない。
虫など入るか試してみたが、生物は入らなかった。
死骸ならば入る。
入れたものはカタログギフトのような感じで頭に浮かび上がる。
脳内で選択すればそれが出てくる。
ちなみにスマホも入れることができたので、今は入れてある。
レアリティSランクには相応しいアイテムだ。
次は同じくSランクアイテム、神槍グングニル。
とても綺麗な槍だ。
石突から柄、穂先まですべて白銀の金属で作られており、なんだかわからない彫刻がびっしりと掘られている。
総金属製のわりにはアルミのように軽い。
まさかアルミでは無いだろうから、チタン合金かなにかだろうか。
神槍らしいからそんな人間の尺度で測れる金属ではないかもしれないけどね。
穂先は鏡のようにピカピカに鋭く磨かれていて、俺の冴えない顔が映りこむ。
まあ今のところただの綺麗な槍だ。
使ってみないと分からないな。
神話だと、投げたら必ず当たってその上手元まで返ってくるんだったっけな。
俺はなんの気なしに目の前の倒木に向かって投げてみた。
すると槍が手から離れた瞬間消えてしまう。
「え……」
投げ放った右手を思わず二度見した。
なんでだ。
しかしその答えは次の瞬間分かった。
空から槍が降ってきたのだ。
いや、実際に投げていなければ槍が降ってきたとは気が付かなかっただろう。
ただ空から光の柱が降ってきて愚かな人間に天罰を下したと思ったかもしれない。
それほどまでに鮮烈な光景だった。
一瞬遅れて地響きと衝撃波が俺を襲った。
上も下もわからなくなるほどシェイクされながら吹き飛ばされる。
どれくらい意識を失っていただろうか。
ふと気が付くと、すでに日が暮れはじめていた。
「いってぇ……」
右腕に激痛が走り、顔をしかめる。
恐る恐る腕を見るとそこには太い木の枝がぐっさりと刺さっていた。
思わず気が遠のく。
やばいな、なんだあの槍。
あんなの戦略兵器じゃないか。
というかこの腕のほうがやばいか。
もう何がなんだかわからない。
とりあえず、これ抜かないといけないんだな。
泣きそうだ。
あの槍は近距離で使っちゃダメなタイプの武器だったみたいだな。
というかもう二度と使わないかもしれないけどな。
あんなの万の軍勢を相手に無双する時くらいにしか使いようがないじゃないか。
「ああもう、現実逃避しても仕方がない!」
俺は身体を起こし、右腕を直視した。
右手には投げたはずの槍がしっかり握られていてイラっとした。
戻ってきてんじゃねえよ、とやつ当たってみても右腕の痛みは増すばかりだ。
ズキズキと頭の芯まで響くような痛みが治まらない。
すでに傷は熱を持っており、化膿し始めている。
そりゃそうか、枯れ木なんかばい菌がいっぱいだものな。
指先を動かしてみると、酷く痛むものの動かすことはできた。
奇跡的に神経には傷が付いていないようだが、このままだと化膿して腕が壊死してしまうかもしれない。
偏見かもしれないが、平安時代なんて大怪我したら祈祷師が祈って治すような時代だろ。
傷が化膿しただけでも死ぬか生きるか運任せなんじゃなかろうか。
痛みと焦りで心音が高鳴る。
これほど自分の軽はずみな行動を悔やんだことはない。
槍だ、投げてみようなんて思った先ほどの自分をぶん殴ってやりたい。
行き場のない怒りが痛みを軽減してくれているうちに、引き抜いてしまおう。
おそらく血がたくさん出るだろう。
しかしこのまま刺しておいても誰も助けてくれない状況では、いつか引き抜かなければならない。
ならば今この怒りに任せて抜いてしまったほうがいい。
俺は覚悟を決め、腕に刺さる木の枝を左腕で握り締めた。
「うぅ、いっ、あぁぁぁぁぁぁっ」
腕の肉に食い込んでなかなか抜けない木の枝をぐいぐいと傷口を抉るように引っ張ると、経験したことのない痛みが脳髄を焼いた。
同時に血が噴き出し、傷口から命が流れ出ているような錯覚に陥る。
否、錯覚ではないのかもしれない。
血が流れ落ちるごとに身体から熱が失われていくのが分かる。
寒い。
死というものが目前に迫っているのだと今になって気付く。
俺が目を覚ますまでの間、もしかしたらすでに少なくない量の血が流れていたのかもしれない。
目を覚ますことができたのが奇跡だとしたら、次はない。
「くそっ、死にたくない……」
なんでこんなわけのわからないところで死ななきゃいけないんだよ。
まだ童貞なんだよ。
やりたいことだってたくさんあった。
現代で俺はどういう扱いなんだろうか。
死んだことになっているのだとしたら、家族を悲しませてしまった。
寡黙な父と、おせっかい焼きな母、母に似ておしゃべりな妹。
あ、これ走馬灯だ。
やばい、まじで……。
『おいっ、!”#$%&’(??』
身体がゆすられているような気がした。
傷が痛むからやめてくれ。
『”#$かり”#$おいっ!!しっかりせい!!』
野太い男の声がした。
どうせ死ぬなら最期には可愛い女の子の声が聞きたかった。
収納の指輪はまあいいだろう。
物を収納することのできる指輪だ。
指にはめなくても使える。
どのくらいの物が入るのかは分からない。
