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チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

1.プロローグ

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 草木も眠る丑三つ時。
 気持ち良さそうにスヤスヤと一人の男が眠っている。
 長くも短くも無い黒髪と黒い瞳。
 イケメンでもないがブサイクでもない顔。
 低くも高くも無い身長。
 まさに平均的な日本人を体言したようなこの人物こそが、この物語の主人公山田善次郎である。
 そんな善次郎の顔に一筋の光が降り注ぐ。

「う~ん……まぶしい」

『起きなさい』

「む……り……」

『起きなさいって』

「やめろ~……」

 善次郎の顔にさらなる光が降り注ぐ。

「まぶしいよぉ……」

『もういいです。そのまま話を続けます』

「……zzz」

『寝ぼけると後悔しますよ。はいここにひとつのボタンがあります』

「……zzz」

『おーい。ボタンですよ?気になりませんか?』

「……zzz」

『このボタン、なんと押すとチートがもらえます。チートって知ってます?ゲーム用語でズルとかそういう意味ですよ?ずるいくらい凄い力って意味ですよ。欲しいでしょ。おーい起きてよ』

「……zzz」

『でもそんなにおいしい話は無いんだな、これが。このボタンを押すとチートがもらえる代わりに、1000年以上前に強制トリップしちゃいます。1000年だよ?日本は平安時代だね。平安って付いてるけど全然平安じゃないんだよ?死んじゃうかもね』

「……zzz」

『ねえねえ、押す?押さない?押さなくてもいいんだよ?別に何も無いからね押さなくても。でも私としては押して欲しいですね。面白そうだから。聞いてます?』

「……zzz」

 さっきより強い光が善次郎の顔に降り注ぐ。

「うぅ……まぶしい……」

『起きないと必殺ゴッドフラッシュが降り注ぐことになりますよ。さあ、押すの?押さないの?』

「うぅ……わかった……押す押す……zzz」

『いいんですね?押しちゃうんですね?チートを持って平安サバイバルしちゃうんですね?』

「……zzz」

『沈黙は了承っと♪』

「……zzz」

『じゃあここに指を置いて、よしポチッっといってみましょうか』

 ポチリ。
 その日、一人の男が21世紀から姿を消したのだった。





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