虫など入るか試してみたが、生物は入らなかった。
死骸ならば入る。
入れたものはカタログギフトのような感じで頭に浮かび上がる。
脳内で選択すればそれが出てくる。
ちなみにスマホも入れることができたので、今は入れてある。
レアリティSランクには相応しいアイテムだ。
次は同じくSランクアイテム、神槍グングニル。
とても綺麗な槍だ。
石突から柄、穂先まですべて白銀の金属で作られており、なんだかわからない彫刻がびっしりと掘られている。
総金属製のわりにはアルミのように軽い。
まさかアルミでは無いだろうから、チタン合金かなにかだろうか。
神槍らしいからそんな人間の尺度で測れる金属ではないかもしれないけどね。
穂先は鏡のようにピカピカに鋭く磨かれていて、俺の冴えない顔が映りこむ。
まあ今のところただの綺麗な槍だ。
使ってみないと分からないな。
神話だと、投げたら必ず当たってその上手元まで返ってくるんだったっけな。
俺はなんの気なしに目の前の倒木に向かって投げてみた。
すると槍が手から離れた瞬間消えてしまう。
「え……」
投げ放った右手を思わず二度見した。
なんでだ。
しかしその答えは次の瞬間分かった。
空から槍が降ってきたのだ。
いや、実際に投げていなければ槍が降ってきたとは気が付かなかっただろう。
ただ空から光の柱が降ってきて愚かな人間に天罰を下したと思ったかもしれない。
それほどまでに鮮烈な光景だった。
一瞬遅れて地響きと衝撃波が俺を襲った。
上も下もわからなくなるほどシェイクされながら吹き飛ばされる。
どれくらい意識を失っていただろうか。
ふと気が付くと、すでに日が暮れはじめていた。
「いってぇ……」
右腕に激痛が走り、顔をしかめる。
恐る恐る腕を見るとそこには太い木の枝がぐっさりと刺さっていた。
思わず気が遠のく。
やばいな、なんだあの槍。
あんなの戦略兵器じゃないか。
というかこの腕のほうがやばいか。
もう何がなんだかわからない。
とりあえず、これ抜かないといけないんだな。
泣きそうだ。
あの槍は近距離で使っちゃダメなタイプの武器だったみたいだな。
というかもう二度と使わないかもしれないけどな。
あんなの万の軍勢を相手に無双する時くらいにしか使いようがないじゃないか。
「ああもう、現実逃避しても仕方がない!」
俺は身体を起こし、右腕を直視した。
右手には投げたはずの槍がしっかり握られていてイラっとした。
戻ってきてんじゃねえよ、とやつ当たってみても右腕の痛みは増すばかりだ。
ズキズキと頭の芯まで響くような痛みが治まらない。
すでに傷は熱を持っており、化膿し始めている。
そりゃそうか、枯れ木なんかばい菌がいっぱいだものな。
指先を動かしてみると、酷く痛むものの動かすことはできた。
奇跡的に神経には傷が付いていないようだが、このままだと化膿して腕が壊死してしまうかもしれない。
偏見かもしれないが、平安時代なんて大怪我したら祈祷師が祈って治すような時代だろ。
傷が化膿しただけでも死ぬか生きるか運任せなんじゃなかろうか。
痛みと焦りで心音が高鳴る。
これほど自分の軽はずみな行動を悔やんだことはない。
槍だ、投げてみようなんて思った先ほどの自分をぶん殴ってやりたい。
行き場のない怒りが痛みを軽減してくれているうちに、引き抜いてしまおう。
おそらく血がたくさん出るだろう。
しかしこのまま刺しておいても誰も助けてくれない状況では、いつか引き抜かなければならない。
ならば今この怒りに任せて抜いてしまったほうがいい。
俺は覚悟を決め、腕に刺さる木の枝を左腕で握り締めた。
「うぅ、いっ、あぁぁぁぁぁぁっ」
腕の肉に食い込んでなかなか抜けない木の枝をぐいぐいと傷口を抉るように引っ張ると、経験したことのない痛みが脳髄を焼いた。
同時に血が噴き出し、傷口から命が流れ出ているような錯覚に陥る。
否、錯覚ではないのかもしれない。
血が流れ落ちるごとに身体から熱が失われていくのが分かる。
寒い。
死というものが目前に迫っているのだと今になって気付く。
俺が目を覚ますまでの間、もしかしたらすでに少なくない量の血が流れていたのかもしれない。
目を覚ますことができたのが奇跡だとしたら、次はない。
「くそっ、死にたくない……」
なんでこんなわけのわからないところで死ななきゃいけないんだよ。
まだ童貞なんだよ。
やりたいことだってたくさんあった。
現代で俺はどういう扱いなんだろうか。
死んだことになっているのだとしたら、家族を悲しませてしまった。
寡黙な父と、おせっかい焼きな母、母に似ておしゃべりな妹。
あ、これ走馬灯だ。
やばい、まじで……。
『おいっ、!”#$%&’(??』
身体がゆすられているような気がした。
傷が痛むからやめてくれ。
『”#$かり”#$おいっ!!しっかりせい!!』
野太い男の声がした。
どうせ死ぬなら最期には可愛い女の子の声が聞きたかった。
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